DSCN2173.JPG日本が豪雨というニュースを聞いた翌日、晴れ続きのセビージャも午前中からお昼にかけてかなりの雨。アンダルシアには、もうかれこれ17年通っていますが、雨が降ると一気に人通りが少なくなるのは変わっていません。基本的にあまり傘をささない風土かな?と思います。そういえば、50度にも達する真夏の昼間に道歩いているのは観光客くらいで、夜涼しくなるとわさわさと地元の人たちが出てくるのが、田舎町だと特に顕著に見られます。

今年の記者会見は野外でも行われ、ビエナル期間中の公演に出演するギタリスト達、そして、ロペ・デ・ベガ劇場でソロコンサートをするカンタオール3人の会見が、ドン・ファブリケの塔がある修道院の中庭で行われました。セビージャの晴天は雲ひとつない上に、日差しは痛いほど鋭いものです。それが避けられるのは、陽の当たらないの木陰だけ。会見中も太陽の動きとともに影の位置が変わるので、各自、場所をずらしながらの進行。会見に先立って、リカルド・モレノ(Ryacardo Moreno)とホセ・アセド(Jose Acedo)のギター演奏もありました。(上写真左からディエゴ・デル・モラオ、アントニオ・レジェス、ホセ・バレンシア、ダビ・パロマール)

DSCN2167.JPGカンタオール達の会見は、ホセ・バレンシア(Jose Valencia)、ダビ・パロマール(David Palomar)、アントニオ・レジェス(Antonio Reyes)という中堅トップクラスの3人。
アントニオ・レジェスは同席していたギタリストのディエゴ・デル・モラオ(Diego del Morao)と録音したアルバムのコンサート。今回はビエナルということで、収録曲とは別に今までこのコンサートでは歌っていない曲も入れていくと予告しました。
ダビ・パロマールは、三枚目のアルバムと同名のコンサート。昨年(2015年)のへレスのフェスティバルでのこのコンサートの様子はこちらにあります。

FullSizeRender 7.jpgこのコンサートをセビージャで早くやりたかったけど、どうせやるならビエナルで!と今まで我慢していたんだ!とのこと。ニューヨークに住んでいる人を「ニューヨーカー」というように、セビージャに住んでいる人は「セビジャーノ(男性)セビジャーナ(女性)」と言います。アンダルシア県のカディスに住んでいる人は「カディターノ、ガディターナ」。今回も、ガディターノのダビが、存分にカディスのカンテの魅力を伝えてくれることに期待できそうです。
ホセ・バレンシアのコンサートは、惜しくも今年7月に亡くなったエル・レブリハーノ(El Lebrijano)が監督していた作品。思いがけず、レブリハーノへのオマージュになってしまいました。ホセ・バレンシアは、以前、ホセリート・デ・レブリハ(Joselito de Lebrija)という芸名だったことからもわかるように、セビージャ県のレブリハという町の出身。地元レブリハの生きた伝説だったエル・レブリハーノの存在は大きなものだったのです。そのレブリハーノに自分のコンサートを手がけてもらえることは本当に名誉なこと。亡くなる前日まで内容を話し合っていたそうです。突然の死という事態になってしまいましたが、出演者も内容もすべてレブリハーノが選んでくれたもの。舞台に立つ自分たちのものではなく、マエストロのものだという気持ちで引き続き取り組んできているようです。

Eva Yerbabuena 04.jpgその日の夜は、エバ・ジェルバブエナ(Eva Yerbabuena)の公演「アパリエンシア(Apariencia)」。今年のへレスのフェスティバルで公演されたものです。冒頭のエバの衣装が変わっていましたが、その他はいつも通りエバの存在感、エバ独自の言語による表現に圧倒される作品。激しくマントン(大きなマントで刺繍が施してあるのでかなり重量があります)を捌きながら踊るペテネーラ。最初はギタリスト、パコ・ハラーナ(Paco Jarana)のアレンジで現代的なメロディーでしたが、そこにぐさっとホセ・バレンシアのカンテ(歌)でオリジナルのペテネーラが切り込み、踊りの展開も変わります。ダンスというよりも表現で、不吉な歌であるペテネーラ(Petenera)を踊りながら、恐れ、迷う女性の不安が伝わってくるようでした。アパリエンシア=外見。いわゆるフラメンコという名称のイメージを外見とするなら、エバの公演は、フラメンコ公演はこうあるべきという頭で見るよりも、もっと内側を感じて欲しいということなのかもしれません。前回の記事はこちら。
Eva Yerbabuena 01.jpg今回、特筆すべきは舞踊団の4人の男性ダンサー。看板スターが舞台上にいないからと言って、観ている方が緩んだらもったいないくらいのレベルの高さ。エバの要求するバイレを見事に体現していて、一瞬でも見逃したら惜しい!場面の連発でした。アンダルシア舞踊団ソリストのダビ・コリア(David Coria)、元アンダルシア舞踊団で日本人バイラオールの小島章司さんとハビエル・ラトーレの作品、「ファトゥム」「セレスティーナ」にも出ていたアンヘル・ファリーニャ(Angel Farina)、同じく、クリスティアン・ロサーノ(Cristian Lozano)。ロシオ・モリーナの公演「ボスケ・アルドラ」で激しいバイレをこなしていたフェルナンド・ヒメネス(Fernando Jimenez)の4人。上半身裸の衣装で、美しい筋肉のついた引き締まった肉体美も素晴らしいものでした。
Eva Yerbabuena 06.jpgそして最後には、これぞエバ!なシギリージャ(曲種名)の後のブレリア(曲種名)で、続々とかつてエバの公演で歌っていたカンタオール(男性歌手)たちが登場。エンリケ・エストレメーニョ(Enrique Extremeno)、セグンド・ファルコン(Segundo Falcon)、ダビ・ラゴス(David Lagos)、モイ・デ・モロン(Moi de Moron)、ヘロモ・セグーロ(Jeromo Seguro)。そこに今回の公演のカンテのアントニオ・テハーダ(Anotnio Tejada)とホセ・バレンシア、パルマ(手拍子)のトロンボが加わりました。プログラムにも載っていませんでしたが、実は開演前に劇場近くのバルに立ち寄ったら、このうちの4名を発見。中には明らかに舞台に出る衣装を着ている人がいたので、いつ出るかとずっと待っていたら、本当に最後の最後でした。男性8人に囲まれてのバイレ。一人一人の歌で踊っていくエバ。冒頭の坊主頭でのアフリカンボイスに踊る時とはまるで別人。コテコテのフラメンコのカンテ。それも、原点とも言えるフィエスタの場面には大地に根を張った土着のフラメンコのバイレを観せてくれます。ヘロモが、ボレロの名曲「Compromiso(約束)」を歌い終わる頃、ホセ・バレンシアが舞台袖へと去ると真っ赤なマントンを手にして再登場。「Se nos rompio el amor(壊れてしまった愛)」が始まりました。声量があるホセの声が張り裂けるように愛の終りを歌い、エバがそれを全身で受け止めて壊れそうなくらい切なく踊る感動的なフィナーレとなりました。この曲は今までもエバの公演で何度も観ているのですが、個人的には何度観ても飽きない「よっ!待ってました!」的定番となっています。

そして、開演が15分遅れになるのも定番になりつつある今年のビエナル。ハシゴ組にとっては貴重な15分!なんとかスムーズに入場できて、せめて5分押しくらいで始まってくれるようになることを祈りつつ。

写真( FOTOS):無クレジットのものは cBienal de Sevilla Oficial / Makiko Sakakura
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