今年のへレスはいまのところ快晴。気温は、晩はまだまだ冷え込みますが、アンダルシアらしい濃い青空が続いています。へレスと言えばフラメンコ!はもちろんですが、シェリー酒の産地としても有名です。日本でもおなじみのティオ・ペペなど、シェリー酒を作る酒蔵があちこちにあります。

以前は、フェスティバルのプログラムに、ティオ・ペペを醸造しているゴンザレスビアス社の敷地内にあるパーティー会場で行われるコンサートがあり、そこでは樽からベネンシアドール(樽から長い竿のようなものでシェリー酒をくみ上げる技術を持った人)が無料でシェリー酒をふるまってくれていました。今は、ビジャマルタで初日など時々、そのふるまいが受けられます。公演の直前に、バルで飲んだボトルからのシェリー酒、もちろん美味しかったのですが、その直後に樽からシェリー酒サービスで汲み立てを飲むと、改めてその絶品な美味しさに驚きました。へレスを訪れる機会があれば、是非味わっていただきたいです。
JAVIERFERGO_TREMENDITA_01WEB.jpgフェスティバル二日目。ロサリオ・ラ・トレメンディータ(Rosario La Tremendita)のコンサート「プリメーラ エスタシオン ファトゥム(Primera Estacion Fatum)」。小島×ラトーレ公演の「ファトゥム」は、悲劇的な運命でしたが、トレメンディータは、カンタオーラとして生きる宿命。運命の歯車が絶え間なく回るように、自分のキャリアも歩みを続け止まることなく積み重ねてきた、そしてこれからも続いていくという思いでアルバムにこのタイトルをつけたようです。歌をこよなく愛する彼女らしく、「いつまででも歌っていたい」と言いながら、アルバム収録曲に加え、サンブラも歌い上げました。彼女の生声は、日本でも4月に聴くことができます。

JAVIERFERGO_YERBABUENA-AY_05WEB.jpg大劇場ビジャマルタでは、エバ・ジェルバブエナ(Eva Yerbabuena)の公演「AY!(アイ!)」。ロンドンでの初演を観たのが一年前。「同じ作品でもまったく同じということはない」というエバの言葉通り、表現にも違いがありましたが、2度目だからじっくり見られる部分もありました。やはり一度見ただけで「知っている」つもりになって、次から見ないのはもったいないことだと実感。エバ独特の表現は、彼女の作品を初めて見た人には分かりづらいかもしれませんが、注目すべきは彼女が身体をどのように使って踊っているか。身体のすべてです。しかし、決してドタバタしないのです。身体全体から醸し出す"何か"がとても深い。そんな印象を受けます。ストレートにフラメンコの曲を踊れば、その凄さはダイレクトに伝わってきますし、エバ独自の言語での新しい表現もすぐに理解するのは難しくても、そのカリスマティクな魅力はきっと実感できると思います。3月の来日公演で、是非、生で体験してみてください。

フェスティバル中は、19時、21時、24時と3プログラム連続の日が何日かあります。また、オフフェスティバルでも各所でいろんな公演が催されているので、体が一つでは足りません。さらに、クラスを受講となれば...。これぞまさにフラメンコ修行!?

JAVIERFERGO_AMAYA100_02WEB.jpg最初の三連荘ナイトの最後は、フラメンコ専門家でフラメンコ番組なども手がけているマヌエル・クラオ氏(Manuel Curao)による、カルメン・アマジャ(Carmen Amaya)のドキュメンタリー。生誕100周年のカルメン・アマジャ。アメリカでの大成功により、フラメンコを世界的に有名にしました。生前の映像や関係者の逸話、そしてルシア・アルバレス"ラ・ピニョーナ"(Lucia Alvarez "La Pinona")のバイレもありました。

JAVIERFERGO_CARBONELL_03WEB.jpg翌三日目。19時からは、若手カルロス・カルボネル(Carlos Carbonell)の公演。ハビエル・ラトーレ(Javier Latorre)とアナ・サラサール(Ana Salazar)がゲストということで、見逃せない感がアップ。いそいそと劇場に向かいました。テンポのよい公演で、カルロスの踊りも光り、あっという間の一時間。2004年のフェスティバルでのシャンソンをスペイン語で歌ったアルバム「Canta a Edith Piaf(エディット・ピアフを歌う)のコンサート以来、じっくり聞く機会のなかったアナ・サラサールもコケティッシュな魅力健在でした。

