DSCN1744.JPGワインで有名なフランスのボルドーからローカル列車で1時間半の場所にある村、モン・デ・マルサン。ここでは毎年7月にフラメンコ・フェスティバルが開催され、今年で27回目を迎えます。(写真:フェスティバル事務局は村の中心に建てられた仮設テント。ことしは「折り紙」をモチーフにしたデコレーションが随所に見られます。)

スペインの隣国であるフランスでは、フラメンコの公演が多く招聘されていますが、その中でもこのモン・デ・マルサンのフェスティバルは、日本から取材に訪れたくなる理由があるほど充実しています。6日間にわたるイベントやクラスの豊富さや運営方法のユニークさには以前から定評がありましたが、5、6年前に現在のディレクターに変わってから、公演内容がさらに魅力的になりました。(個人的な好みももちろんありますが)DSCN1740.JPGまた、以前このフェスティバルに来た時に印象的だったのが、スペインから来るアーティストが、スペインにいるのと変わらないリラックスした様子だったこと。それもそのはず、公演、レッスンを含めたくさんのアーティスト仲間が同じ時期にこの小さな村にやってきて、食事も一緒にとるので、まるでリトル・スペイン。海外公演でよくある「外人感」がない環境なのです。それに加え、海外での公演という程よい緊張感があるため、ここでの公演のクオリティーは高いなと感じたのです。(写真:ディレクターとマリア・パヘス)

DSCN1747.JPGアンダルシア観光の情報やフラメンコ用品のショップも例年のように展示販売されており、フラメンコシューズの出店の店主はスペインから出張してきたセノビージャ氏。踊りをされている人はすでにご存知でしょうが「うちの靴はかかとの素材がギターに使うパロ・サント。だから音の出方が違うんだ」とのこと。どちらかというと脚力の弱い日本人にはうれしい味方となりそうです。またパーツ頃に好きな革の色を選べ、自分だけのオリジナルシューズも作れ、裏革も通常より分厚くて強いヌバックを使用していると語ってくれました。

YOCARMEN35.jpgフェスティバルのオープニング公演は、先ごろ日本でも公演されたマリア・パヘス(Maria Pages)の「Yo,Carmen」。セビージャ、日本に続き3度目の鑑賞となりました。今回は最前列での鑑賞とあって、アーティスト達の表情もはっきりと見え、より作品に近づけた気がしました。フラメンコ初心者にもわかりやすい見せ場の多い舞台。タンギージョスの場面では、堪能なフランス語で語りかけながら踊り、客席も大いに沸きました。また最後のソレアでは、演出された「カルメン」ではなく、素の「マリア」がフラメンコの曲ソレアに対峙して踊っているように感じました。

舞踊団の中で一際目を引いたのが、マカレナ・ラミレス(Macarena Ramirez)。幼い頃からアントニオ・エル・ピパ(Antonio El PIpa)の元で学び、大学進学のためにマドリードに行ってからは、サラ・バラス(Sara Baras)にも舞踊団メンバーとして呼ばれ、現在はマリアの舞踊団に所属しています。2010年にNHKの番組(黒木メイサスペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅)をコーディネートした際に、彼女にも出演してもらい、その美少女ぶりが話題となりました。2012年のビエナルでもソロ公演をし、10代から実力を認められていたマカレナ。YOCARMEN26m.jpgいつシャッターを切っても常に絵になっているという一流アーティストの素質十分で、群舞の中にいても、無駄に派手な動きで目立つのではなく、その場にふさわしいアクセント、そしてキレのあるバイレから醸し出されるスピード感で目を引くのです。そして、立ち姿やちょっとして動きの中にも師匠アントニオ・エル・ピパのダンディズムが垣間見られ、小柄なマカレナを一回り大きく見せてくれてるようでした。ベテラン、中堅の層が厚く、なかなか若手のバイラオーラが注目されにくくなった昨今ですが、彼女のようにバイレを見ているだけで何かが伝わってくる、感動できるバイラオーラが着実に育っていることは、とても嬉しいことです。

さて、今日は二日目。昼間はオープンエアのスペースで、マリア・パヘスを囲んでのバイレについてのカンファレンスと昼食会。続いて、今日の夜の二つの公演の主役、ギタリストのダニ・デ・モロン(Dani de Moron)とファルー(Farru)の囲み会見がありました。公演の様子はまだ次回に。
舞台写真/FOTOS de escenario:Marta Vila Aguila

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