unnamed.png今年も暑い夏がやってきました。暑い、あつい、熱い......。この「熱」という漢字は、とかく日本ではフラメンコを表す時に使われます。そう、おなじみの「情熱のフラメンコ!」です。ちなみに来月公開されるパコ・デ・ルシアの映画のタイトルは「灼熱の」とされています。「熱い」のと同様に、フラメンコ=薔薇の花をくわえて踊るというイメージも定着しています。

赤い花は、女性アーティストの髪飾りとしては、本場スペインでも定番ですが、口にくわえて踊っているのは...実際にはあまり目にしません。"フラメンコ"という言葉から湧く"イメージ"が定着していて、誰もが何となくそれらしい動きで表現できるというのは、認知度が高いと言えますが、実際にフラメンコはちゃんと観たことがないのよ?というケースは意外と多いのではないでしょうか。10年前にアーティストと行った名古屋のお寿司屋さんでさえ、お客がフラメンコダンサーだと知ると、言葉が通じない分、手を上げて踊るような動きをしてくれました。しかし、この"イメージ"だけが一人歩きしてしまうと、情熱的なふりさえすれば、フラメンコだと認知されてしまうかもしれませんね。フラメンコを「熱」という漢字を使って表すのは、決して間違いではありませんが、熱いだけでなく、伝統、荘厳、哀愁、歓び、笑い、時にはクールな魅力もあり、様々な形容詞を冠することできる芸術です。そのことをもっと日本の皆さんに知っていただけるよう、色々な現地のフラメンコを写真をまじえてこれからもお伝えしていきたいと思います。(写真はLa Islaのフェスティバルのロゴとマカレナ・ラミレス)

スクリーンショット 2016-06-22 18.05.41.pngさて、今まさに旬のアーティスト達が集うフェスティバルがこの夏も各地で行われます。昨年、レポートしましたフランスのモン・デ・マルサン(Mont-de-Marsan)では、7月4日から9日に第28回アルテ・フラメンコ(Festival Arte Flamenco)が開催されます。オープニングは、サラ・バラス(Sara Baras)。続いて、ギタリストのサンティアゴ・ララ(Santiago Lara)、バイラオーラ、ベレン・マジャ(Belen Maya)の公演など。ワークショップも例年のように行われます。プログラムはこちら

7月21日からは、スペインのカディス県サン・フェルナンド(San Fernando, Cadiz)で、第3回ラ・イスラ・シウダ・フラメンカ(La Isla Ciudad Flamenca 2016)が開催されます。この地は以前は「島」だったことから、スペイン語で島を表す「ラ・イスラ(La Isla)」と呼ばれています。8月31日までという長丁場。夏じゅうフラメンコが溢れる街と化します。海も近く、カディスやフラメンコとシェリー酒で有名なへレス・デ・ラ・フロンテーラ(Jerez de la frontera)にも電車で一本。ゆっくりアンダルシアの夏を過ごすには穴場かもしれません。

このフェスティバルは、今年のフラメンコ批評家たちが選ぶ「Flamenco Hoy」という賞で、フラメンコの普及に貢献した活動として表彰され、注目を集めています。期間中は、地元が生んだ名カンタオール、カマロン・デ・ラ・イスラ(Camaron de la Isla)に所縁のあるバル&レストラン「ベンタ・デ・バルガス(Venta de Vargas)」を中心に、様々な場所でコンサート、ワークショップ、展示など盛りだくさん。公式プログラムはこちら。
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今年は、フェスティバルの広告にも登場している、同じカディス県でサン・フェルナンドのお隣、チクラナ・デ・ラ・フロンテーラ(Chiclana de Frontera)のバイラオーラ、マカレナ・ラミレス(Macarena Ramirez)が公演にクラスにと大活躍の予定。また同郷のカンタオール、アントニオ・レジェス(Antonio Reyes)もヘレスのギタリスト、ディエゴ・デル・モラオ(Diego del Morao)とのコンサートを行います。バイレでは、ファルーコ・ファミリー(Familila Farruco)の末弟エル・カルペタ(El Carpeta)の出演も予定されています。もちろん、地元サン・フェルナンド期待の若手カンタオール、ホアキン・デ・ソラ(Joaquin de Sola)の歌声も聴ける機会があると思います。2月のヘレスのフェスティバルに並行して開催された「ラ・ロンハ」でのコンサートでは、ますます実力に磨きをかけた姿を見ることができました。関連記事はこちらをクリック。

Cartel Flamenco On Fire 2016.jpg8月24日から28日には、スペイン北部ナバラ州のパンプローナ(Pamplona, Navarra)で、こちらも3回目の若いフェスティバル、Flamenco On Fireが開催されます。パンプローナは牛追い祭りで有名ですね。フラメンコとなると、スペイン南部アンダルシアが発祥で、現在でも北でのフラメンコ公演は少ないのですが、ここパンプローナはフラメンコギターの巨匠、サビーカス(Sabicas,1912-1990)の出身地なのです。フラメンコギターの祖、ラモン・モントージャ(Ramon Montoya)の流れを汲み、7歳にしてマドリードでデビューしてセンセーションを巻き起こしたサビーカス。このパンプローナのフェスティバルは、彼へのオマージュも込めて発足しました。そして今年はそれに加えて、グラナダのギタリスト、フアン・アビチュエラ(Juan Habichuela)へのオマージュも企画されています。ギターコンサートでは、ビセンテ・アミーゴ(Vicente Amigo)、ディエゴ・デル・モラオ(Diego del Morao)、バイレではベレン・マジャ(Belen Maya)、ファルーコ・ファミリー(Familia Farruco)、グラナダのフアン・アンドレス・マジャ(Juan Andres Maya)、イヴァン・バルガス(Ivan Vargas)、カンテはアルカンヘル(Arcangel)とブルガリアンコーラスの共演、アルバ・モリーナ(Alba Molina)が両親であるローレ&マヌエル(Lole y Manuel)の名曲を歌うもの、そしてヘレスのリズム満載のディエゴ・カラスコ(Diego Carrasco)とトマシート(Tomasito)のコンサートと、フラメンコファン垂涎のラインナップ。またジャンルを超えた試みとして、ジャズとフラメンコを掘り下げて新しいピアノ演奏を生み出しているピアニストのアリアドナ・カステジャーノ(Ariadna Castellano)や地元ナバラのアーティストによる公演もプログラムされています。英語のホームページはこちら

これらのフェスティバルは、来年以降も同じ時期に開催されると思われます。今年はもう間に合わないという方も、次の夏休みのスペイン訪問のオプションとして、観光向けとは違い、地元の人ともふれあえる、本場の"今"のフラメンコを感じられる公演を体験する機会としてぜひご検討ください。

そして、9月にはフラメンコ界のビッグ・フェスティバル、セビージャのビエナル(La Bienal de Sevilla)が控えています。夏から秋へ、スペインのフラメンコ情報を現地よりお送りする予定です。

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