久々の「カチューチャ便り」(グラナダフラメンコ)をお届けします!
近年は日本中心の私でスペイン卒業も間近ですが、まだ完全撤退できないでいる状況です。ですから毎年1回はスペインに戻っていますが、パンデミックでそのリズムは途切れてしまいました。振り返ると、4年前の3月グラナダに到着した翌日にスペインはロックダウンとなりました。9月にやっと日本に帰ることができましたが、その時書いたブログを最後に更新できないまま4年の歳月が流れてしまいました。この間あまり良い状況とは言えませんでしたが、お陰様でこのたびブログ再開に漕ぎつけたのは嬉しいことです。4年のブランクを埋めるべく、意識を高めて私なりのフラメンコ活動ができるよう頑張りたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!


昨年の春、実に2年半ぶりになるのですが、コロナ禍後のグラナダに戻り、そしてこの春もリピートしました。 久しぶりではありますが長年住んでいるので、街に出ると水を得た魚のようにスイスイと、何のことはない、今までのグラナダ暮らしが直ぐ戻りました。中心街はところどころ様子が変わって新しいお店も増え、モダンな街並みになっているように感じました。コロナ以前と変わらぬ活気が戻っています。マスクなんか誰もしていません。昨年は少し風邪気味でしたのでマスクをかけてサクロモンテに行ったら、マスクは止めてくれとか言われまして参りました。もうすっかりコロナ禍終了っていう感じ、マスク着用は病院だけ義務となっています。
物価は上がっています。昨年グラナダに着いて直ぐにオリーブ油を買いに中心街のスーパーに行きましたが、どこにも見当たらないのでおかしいなと思っていたらレジの後ろに隠すように置いてあるのを発見、オリーブ油は以前の倍ぐらい値上がりましたから万引きが増えているようです。スペインもいいけれど、この物価高、円安のダブルパンチ、コロナ前の倍近くの航空代、生活費が掛かってしまい、仕事なしではやっていけません。そんな中、コンサートの入場料などもさすがにちょっと上がっているとはいえ、無料で観賞できる催し物、イベントなどもあり嬉しくなります。フラメンコもコンサートが増えましたし、新しい動きもあり、恒例のフェスティバルも健在でコンサートの幅が広がっています。コロナ禍後のフラメンコは以前に増して賑わっているように感じました。

市役所前に設置された十字架祭のポスター

3月下旬あたりになるとアンダルシア地方では復活祭Semana Santaセマナサンタが盛大にありまして、その後2週間でセビージャの春祭りFeria de Abrilが始まります。この時期5月にはへレスのFeria de Caballo馬祭り、コルドバのパティオ祭り等があり、そしてグラナダはCruces de Mayo十字架祭で盛り上がります。
グラナダのフェリアは6月になります。Feria de Corpusコルプス祭です。これがまた宗教的な行事もあってかなり盛大、市役所前の仮設大舞台では郷土舞踊やフラメンコが見られます。地元のフラメンコアカデミーとか、郷土音楽舞踊専門のコーロ・イ・ダンサといわれるグループとかの演技ですのでちょっと雰囲気違いますが子供たちが可愛いです。どの地方でもお祭りに関連してコンサートもありますし、フェリア会場ではセビジャーナス、ルンバなどいろいろ踊って楽しめちゃいます。スペインに行くなら春がお薦め、お祭り好きでフラメンコの土台があるアンダルシアらしい催し物が沢山あります。

それで今回は、昨年と今年の春を振り返りながら、素敵なグラナダのアクティビティー、文化イベント、そしてフラメンコのコンサート、フェスティバル等をレポートも兼ねてご紹介しながら最近のグラナダフラメンコを見ていきたいと思います。

Ceremonia del Río セレモニア・デル・リオ

4月8日というとお釈迦様の誕生日で花まつりですが、スペインは世界ロマ人の日Día internacional del Pueblo Gitanoです。以前このブログでも何回かレポートを書きましたが、グラナダでも記念行事が開催されます。だいたい午前中は会議、座談会など、午後は文化行事などありまして、夕方から川渕のセレモニーCeremonia del Rio が和やかに催されます。
いつもへニル川のプエンテ・ロマノ(ローマ橋)の横にある埠頭に設置された仮設舞台で記念式典とコンサートがありますが、コンサートはグラナダのヒターノ(ロマ人)アーティストが歌ったり、踊ったりします。招待されたアーティストの演技の前に、必ずロマ語で賛歌を歌うことになっています。そのあとフラメンコの演技があり、フィナーレはルンバで盛り上がります。とてもファミリー!今年もいくつもの輪ができてみんなで楽しそうに踊っていました。セレモニーが終わる頃は陽が落ち始めますが、ロウソクや花びらを川に流しまして、灯篭流しみたいでとても綺麗なのです。初めて見た時はこんなこともやるんだ~と感激しました。以前は川に流すバラの花びらやロウソクをみんなに配っていたものですが、最近は各自持参のようで…

