少し時間がたってしまったが、「シティオの眼」で、どうしてもお伝えしたい発表会がある。
11月1日にエル・フラメンコで行われた「Fin de Cruso」だ。
これは、メロンシートこと松村哲志率いるフラメンコロイド(阿部真、高橋愛夜)が指導する全国各地の生徒が参加して行われたもの。
発表会がまるごとフィエスタのような楽しさで、
フラメンコの粋にあふれていた。
出演者ひとりひとりが、自律的にフラメンコと向き合っているのが伝わってきて清々しい。気持ちが引けていないので、上手い下手を超えて、大きなオーラが前に出てくる。
そうそう、フラメンコの楽しさってコレだよね!
見ている間、こちらもニンマリの楽しさで、胸の中でそう叫んでいた。
フラメンコロイドは、ここ数年全国各地を掛け巡り、自分たちの音楽活動=ライブツアーを重ねている。
それと平行して、クルシージョも精力的に開催しており、それが発展して定期的に教えるようになったクラスが各地にある。彼らは、フラメンコの指導にも力をいれているのだ。
フラメンコの指導と言っても、彼らが教えているのは、振付とか、メロディや歌詞を覚えて1曲ずつ仕上げていく、というようなものではない。
踊りであれ、ギターであれ、歌であれ、フラメンコの命ともいえるコンパス、フラメンコのノリに徹底的にフォーカスし、伝授していくのだ。
コンパスがフラメンコでは何より重要であることは、多少なりともフラメンコに突っ込んで学ぼうとする者であれば、知っていることだろう。
しかし、変拍子に馴染みのない日本人にとって、コンパスの習得は極めて難しく、
袋小路に入ったまま抜け出せない練習生が大勢いいるように思う。
リズム感は生来のものであるという思い込みがそれに拍車をかけている。
コンパスはメトロノームのような機械的なリズム感ではなく演者の呼吸感であると考えるなら、ことはなおさら難しくなる。
実際、アルティスタたちは、一生をかけてコンパスを追求するのだ。
松村は、徹底的にフラメンコを解読し、真摯にフラメンコと向き合いながら、より自由な発想で、フラメンコと向き合うようになる。
それがまさしく、フラメンコロイドとしてのオリジナルな音楽活動に結実しているわけだが、そうした彼の姿勢は、指導のあり方にもはっきりと現れてくる。
フラメンコを楽しむ、あるいは上達するために必要=基本的なコンパス感を身につけることは日本人でも可能であること、訓練を積めばリズム音痴は克服できること、極めてシンプルなこの2つの視点を獲得することで、彼らの指導法は、画期的に楽しく、また上達を促すものとなった。
「フラメンコは難しいという先入観に縛られるのではなくて、基本的なコンパス感を身につけることはできるんだと、まずは、前向きに捉えてほしい。できないと思ったら、そこで終わり。コンパス感を養うことが簡単にできるとはいわないけれど、歯がたたないと怖れることはないんです。少しずつコンパスがわかってきたりノリをつかめるようになると、フラメンコは俄然楽しくなりますよ!」、松村は、いつもこんな風に生徒たちに話している。
私は、度々松村にインタビューしてきた過程で、彼の深いフラメンコに対する洞察力と自由なフラメンコ感に共感し、そして何よりその指導力に惚れ込んで、彼のリズム講座を当サイトが主宰するシティオ塾で立ち上げた。松村とフラメンコ感を共有する阿部真の踊り伴唱講座もしかり。
私は生徒として参加しているクラスもあるし、そうでなくともできるだけレッスンを見学するようにしているので、彼らの指導法については実体験で理解している。
ただ、振りを覚えて一曲が仕上がる、というようなレッスンではないので、成果を形で実感することは難しい。
実際、松村のリズム系講座では、パルマを叩いたり、簡単なレトラをコンパスに乗せて口ずさんだり、コンパスを感じながら自由に身体を動かしたり、いわば様々なフラメンコの断片を、松村のフラメンコなのりに乗っかって練習している。阿部のクラスもしかり。こちらは踊り伴唱歌講座なので、曲を覚えていくが、重きを置かれるのは、コンパス、ノリ、フラメンコのセンティードだ。さらに、踊り手やギタリストといかにこのセンティードを共有し合い反応しあうかという方向に進んでいく。
話を「Fin de Cruso」に戻そう。
この日、遠くは滋賀や筑波からの参加もあり、全国7地域のクラスからの参加と個人参加を合わせ、総勢34名が出演。
踊り、歌、ギター、パルマとすべてのジャンルの生徒が揃うのも特徴的だ。
一部は、ブレリアやタンゴを中心にしたフィエスタ乗りの演目がズラリ。
発表会ともなれば、皆緊張もしているのだろうが、それ以上に楽しんでいるのが際立つ。
踊り、歌い、パルマを叩き、ハレオを掛けあって、みんなノリノリだ。
やっぱりこれが一番のフラメンコの楽しみだよねと、妙に納得してしまった。
二部は、ギター演奏とカンテ・ソロを中心に構成。
中には小1女子のカンシオン弾き語りなんていう演目もあり、これがまたリズムが桁外れに達者! 子供って凄いね。
3部は踊りで参加の演目から、またまたフィエスタノリに戻って、一気にフィンデ・フィエスタへ!
師である松村と阿部は縁の下の力持ちとして参戦。
ギターの一生徒としても参加した高橋は、影になり、時に表にも回って、皆を牽引。
その雄姿、ジャンヌ・ダルクのごとし!
さて、本日の結論!
フラメンコはすべてここ=コンパスの習得からはじめるべし!
それが上達の近道。
コンパスは難しいと、眉間にしわを寄せ、ただ嘆いているのはもうやめよう!
難しいことに挑戦しているんだ!というある種の満足感で問題をすり替えるのもやめよう!
しっかり練習を積み重ねていけば、基本的なコンパス感は習得できる!
まずは、意識変革から。
フラメンコの楽しさを
しっかり受け取りながら、歩んで行ってってほしい。
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