JAVIERFERGO_GALAFLAMENCA_06WEB.jpg続いて「ガラ・フラメンカ(Gala Flamenca)」と題した公演。ガラというだけあって、アントニオ・カナーレス(Antonio Canales)、カリメ・アマジャ(Karime Amaya)ら、今まであまり同じ舞台で観たことのない取り合わせ。目を引いたのはヘスス・カルモナ(Jesus Carmona)。昨年はへレスのフェスティバル、フランス、日本と三か所で彼の踊りを観ましたが、今回のアレグリアスは小気味よく、正統的でありながらユニークな表現も入り、楽しませてもらいました。

JAVIERFERGO_LONDRO_01WEB.jpg4日目は、小島章司舞踊団の公演でおなじみの歌手、ロンドロ(Londro)のコンサート。ここへレス出身のロンドロは、会場にいらしていた小島章司氏にソレア(フラメンコの曲種のひとつ)を捧げ、踊りのバックで歌う時とはまた一味違う熱唱を聞かせてくれました。

ビジャマルタ劇場では、ベレン・マジャ(Belen Maya)の公演「ロス・インビタードス(Los Invitados)」。インビタードスとは招待客という意味。招待されていろんな公演に客演してきたベレンが、自分の舞台にアーティストを招くという流れ。ベレンのアーティスト魂をくすぐる選りすぐりの歌手が一人ずつ登場し、カンテソロ、そしてバイレとの絡みを見せてくれました。JAVIERFERGO_BELEN-MAYA_04WEB.jpg
セビージャのホセ・アニージョ(Jose Anillo)がまず登場。続いて、ウトレラのトマス・デ・ペラテ(Tomas de Perrate)。なんと、フレッド・アステアの映画「トップハット」の有名な曲"Cheek to cheek"を英語で歌うというサプライズ。そして、もう一つのサプライズは、唯一のゲストバイラオールのマヌエル・リニャン(Manuel Linan)。マントン(大きなマント)で顔を覆い、バタ・デ・コラ(裾の長いスカート)を来た踊り手が登場。ベレンかと思いきやマントンを広げたらなんとマヌエル!JAVIERFERGO_BELEN-MAYA_02WEB.jpg会場からは思わず声が上がり、やんややんやの声援。いたずらっ子のように踊りまくる姿に会場も大喜びでした。ベレンとのバタ・デ・コラのデュオでの踊りは、昨年10月の来日公演でも見られましたが、今回はまた違った駆け引き。来日の際は、この二人のレッスンのお世話をさせてもらいましたが、移動中もまるで兄弟のように仲の良かった二人。その良い関係が踊りにも現れていました。続いて、ホセ・バレンシア(Jose Valencia)のシギリージャ。作品中はシギリージャが何回か歌われていました。ベレン自身も好きな曲種であるとともに、招待客を迎える「晴」との対照にある「暗」を表していました。
JAVIERFERGO_BELEN-MAYA_06WEB.jpg最後のインビターダは、カルメン・リナーレス(Carmen Linares)。バックスクリーンに、ベレンの母、バイラオーラのカルメン・モラ(Carmen Mora)の踊る映像が映し出されました。カルメン・モラは、ベレンが15歳の時、公演先のメキシコで交通事故で亡くなりました。亡くなった母の踊ったタラントのビデオを見て、その踊りを学んだというベレン。年を追うごとに、母の面影が出てきたと、生前のカルメン・モラを知っている人達は言っています。その母に歌っていたカルメン・リナーレスを招いてのバイレで作品の最後を締めくくりました。

さて、既に日本でも報道されているようですが、本日(2月26日)ギタリスト、パコ・デ・ルシア(Paco de Lucia)の訃報が入りました。66歳という早すぎる死に、大きな衝撃が走っています。その続報は、以降の公演情報と並行しながらお伝えしていきます。

FOTOS: Festival de Jerez/Javier Fergo

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