LA NOCHE EN BLANCO ノーチェ・エン・ブランコ

今年のポスター

実は昨年まで私も知らなかったのですが、4月末にノーチェ・エン・ブランコ LA NOCHE EN BLANCOという街全体イベントがあります。グラナダ市が一斉に歴史や文化のお披露目を街ぐるみでするっていうのは興味深いと思いました。しかも夜(ノーチェ)から始まって明け方までやっているのです。ですから白夜祭とでも訳しましょうか? 8年前ぐらいからやっているイベントということで様々なプログラムがあり、これを目当てに北の地方からやってくる観光客もいるのでびっくりです。フランスが発祥地?いや、どうもヨーロッパ全体の傾向のようです。スペインでもあちこちでやっているようです。
ではいったいどんなイベントなのかっていいますと、グラナダではアルハンブラ宮殿やその他観光名所など、寺院、教会、美術館、博物館…etcなどが無料で開放されて催し物やったり、街のあちこちの広場で無料コンサートがあったりとか、昨年はタブラオでも20分の無料フラメンコショーをやったりと、とにかくいろいろただで楽しめちゃう訳です。とにかく市民にもっとその土地の文化、芸術に接してもらいたいということで、大人だけじゃなく子供の為に遊園地などでもいろいろ。ただ、人がワーッと押し寄せるのでどこでも行列、時間をチェックして早めに行かないと見逃します。でもいいですね、あまり欲張らずに目当てのシティオ(場所)を2,3ヶ所決めて、楽しむっていうのはどうでしょうか。商業施設やバル、レストラン等もこれに連動して開いていますのでどこも大入満員、ビールとタパスで休憩です。毎年プログラムが変わりますので楽しみですが、今年は何故かフラメンコが無かったのです。フラメンコがないというのはいったいどういうことなんでしょう?

Pregón del Rocio プレゴン・デル・ロシオ 

教会内に設置された聖母マリアの絵

5月中旬にはロシオの巡礼祭Romería del Rocío ロメリア・デル・ロシオがあります。スペイン各地から人々が巡礼隊(Hermandad)を組んで巡礼祭の行われるウエルバ県アルモンテの小さなロシオ村に向かいます。長い道程を馬車とか、今はキャンピングカーのような乗り物で沢山食糧積んでロシオ用の洋服、女性はTraje Rocieraセビジャーナス踊る時に身に付ける衣装ですね、それらを着て歌ったり踊ったりしながら向かいます。巡礼隊がロシオに到着し、礼拝堂の前に集合してからの一連の行事や巡礼祭のクライマックス等はテレビ中継されるので見られますが、巡礼隊の宿舎では歌ったり踊ったりで盛り上がるようです。アーティストや有名人も多いので凄そうです。
私は、昔アルモンテの巡礼ロードやロシオへ見学に行ったことはありますけどちゃんと巡礼したことはないのでいつか機会がないかな~と思いながら40年経ってしまったのは残念です。まぁそれはいいとして、グラナダからもまとまって巡礼隊が出発するのですが、その前に壮行会のような式典があり、それがPregón del Rocioプレゴン・デル・ロシオなのです。キリスト教団の寺院で行われます。今年初めてその式典に行ってみました。今年はAlicia Moralesアリシア・モラーレスというグラナダの新進カンタオーラがPregoneraプレゴネーラ(出発の辞を述べたりする人)ということなので何か歌ってくれるだろうと思ったのです。ロシオの巡礼に託す思いや、その関連エピソードなどもつらつらお話ししていてとても長い式典でしたが歌も沢山歌っていました。フラメンコのカンテじゃありませんが、昔から歌われているロシオ関連の歌なんでしょうね、歌唱力のいる厳かな雰囲気の歌や、セビジャーナスもありました。アリシアは立派に歌い切り、雄叫びを上げるように気合の入ったハレオを飛ばし、この式典の主役を立派に務めてとても感心しました。 ビバ!Viva la virgen del Rocio! ビバ!Viva la Blanca Paloma!////////
アップした写真の絵に描かれている優しく愛くるしい顔の女性はロシオの礼拝堂の中にひっそり佇む聖母マリアViegen del Rocioで、Blanca Palomaブランカ・パロマ(白鳩)と呼ばれています。巡礼祭では礼拝堂に押し寄せた人々が、マリア様を外にかつぎ出し、セマナ・サンタのプロセシオンの様に村中を行進するのですが、マリア様に触れようと押し合いへし合いで皆さん興奮状態、それはそれは大変な騒ぎとなります。それだけ信者たちを熱狂的にしてしまうブランカ・パロマなのです。この巡礼に参加することは人々にとって大切な意味があるのがわかります。

