10月10日、日本に到着したばかりのマヌエル・リニャンの公演直前インタビューが、主催者のパルコから配信されました。そのインタビューを担当させていただいのたので、フラメンコシティオではこちらに掲載させていただきます。

10月とは思えない暑さの東京。それもそのはず、スペインから熱いフラメンコ達が続々と到着しております。いよいよ明後日(12日)から3日間、パルコ主催のフラメンコ・フェスティバルが新宿文化センターにて開催されます。現代フラメンコを牽引する素晴らしいアーティスト達が来日ということで、フラメンコファンのみならず、全てのアートファンには見逃せないラインナップです。
メンバーより一足先に昨夜到着したマヌエル・リニャン(Manuel Linan)。夜中1時過ぎにホテルに着き、寝たのは朝の4時過ぎだったにもかかわらず、来日後の第一声を届けにインタビューに応じてくれました。さすが、世界をまたにかけて活躍するアーティスト。旅の疲れも見せずに爽やかに登場です。

坂倉(以下S):おはようございます!日本にようこそ!
マヌエル・リニャン(以下M):ありがとう!
S:どちらから飛んで来られたのですが?
M:マドリードから。今、新しい公演の準備をしているんだ。
S:それはご自身の公演ですか?
M:そう。僕の公演で11月にマドリードで初演。踊り手5人にミュージシャン4人で作っているんだ。

5歳のときに学校の授業でフラメンコを踊り始め、その後、地元グラナダでマリア・ヘスス・オカニャ(Maria Jesus Ocana)についてレッスンを始めたマヌエル・リニャン。やがてマドリードに居を移し、多くのアーティストとの共演を重ねてキャリア積み、33歳の若さでいまや振付家としても大活躍しています。例えば、スペイン国立バレエ団の2作品に振付家として参加。また、昨年のビエナル公演「REW(リワインド:巻き戻し)」では、フラメンコの歴史を巻き戻すというコンセプトの作品では、バイレまでも逆回しの振付けをつけた天才的才能の持ち主なのです。もちろん舞踊手としても今年のプレミオ・MAXで最優秀男性ダンサー賞(フラメンコだけでなく様々な分野のダンサーの中から選ばれる賞)を受賞。

S:日本はどうですか?世界中を回られておられますが、好きな国の何位に入りますか?
M:ははは(笑)どの国もいいけど、日本はある意味特別。僕らの文化、フラメンコを愛してくれてるし、人々も親切でとても礼儀正しくて...大好きだよ。
S:何か日本に来て、「これはやりたい!」ということはありますか?例えば、食べたいものとか?
M:ラーメン!!(即答!)

どうやら今回の来日での外食第1回目は、ラーメン&餃子で決定のようです。
さて、では早速、今回日本で公演する作品について伺ってみましょう。

balenymanuel.jpgのサムネイル画像M「トラスミン」は、ロシアのフラメンコ・フェスティバルで初演したんだけど、それ以前もベレン・マジャ(Belen Maya)とは一緒に作品づくりをしてきたんだ。ベレンのお父さんであるマリオ・マジャ(Mario Maya)のオマージュ公演でも。この作品は僕ら2人それぞれのもつエッセンスが詰まった作品。僕らはとてもいい関係で、一緒に舞台で踊れることを何より楽しみにしている。それがこの作品で実現しているので、2人が共に踊れることを祝うフィエスタのような気持ちもあるよ。2人ともとても楽しんで、自分のやりたいことを存分に発揮できているんだ。観ている人とも僕らのワクワクする気持ちを分かち合えるんじゃないかな。特にストーリーなどはなく、シンプルに楽しんでもらえる、トラディショナルなフラメンコの作品だよ。
S:楽しみですね!ちなみにオープニングはどんな感じですか?
M:ベレンと僕とでカンティーニャス(Cantinas;フラメンコの曲種名)を踊るよ。ベレンのバタ・デ・コラ(Bata de Cola;ドレス後部の裾が長く伸びた衣装)でのバイレはすごく素敵だよ。
S:なぜ最初にカンティーニャスを持って来たのですか?
M:僕はバタ・デ・コラの振付けにとても縁があるんだ。「ムヘーレス(Mujeres)」という作品ではメルチェ・エスメラルダ(Merche Esmeralda)、ベレン・マジャ、ロシオ・モリーナ(Rocio Molina)の3人のバイラオーラのバタ・デ・コラの振付けもしたし。だからバタで踊るために相応しい曲と思ってカンティーニャスを選んだんだ。

今回のメンバーは、カンテにダビ・ラゴス(David Lagos)、マティアス・ロペス(Matias Lopez)、ギターはアルフレド・ラゴス(Alfred Lagos)ですが、このメンバーでの公演は初めてとのこと。公演前日の明日もリハーサルの予定がぎっしり入っているようです。
S:作品の見どころは...全部だと思いますが、あえて上げるならどこでしょう?
M:ベレンのバタ・デ・コラのバイレ、それと彼女のマルティネーテ(Martinete)。これはベレンの父マリオ・マジャへのオマージュなんだ。
S:あなたは作品の中では他に何を踊られますか?
M:タラント(Taranto)とソレア(Solea)だよ。
S:あなたの踊るタンゴ(Tango)を楽しみにしている人が多いんですよ。
M:(笑)タラントの締めでタンゴを踊るから、そこを楽しみにしていて。

マヌエルの生まれ育ったグラナダは、フラメンコのメッカのひとつですが、セビージャやヘレスなどとは違う風土や歴史的背景がフラメンコの中にも反映されています。特にタンゴ(Tango de Granada;タンゴ・デ・グラナダ)やサンブラがとても特徴的。その土地ならではのスタイルがあるのがフラメンコですが、バイレに関しては踊り手の個性やいろんな人から習って行く過程で"土地柄"の特徴は中和されていくとのこと。一方、カンテ(歌)にはその違いが現代でも色濃く現れています。そしてそのカンテのレトラ(歌詞)は踊りに大きな影響を与えると言います。今回マヌエルがタラントの最後に踊るタンゴはもちろんタンゴ・デ・グラナダ!かと思えば「その時のカンタオール(歌手)が歌いたいと思ったタンゴで踊るよ。」フラメンコの神髄はやはり即興なのですね。

今後の夢について尋ねると「とにかく踊り続けることができること。それだけだよ。」というマヌエル・リニャン。最後に日本の皆さんに一言お願いします。

「是非、劇場に観に来てください。「トラスミン」で一緒に楽しいひと時を過ごしましょう!」

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