■円熟の境地を迎えたラファエル、4年ぶりの公演。
全身を楽器のようにして、心地よいコンパスを奏でるラファエル・カンパージョ。無類のコンパス感、俊敏な動き、溢れるパワーと絶妙の緩急。そのテクニックの確かさは、急速に進化し変貌を遂げた90年代以降のバイレを象徴するかのごとき存在感を放つ。そんな彼が4年ぶりに来日し、東京と大阪で公演を行う。
今回上演されるのは「TRES TIEMPOS」。今彼と最も息の合う仲間を引き連れ、フラメンコの原点にして永遠のテーマ、バイレ、ギター、カンテの三位一体を表現するという。


昨今のラファエル・カンパージョの活動には、眼を見張るものがある。中でも特筆すべきは、昨年のビエナルと今年のフェスティバル・デ・ヘレスで上演された彼の最近作「サングレ」だ。これは彼のルーツに思いを馳せた自伝的作品。バイレの実力では常に他を圧倒してきたラファエルだが、久しぶりに発表したこの作品が各方面から高い評価を得て、ラファエルの実力と存在感を改めて広く知らしめた。
経験、年令を重ねて、踊り手として今まさに円熟の境地を迎えているラファエル。
4年ぶりに目の当たりにする彼のバイレは、フラメンコは、一体どんな変貌を遂げているのか? ラファエルとの新たな出会いの予感に、今から胸がうずく。 
さて、公演を間近に控えて、今回の来日を企画・コーディネイトしているセビージャ在住の俵由紀さんを通して、ラファエルの声が届けられた。
(以下のインタビューは、俵さんに翻訳をお願いし、メールで質問をやりとりしながら行い、それを元に筆者が構成したもの)
cammpallo3.jpg■目指すは三位一体 伝えたいのは僕自身
――これまでに何度も来日されていますが、日本のフラメンコファンにはどんな印象をお持ちですか?
ラファエル 信じられないほど、フラメンコのアルテを感じてくれているのがわかります。
――アルティスタとして一番大切にしていることはなんですか?
ラファエル 何か一つを特に、ということはありません。フラメンコに関わる、舞台に関わる全て。その一つ一つを大切にしています。
――今回の公演タイトル「TRES TIEMPOS」に込められた思いは何ですか?
ラファエル フラメンコの大切な3本柱であるバイレ、ギター、カンテの融合を目指しています。一緒に日本に行く弟ファンも歌い手のヘロモも、素晴らしいアルティスタ。彼らとだからこそできるフラメンコを、是非、観て欲しいですね。
――そのことを通して、観客に何を伝えたいですか?
ラファエル 自分の人間性とフラメンコへの愛。ステージからそうしたものを感じてもらえたら、嬉しいです。
――長い間フラメンコを踊ってきた中で、自分自身変化していることはありますか?
ラファエル 僕は、自分のスタイルで自分の道を歩み続けています。その過程で変化してきたことは色いろありますね。そして、それは良い方向に変わっていると、信じているよ。
――では逆に、一貫して変わらないことは?
ラファエル 生き方とその歴史だね。
――今回もそうですが、来日の際にはクルシージョをよく開かれていますね。日本人練習生の良いところは?
ラファエル 休むことなく、嬉々として練習に励むところ。その姿勢は、素晴らしいですね
――では、日本人練習生の陥りがちな悪い点、直した方が良いと思われるところは?
ラファエル 自分の殻に閉じこもらず、もっと開放的になることだね。そして、クラスでは怖がらないこと。何より大切なのは、リラックスして伸び伸びとフラメンコと向きあうことだね。そうすれば、より楽しめるし、ブラッシュアップできると思うよ。
――貴重なアドバイス、ありがとうございます。ところで、日本での滞在は楽しいですか? なにか不自由なことはありませんか?
ラファエル まったくないね。日本の生活習慣や歴史に興味があるんだ。日本の文化はとても好きだよ。
――では、今度の来日も楽しみにしてくださっている?
