パリでの収穫第2弾です。フェスティバル2日目、ディエゴ・アマドール"エル・チューリ"(Diego Amador " El Churri")のコンサートがあり、久しぶりに再会しました。
ディエゴ・アマドールは、アンダルシア地方セビージャ市出身で、ヒターノの気品に満ちた天才的なアーティスト。普通は"カンタオール(歌手)"、"ギタリスト"などと何かひとつ肩書きがつけられるのですが、ディエゴはベーシストでもパーッカショニストでもあり、作曲もします。そしてメインはピアニストとしての演奏活動。6年くらい前まではギタリスト、トマティートのグループでベースとカンテを担当し、2005年の日本公演にも参加していました。その後は、主にソロ、トリオでの活動を展開。多くのジャズフェスティバルからも招聘されて活躍しています。ギターやその他の楽器同様、独学で身に付けたピアノ。フラメンコのギター演奏をそのままピアノの鍵盤に置き換えた哀愁たっぷりのタッチは、ディエゴ独特のもの。専門家によると、ジャズに似ているようでも、音の使い方が違うのだそうです。今年日本でも公開されたカルロス・サウラ監督の映画『フラメンコ・フラメンコ』をご覧になった方々には、ダビ・ペーニャ・"ドランテス"との共演シーンは記憶に新しいことかと思います。
コンサート当日の朝、セビージャからパリに到着したディエゴ。待ち合わせ場所には、見違えるほど成長した息子さんのディエゴ(同じ名前です)、そして今回のトリオのメンバーもいました。一緒に会場までバスで移動し、リハ--サルの合間にお話を伺って来ました。(下写真:本番前のリハーサル)
-- 映画でのドランテスとの共演はどういう経緯だったのですか?
ディエゴ:最初、カルロス・サウラ監督との話では、僕のソロということだったんだ。だけど、どのシーンもいろんなアーティストが共演して作る形になってきたので、イシドロ・ムニョス(音楽監督)から「ピアノの場面もダビ(ドランテス)と一緒に弾くのもいいんじゃないか」と提案があったんだ。今まで彼とのフラメンコ共演はしたことなかったし、僕もそのアイデアがすごく気に入ったので実現したんだよ。フラメンコに生きる者同士、ファミリーのようなものだしね。すごく楽しみになったよ。
--撮影の為に、お二人で一緒に練習されたのですか?それとも即興?
ディエゴ:まずはそれぞれがソロを順番に弾き、その後合流するという形にしたんだ。各自、家で練習しながら連絡を取り合って、本番当日に合わせたよ。
--何か難しかったことはありましたか?
ディエゴ:全然!全く問題なかったよ。
それに、ダビは人間としてもプロフェッショナルとしても素晴らしいしね。
たしかにあのシーン、2人の穏やかな表情、アイコンタクトがとても印象的でした。フラメンコという難しい音楽を指で奏でながら、手元も見ないで、どうしてそんな素敵な笑顔が浮かべられるんだろうか?とプロの凄さを思い知らせましたが、さらに驚くのがディエゴの弾き語り。
フラメンコをソロで歌うというのは、歌唱の部類でも難易度的にトップクラスだと思います。基本的に楽譜はなく、暗闇の中を自分の心で切り開き、光を掴み、その曲種のもつ彩りを添えていくような...それができてこそ、聴いている者にも「フラメンコ」を感じさせられるのです。それに加えて「フラメンコな声」を持っていること。それだけでもすごいことなのに、それをピアノを弾きながらやってしまう人がいるとは!と、彼のコンサートでその姿を初めて見た時には大きな衝撃を受けました。
その夜のコンサートでも、ムイ・フラメンコ(とってもフラメンコ)な演奏を歌を聴かせてくれたディエゴ・アマドール。次回はインタビューの続き、フラメンコ音楽について語ってくれたことをお届けいたします。
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