芸術の秋が訪れました。長かった夏休みシーズンが終わり、スペイン各地でフラメンコ公演のシリーズがスタート。観たい公演がめじろ押しではありますが、今年は日本でもフラメンコフェスティバルがあることですし、ここはぐっと我慢。とは言え、先日フラメンコ・ウォーカーはセビージャまで緊急発動してまいりました。(写真左:アルカンヘル&アカデミア・デル・ピアチェーレ。バイレはパトリシア・ゲレーロ)

1234641_10200606675161601_250518894_n.jpg昨年の第17回ビエナル・デ・セビージャでのヒラルディージョ賞の授賞式が9月17日セビージャにて行われたのです。この賞はセビージャで2年に一度、一ヵ月にわたって開催されるフラメンコフェスティバルの期間中に行われた公演に出演したアーティストの中から13の部門の受賞者が選ばれるものです。(写真右:設営作業中の会場、旧サンタクララ修道院)

授賞式の会場には、マティルデ・コラルやエバ・ジェルバブエナらセビージャのアーティスト達の姿もありました。そしてもちろん受賞者の面々。パトリシア・ゲレーロ 、以前フラメンコ・ウォーカーでもご紹介し、10月のフラメンコ・フェスティバルでロシオ・モリーナ公演に来日するホセ・アンヘル・カルモナ、ギタリストのフアン・レケーナ、振付賞を受賞したラファエル・エステべ&ナニ・パニョス、音楽賞のアルカンヘルとアカデミア・デル・ピアチェーレ、マエストロとして評価を受けたハビエル・ラトーレ、作品賞、カンテ、ギターと三冠に輝いた「アレルヤ・エロティカ」のメンバーであるホセ・バレンシア、ダニ・デ・モロン、バイレ賞のマリア・パヘス、ギターのアントニオ・レイ、そしてカンタオールのエル・ペレらが勢ぞろい。19.jpg8.jpg各賞の授賞と受賞者のあいさつ、そしてアーティスト達による「ビエナル美味しいとこ取りダイジェスト版ミニコンサート(勝手に命名しました)」が行われ、まるでビエナルでの名場面の再現のようでした。
新しくアンダルシア舞踊団の監督となったラファエラ・カラスコとセビージャで多くのアーティストを輩出したマノロ・マリン、ホセ・ガルバンの両マエストロのトリオに始まり、最後を飾ったのは、エル・ペレのカンテ。昨年のビエナルでは、体調不良のため出演自体が危ぶまれながらも舞台に上がり、椅子で体を支えながら歌ったソレアが人々を感動させました。聴いていて、ざわざわっと鳥肌が立ち、体の中から熱いものがこみ上げてくるようなカンテは、なんだか魂を浄化してくれるような気がします。この日のエル・ペレにも旅の疲れと魂の浄化をしてもらい、心の底から「ありがとう!」という気持ちで拍手を送りました。11.jpg
(写真左上:トロフィーを受け取り挨拶をするハビエル・ラトーレ/写真右上:ハビエル・ラトーレとホセ・アンへル・カルモナ/写真左下:熱唱するエル・ペレ)

さて、パルコ主催の東京でのフラメンコフェスティバル開催が近づいてきました。フェスティバル二日目に登場するのは、イスラエル・ガルバン。(公演情報はこちら)カルロス・サウラの映画「フラメンコ(1995)」ではマリオ・マジャの場面に出演。当時21歳。そして同監督二作目の「フラメンコ・フラメンコ(2010)」にも出演したので、その姿を映像で目にしたことのある方は多いかと思います。また初めて見る方は今まで抱いていた"フラメンコ"のイメージとの違いに戸惑われるかもしれません。しかし、その起源はちゃんとこてこてのフラメンコにあります。だからこそ許される「型破り」な表現。特徴的だからと言って安易に真似をして踊っては、まさに「形無し」となりますのでご注意くださいね。
私が初めてイスラエル・ガルバンの舞台を生で観たのは2000年のビエナル・デ・セビージャでの公演。カフカの「化身」をモチーフにした作品でした。ちょうどこの作品あたりから、イスラエルの現在のスタイルが完成されてきた頃でしたが、初めて観たときの衝撃というか不思議な感覚は今でもまだはっきりと覚えています。正直言って、その時は「?」がいっぱいでした。このアーティストには何かある!と感じるのに、それを把握しきれないことへの焦燥感もありました。原作を良く知らなかったという自分の無知とともに"フラメンコ"についても勉強不足だったことも認識し、イスラエルのバイレももっと知りたいと思い、レッスンも受けに行きました。イスラエル・ガルバンというアーティストとの出会いがたくさんの好奇心をかきたててくれました。まだまだ彼の発するメッセージを十分理解できているとは思えませんが、常人の想像を超える天才的な感性にふれたくて、それ以降スペインに行く度に、たとえ一度観たことのある作品であってもできる限りイスラエル・ガルバンの公演には足を運び、イスラエル・ワールドを楽しんでいます。

自分の身体のパーツすべてを使っての表現。歯さえも鳴らします。芸術には表現の自由があるように、受け取る側にも解釈の自由がありますが、イスラエルのバイレは解釈の幅を無限に広げてくれます。たとえば、何者かとの会話、問いかけ、訴え。時にはぼやいたり、喜びに沸いたり...と人間のさまざまな感情の機微を表しているように見えることもあります。生で公演を観ることで、画面を通しての映像では感じきれない息遣いや、同じ空間で同じ時間を共有するなかで生まれるインスピレーション。そんなことが期待できる公演になるのではないでしょうか。

Foto:La Bienal 公式HPより Web Oficial de la Bienal

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