還暦記念も兼ねたライブ『きもったま鍋7』は盛況のうちに終えることができました。
応援ありがとうございました! 

本当にお蔭様で、自分のソロライブを続けていけるのは嬉しいことです。
昨年、4年ぶりに開催してから、特にその有難みを感じるようになりました。
ですからお客様をガッカリさせないよう、いつでもより良い演技を目指しながら、
一生懸命今の自分を踊って行かなければと思っています。

振り返ってみると、第一回『きもったま鍋』の時、わたしは45歳だったんです。
スペインに渡って17年の月日が流れていました。
その頃、亡き両親もだんだん年老いてきていまして、これからは日本に帰る機会を増やして、
なるべく一緒にいてあげたいと思うようになりました。
「日本でもやらなくちゃ!」と思い立ち、早速クルシージョ活動を開始しました。
日本の状況もつかめてきた頃に、小さな空間でお客様と一体になれるタブラオライブに
ちょっと魅力を感じ、この自主ライブを企画するに到った訳です。
スペイン生活でちょっとした行き詰まりを感じていたということもあったと思います。
それまでのスペイン生活でのあれこれはこれから振り返るとして、
とにかくあの頃は、自分を思いっきり踊ることに飢えていたのだと思います。

※第一回『きもったま鍋』の思い出のチラシです。
『きもったま鍋』ちらしptaje0.png

『きもったま鍋』では、カンテ・ソロがあって、次にバイレ・ソロがあるという
昔ながらのオーソドックスなコンサートスタイルで、ただ普通にフラメンコを踊っています。
よく相撲の力士たちが口癖のように「自分の相撲をとりたい」と言いますが、
それは、いい相撲をとることを勝ち負けに関係なく大切にしているのだと思います。
わたしも「自分の踊り」を踊って、得意の決め技でライブをバシッと締めくくる、
そんな感じで、とにかくいいフラメンコを踊って行きたいと思っています。

わたしはアーティストである前に、純粋なアフィシオナード(愛好者)です。
ですから、わたしにとって「いいフラメンコ」の条件は、
先ずテクニックが確実で、深みのある洗練された踊りであることの上に、
「良きアフィシオナードとしての趣味とセンス」とか「独自の世界」が
光彩を放っているということなのです。
理想の高い世界かもしれませんが、ずーっとそう思ってやってきていまして、
ちょっとでも自分の理想の世界に近づいていれば本望なわけです。

でも、そういったことの他に、わたしがとても大切にしていることがあります。
自分のアイレとアドリブでお客様を自分の世界に惹き込み、楽しませ、
そして喜んでもらいたいということです。
言わば、良きエンターテイナーでありたいということです。
会場に足を運んでくださる方々も、そんな私のフラメンコを観たいのであって、
近年の高度な技術やしゃれた衣装などを期待していらっしゃるわけではないでしょう。
とは言っても、今回は少し、衣装やヘアーにも少し気を配ってみたんですけど......(笑い)

きもったま鍋7ライブ写真pataje1new.png 

さて、実際問題、『きもったま鍋』って、いったいどんな鍋かと言うことですが、
その前にちょっと、日本のお鍋料理や煮込み料理で考えてみてください。
先ず、相性のいい具材を選んで仕込みなどして煮込みます。
具材も早く煮えたり、時間かかったり色々ですから要領よく、手際よくしたいですね。
煮込んでいるうちに具材どうしの味がだんだん染み込んできますが、
そこにやはり気が利いた味付けが加わると味がしまります。
いろんな具材がほどほどの煮え加減で、味加減で、丁度いいところでいただきたいものです。
煮え過ぎてドロドロになってしまわないように、その火加減も難しかったりします。
料理人の腕前ひとつでうまくもまずくもなりますね。

『きもったま鍋』も同じことで、美味しく作るのってけっこう大変なのであります!
そして、そんじょそこらの鍋じゃないんです。
具材っていうんですか、中身がちょっと変わっていてユニークなんです。

きもったま鍋7ライブ写真potaje2new.png

その中身は、このライブのスペイン語タイトルにダイレクトに示されています。
Potaje con Coraje ポタッヘ・コン・コラッヘ と言います。

ポタッヘはスペインのポピュラーな煮込み料理で、体が温まります。
コラッヘは、内から込み上げてくる何というか、いたたまれぬ憤りや怒り、
よく若い人が、カッときて「ムカつく」とか言いますが、そんな感じの意味合いがあります。
そして丁度「なにくそ!」なんて思ったりする時のパワーのように、
わたし達の内に潜むエネルギー、気力のことでもあります。
ですから、そのコラッヘが入ったポタージュとでも考えてください。

もともとはこのスペイン語タイトルに本来の意味が含まれているのですが、
日本語タイトルも必要なので、考え付いたのが『きもったま鍋』です。
イメージ的になんか肝(内臓)入り鍋っていう感じがしませんか?
それで、昔、「肝っ玉かあさん」とかいうテレビ番組があったのを思い出し、
「肝っ玉」という言葉が面白いので、すっきりとひらがなで『きもったま鍋』としたのです。

言ってみれば、
「積もり積もったコラッヘを鍋にぶち込んで、至上のフラメンコ鍋をご馳走いたしやしょう!」
と、大きく見えを切ったというわけです。
まさにこのタイトルは、わたしがこのライブを初演した15年前の、
あの時の心境を的確に表しているのです。

きもったま鍋7ライブ写真pataje3new.png

ですが、15年経って、今のわたしにこのタイトルはふさわしいのか?と考えたら、
もうこれからはPotaje sin Coraje ポタッヘ・シン・コラッヘ
「コラッヘ無しのポタージュ」のがいいんじゃない? 
そんな感じもしないではありませんが、
これでは味気ない病院食みたいで、タイトルになりません。

不思議なことに、いつまでたっても、どこに居てもコラッヘは積もり積もっていくのです。
ムカッとしても、スペイン人のように直ぐ感情的になってガーッと発散せず、
冷静さを保って対処する。それって日本人の美徳の一つかもしれません。
ですから、わたしもその気になれば、このライブ『きもったま鍋』を
傘寿(80歳)のお祝いまで続けられないことないかもしれません!(笑い)

[写真:中尾務]

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