男は、強くなくてはいけない。
しかし、優しきなくては生きてゆく資格がない。
レイモンド・チャンドラーが描いた不滅のハード・ボイルド・ヒーロー、フィリップ・マーロウの言葉である。
1978年、マドリード。
彼は黒いスーツを着こなし、黒いボルサリーノの隙間から鋭い眼光を輝かせていた。
辛い恋を経験したのであろうか、女嫌いで有名である。
そんな彼が過去に2人の女性に恋をした事がある。
一人は、まだ社会主義国であった頃のソビエトでバレリーナと恋に落ちた。
そして彼女を亡命させる事に協力し国境を越えた。
しかし、亡命するために利用されただけであった。
再び、マドリード。
S&W M19 357マグナムを愛用し、バーボンをこよなく愛する男、
モンキー・パンチ原作ルパン三世の相棒、次元大介。
彼が愛した女はバイラオーラだった。
やはりハードボイルドには、フラメンコがよく似合う。
メキシコではマラゲーニャがスタンダードであり、
マラゲーニャから発展した名曲「皆殺しの唄」がある。
アラモ砦の決戦の最中、メキシコ軍が一晩中この曲を演奏していたという。
人間のダークサイドを表すなら、 やはりフラメンコといううところか。
バイラオーラと恋をするというエピソードは、
他にも 1977年放送アニメ「グランプリの鷹」がある。
主人公轟たかやが、マドリード・グランプリでバイラオーラと恋に堕ちるのだ。
大藪春彦原作角川映画「野獣死すべし」では、
鹿賀丈史扮する男はフラメンコ・ギタリスト。彼の恋人はバイラオーラである。
二人でアメリカへ渡り、ジャパニーズ・フラメンコで生計をたてるのだという。
フラメンコとハードボイルドを結びつけた映画やドラマは結構ある。
その作り手のセンスは、なかなか的を得ている。
でも待てよ、いままでの話にカンテがまったく出てきてへんがな!
おりゃぁー!フラメンコの肝はカンテなんじゃあ。よう覚えときや。
毎度、ISSEYだす。
今回はカンテのこと、ちょいと書きます。
フラメンコやというのに、巷はもちろんフラメンコの中でも
唄・踊り・ギターで、唄があまりに軽視されすぎでっせ。
この間あるそこそこ名のある踊り手さんが、
ギター、カンテあと何人かの踊り手呼んでフィエスタやっとったんですが、
あらかじめパンフレットのようなものを用意しとって
踊り手とギタリストの名前や写真があったんすが、カンタオールの名前が何処にも書いてへんのですわ。
司会者が別におりまして、踊り手さんたちとギターさんの名前は呼んで紹介したんすが、
カンテさんらフルシカトなんすわ。
そしたらギターさんがびっくりして、
アドリブでマイクに向かってフラメンコでは本当に歌い手が大事でと説明し、
カンテさんを紹介してましたわ。
ほしたらその踊り手さんと司会者、立場なくなって、
うろたえてましたわ。
こいつらフラメンコやってるくせにカンテの重要性をまるでわかってへん。
フラメンコやってる人間ですらこんなんやから、
そら普通の人はフラメンコに唄があることすら知りまへんで。
何日か前に新宿でフランス人主催のスパニッシュ・ナイトかあってフラメンコを演奏したんですが、
その中にスペイン人の若者が何人かおりまして、えらいよろこんでくれてましてな。
まー、フランス人たちもなんですけど、特にスペイン人たちはカンテさんを絶賛して、
「日本てフラメンコがみれるとは思わなかった」、
「爺さんがカンタオールだったから懐かしい」、
「国を思い出す」、
「スペイン語の発音が素晴らしい」と、お褒め頂きましたわ
まっ純粋に受け止めてますけど。
ちなみに向かい側のデパートの中にもフラメンコやってる店あってスペイン人が演奏してるよっていうたら
彼らは商業的にやってるからつまらないっていうてましたわ。
人それぞれ好みですからね。
ちなみにその絶賛された歌い手 MCでシカトされた歌い手さんです。
踊り手、ギター、カンテ、何が一番重要とはいいまへんが、
唄歌うって一番難しい楽器演奏でっせ。
自分自身を楽器にして自分自身で演奏せなあかんのですからね。
そやそや、カンテがフューチャーされてるドラマが一つありましたわ。
「古畑任三郎」で山口智子がフラワー・アレンジメントで公演してるその背景でカンテだけ映っております。
マルティネーテやから
そら、カンテしが写るの当たり前やけど、フラメンコわかっとる人が作ったんやな。
あと、絶対音感持っててもスペイン語喋れても、フラメンコ歌えるとは限らないんでっせ。、
なぜなら、フラメンコとは魂の叫びやからだす。
いや~フラメンコって本当にいいもんですね