JFE_6811.jpgパンプローナは、フラメンコギタリストのサビーカス(Sabicas)の出身地ということもあり、この地で開催されるフラメンコ・フェスティバル「フラメンコ・オン・ファイヤー」ではギターはとても重要視されています。グラナダのギタリスト、ペペ・アビチュエラ(Pepe Habichuela)は開催以来、ギター大使的な役割で、常にこのフェスティバルの中心にいて、皆を温かく見守ってくれています。大御所なのに気さくで、バルコニーからの演奏にも応じ、地元の人との繋がりも以前にも増して強くなっています。(写真は、バルコニーでの演奏風景。ペペと息子のホセミ・カルモナ)

今回、フェスティバルに登場したのは、セビージャの巨匠、ラファエル・リケーニ(Rafael Riqueni)。体調不良などコンディションの悪い日々が続き、このところコンサートが中止になることもあったので、今回こそは!と願っていました。

IMG_3653.JPG当日の朝、記者会見に現れた姿はとても元気そうで、コンサートについて次々と語ってくれました。コンサートは二部構成で、一部は今年の6月に発表した新アルバム「パルケ・マリアルイサ(Parque de Maria Lusia)」から。そして、二部はフラメンコのみでとのこと。舞台には総勢12名。弦楽4名、サックスにゴウタマ・デル・カンポ(Gautama del Campo)、ピアノ、パーカッションにルイス・アマドール(Luis Amador)とディエゴ・アマドール(Diego Amador Hijo 息子さんの方)、セカンドギターとパルマ2名。自分の人生のすべてが詰まったセビージャの中心的存在であるマリアルイサ公園をタイトルにしたアルバムは、完成までかなりの苦難があったとこのこと。人生最悪の時だったと語りながら、そんな中でこのアルバムを作り続け、完成させることができたのは、マネージャー、パコ・べック(Paco Bech)のおかげだと感謝も述べていました。現在、ドキュメンタリーも製作中とあって、コンサート時には舞台上にもカメラが配備。

JFE_7092.jpg笛の音とともに幕が上がり、まずはリケーニのソロから。続いて男性のみで構成された4弦の演奏が加わり、クラシックな雰囲気を醸し出します。一曲ずつは短く、ソロと合奏が組み合わされていきます。リケーニの奏でる繊細で美しいギターの旋律に弦楽奏が輝きを添えるように加わり、心地よい音楽を作り上げていきました。サックスとギターの掛け合いもかなり取り入れられたり、サビーカスへのオマージュを込めて、サビーカスのファルセータを弾いたりと一部だけでもかなり充実したコンサート。

JFE_7171.jpg二部のフラメンコでは、ギタリスト、パコ・デ・ルシア(Paco de Lucia)へのオマージュを込めたソレアから始まり、美しい和音が印象的だったロンデーニャ、タンゴ、ニーニョ・ミゲルへ(Nino Miguel)のオマージュでファンダンゴ・デ・ウエルバ、ブレリア...と最後まで気持ち良く弾いていようでした。「会場のお客さんが楽しく聴いてくれることが一番だ」と会見でもおっしゃっていましたが、その通りのコンサートとなりました。

JFE_6886.jpg同じ日、夜中0時からのコンサートは、トマシート(Tomasito)。歌手で踊りもできて、抜群のコンパス(フラメンコのリズム)感を持ち、スペイン語は100%分かればもっと笑えるのに!と思える歌詞を歌って楽しませるエンターテイナーです。コンサート当日の昼間、「バルコニーからのフラメンコ」シリーズで、ヘミングウェイの常宿だったホテルのバルコニーに登場したトマシート。スペインには珍しく、開始予定より4分"も"早くスタート。直射日光をものともせず、観客にグッと近づき、すっかり野外コンサートのノリを作り出すところはさすが。次々と服を脱いで、最後は上半身裸で、「今日の夜のコンサートでも、これやるからね!」と観客を巻き込んでの"Soy un limon"を大合唱。

JFE_7214.jpgそして、本番。かっちりスーツに赤の水玉のパニュエロ(小さめのスカーフ)を首に巻いて、足元はブルーのショートブーツ。コンサートのタイトル「Ciudadano Gitano(シウダダーノ・ヒターノ)」は、今年(2017年)に発売されたアルバムのタイトルと同名。「歌が上手かった頃のレパートリーを集めたもんだよ」と記者会見でもコンサートでも笑いを誘いました。今までのディスコグラフィのカタログ的な内容で、トマシート総集編!?と思いきや、「いやいや、全然入りきれてないんだよ。新しいものだってあるし、マテリアル(材料)はまだまだ沢山持ってるんだけどね。」

IMG_3693.JPGコンサートが始まると、2曲目で既にスカーフを取り、次の曲でのはジャケット。と、だんだんと着衣が減っていきます。サパテアードが打てるように舞台上に小さなタブラがあり、それを使ってバイレを入れたり、曲に合わせた小物も使って、曲のニュアンスやメッセージを熱く伝えてきます。昼間の予告通り"Soy limon"をみんなで歌い、どんどんヒートアップ。最後には、かわいい絵柄の見せパン(?)一枚。こんな細い体のどこにこれだけのパワーが!?と思うほど、細く絞られた肉体、コミカルな表情。


これは百聞(百読?)は一見に如かずなので、DeFlamenco(www.deflamenco.com)さんのこちらの動画を御覧ください。

FullSizeRender 3.jpgさらにコンサートの翌日、このトマシートのコンパスワークショップが、ペーニャ・サビーカス(Pena Sabicas)で開催されました。25人の定員いっぱい。皆で輪になって、その中でトマシートがブレリアのコンパスを生徒たちに教えていくのですが...やっぱり違う!粋です!こういうクラスは何度か見たことはありますが、トマシートのようにコンパスが骨の髄まで沁みている人が繰り出すパルマは、全然響きが違います。生徒のどんな要求にも応えられる懐の深さや、生徒一人一人の叩くパルマを微妙に聞き分けて的確なリードは、このレベルの先生にしかできないことでしょう。たとえ一時間であっても貴重な体験。舞台のコミカルさとは違って、クラスは真剣そのもの。何度でも繰り返して、同じコンパスを披露し、どんな初歩的な質問にも丁寧に答えていました。なんとそれがフェスティバルでは、15ユーロと言うのも嬉しい企画です。

写真/FOTO : (C)Flamenco On Fire /Javier Fergo その他:Makiko Sakakura
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