設立75周年を迎えたPeña la Platería ペーニャ・ラ・プラテリア

75周年記念プログラムの一例

ところで、この春Peña Peña la Platería (以下プラテリア)は設立75周年を迎えました。これに因んで4〜6月には例年より華やかにコンサートが開催されました。スペイン最古といわれるこのペーニャ、「ラ・プラテリア」については、以前70周年の時にこのブログで詳しくお伝えしましたが、やはりこのペーニャは会員も多いし由緒あるペーニャですから大物アーティストのコンサートやアクティビティが多く、私もグラナダに帰ると毎週ペーニャ通いで忙しくなります。長くグラナダに居るのなら会員になるといろいろ勉強になりますのでお勧めです。
プラテリアでは毎週土曜日が会員向けのコンサート日になっていますが、近年は他にもいろいろ催しています。木曜にJevesFlamencoフェベス・フラメンコ、金曜日に映画Pelicula、Cineを観る会などの会合、日曜の昼間にMachineFlamencoマチネ・フラメンコ… 、そういえば今年からフラメンコ映画のコンクールも始まりました。面白いですね。時々懇談会やフラメンコ著名人の講演もあったりしてそれも興味深いです。
夏は中庭でアルハンブラ宮殿が背景となる仮設ステージ、冬は館内のサロンにある小劇場でフラメンコを満喫できます。バル、レストランには地元アーティストやフラメンコファンがいっぱい集まります。レッツ・ゴー¡Vamos!ですね。

その他のフェリアなど...

モダンでシックな衣装

実は近郊の村々も混ぜるとここには書ききれないほどあれこれ沢山あるのです。だいたいグラナダ市内で見られるものをご紹介しています。
この3月にはフェリアで着るフラメンコ風衣装のファッションショー”Pasarela Flamenca”がありました。これも毎年あるようです。フラメンコ衣装やアクセサリーのお店も出店します。今年会場にチラッと行きましたがファッションショーは時間帯が合わず見られずで残念でした。他に、今年はグラナダに住む日本人主催の「お茶と日舞の会」なんて洒落たイベントもありましたよ。グラナダには日本ファンが多いんです。お寿司はみんなの大好物です。
4月には毎年ブック・フェリアFeria de Libroが1週間ぐらいあります。今の時代、本を読む人は少なくなっていると思いきや、けっこう人が集まり大賑わいです。お子様ブック、マガジン、高級書も定価よりちょっとお安く買えたりするし、探せばフラメンコの本もありますね。
後から知ったのですがこの頃、ワイン・フェリアFeria de Vinoもあったとか。ワイン、残念でした。そういえば、4/29は世界舞踊デーDía Internacional de la Danzaです。この日も勿論のこと関連催事があります…


さて春は過ぎ、今は真夏です。夏と言ったらアンダルシアの村々で開催される夏のカンテフェスティバルが楽しめます。昔(40年ぐらい前)はこれ専門の小冊子が発行されていたものですが、最近は見かけません。だいたいいつどこでどんなフラメンコがあるのかよく分からないものですからうっかりすると見逃しますが、今はアンダルシアを中心に毎月無料配布される娯楽情報小冊子があってそれが頼りになります。口コミもあったりしますが、インターネットに釘付けとなり、チケットもネット購入が余儀なくされる時代ですね。文化イベントに限らずお役所関係、病院などでもオンライン予約、申請が殆んどです。そしてペーパーレス化しているスペインです。アナログではやっていけませんが、私は古いので街のTaquillaタキージャ(チケット販売所)で紙のチケットを買って持っているのって好きです。(つづく)

つれづれなるままに書いています。グラナダに行ってみたくなりませんか?次回はフラメンコがもっとたっぷり見られるフェスティバルなどご紹介しますね、お楽しみに!

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