ラファエル もちろん! 4年ぶりにみんなと会えるのを楽しみにしているよ。
■ラファエルが踊るタンゴは、まるでヒターノのお爺さんのよう。
今回、ラファエルとの間をつないでくれた俵さんからもこんなメッセージが届いている。
「昔ながらのトゥリアーナのフラメンコの根っこを持ったまま、常に進化し続けているラファエルは、数少ないセビージャの宝です。緊張感のある厳しいコンパスの中、ふと垣間見えるグラシアのある踊りは、彼の人柄そのもの。
彼が踊るタンゴは、まるでヒターノのお爺さんのようです。
年を重ね父親になり、彼の踊りはますます温かみを感じられるようになってきました。
ストイックでありながらも爽やか、一見クールに見えますが実は情が深い暖かい人なんです
実は私、お爺さんになってタンゴやブレリアを踊るラファエルを、密かに楽しみにしているんですよ」
campallo1.JPG■強い絆で結ばれた共演者たち
最後に、今回の「TRES TIEMPOS」では、ラファエルとともに大きな一翼を担う共演者、ヘロモ・セグラとファン・カンパージョについて触れておこう。
ふたりとも今最もラファエルと息の合う仲間であり、刺激しあっているアルティスタたちだ。ラファエルが目指す三位一体のステージに欠かせないメンバーなのである。
カンテのヘロモ・セグラは、昨年度カンテ デ・ラス・ミーナスにてプレミオ受賞した注目株の実力派。ラファエルの踊り歌を1人でこなせるのは、彼をおいて他にはあり得ない、と思わせるほどラファエルのことを熟知している。歌の実力はお墨付きだが、パルマの絶妙さにも定評がある。
ギターのファン・カンパージョはラファエルの弟。繊細でありながら強くフラメンカな音を奏でる。抜群のセンスと才能を開花させて、現在はラファエル、アデラ・カンパージョだけではなくマヌエラ・カラスコやハビエル・バロンらと幅広い仕事をこなしている。伴奏の腕もさることながら、ギターソロがまた素晴らしい。
さぁ、こんなメンバーが揃ったら、
当日は何が起こるかわからない!
即興性に富んだ、生きているフラメンコを体感させてくれるに違いない!
◆東京公演概要
"Rafael Campallo 2015「TRES TIEMPOS」
6月14日午後5時開演 4時30分開場
北千住 シアター1010
【出演者】 
バイレ Rafael Campallo、カンテ Jeromo Segura ギター Juan Campallo
【チケット】
S席12000円(1階8列目まで) 
A席10000円(1階9列目以降) B席7500円(2階)
※当日券も同じ料金で15時半より会場にて発売。
※小さいお子様の入場はお断りしております。
【問い合わせ&チケット申し込み】 
Jerezytriana@gmail.com
電話090-8737-0063(俵 由紀)
◆大阪公演概要
""Rafael Campallo 2015(TRES TIEMPOS)en OSAKA""
6月10日(水)19時(開場18時30分)
6月11日(木)19時(開場18時30分)
大丸心斎橋劇場
【チケッット】 前売券:6,500円、当日券:7,000円(指定席)
【公演内容】
大阪公演は1部・2部に分かれ 1部では "Rafael Campallo curcillo 2014 Osaka"においてラファエルが7日間のクラスでそれぞれ振り付けした3曲をクルシージョ受講者有志によって踊ります。
【1部出演者】
バイレ (50音順)
井上光正  加藤菊子  左山啓子(10日)  柴崎奈穂  進藤早代  辻川輝  
弘いずみ(11日)  藤本ゆかり 藤原梨佳(11日) 他、
カンテ 中山えみ子  ギター ロドリゴ・マベル  カホン 園田健介
【2部出演者】
バイレ Rafael Campallo、
カンテ Jeromo Segura
ギター Juan Campallo、
【主催】Flamenco 光舞 井上光正フラメンコ教室
(ホームページ) http://koub.net

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