4月のシェラネバダ山脈が遠くにチラッと見えます!

ちょっと間が空いてしまいました。今はもう秋、紅葉の季節となりました。皆さんのフラメンコはいかがでしょうか。
9月には盛大に日本フラメンコ協会主催の「新人公演」が3日間ありました。この新人公演に参加する踊り手さん達のレベル向上には近年目覚ましいものがありますね。カンテはなかなかちょっとハードルが高いというか、でもファンは増え続けていますね。ギターの参加者が著しく減っているのはどうしてでしょうか、わかりません。全体的にフラメンコやっている人って女性のが多い感じですね。男子がんばれ~
ところで、芸術の秋ということで、スペインアーティスト来日コンサートもこの秋冬なんだかあれこれいっぱいあります。日本のアーティストさん達もこのところ動き出しました。優れたスペイン人アーティストを招聘しての劇場公演がいくつかあります。昔と違ってこの物価高と円安ですから主催者側は大変だと思いますが、頑張っているのは嬉しいことです。それにしても物価高と円安、これ何とかしてほしいです。トマト1個300円近くするなんて…でも野菜の高騰だけじゃないですね。給料は全然上がらない、それじゃぁ、やっていけません!スペインにも簡単に行けな~いです。いくらイベリア航空の直行便が復活したって、あまり関係ないです、私には。いつも安い航空券探し。私はスペインで買う訳ですが、昔はスペインで買うと断然安かったのですが、最近あんまり変わらないというのも困ったものです。
さてそのスペインでは、9月中旬から10月にセビージャのビエナル・デ・フラメンコが盛大に開催され興味深いコンサートが沢山ありました。第23回ということは46年も続いているということです。私がスペインに行った翌年に第2回のビエナルがあったんで、ひえ~、ですね。大昔。今はスケール大きくなりましたし、ビエナルとは2年毎という意味で毎年あるわけではないので毎回楽しみにしているファンが多いです。来年あたりからグラナダでもビエナルを開催するという話をチラッと聞きましたが、それはどうなのでしょうか?言いたがりグラナダ人?気持ちはわかりますがなにもセビージャをそんなに意識することもないのでは? そういえばマラガでもこじんまりとビエナルやった時が確かありました。でもこれは一時的なことで終わったような?

話し出すと話は耐えなくなるフラメンコです…今回はフラメンコファンとしては見逃せないグラナダならではのフラメンココンサートのご紹介です。



PATRIMONIO FLAMENCO パトリモニョ・フラメンコ

3月セマナサンタの前に開催された公演

サクロモンテにあるチュンベーラ劇場で秋~冬~春にほぼ毎週開催されるコンサートがあります。パトリモニョ・フラメンコPatrimonio Flamencoです。チュンベーラ劇場でのこのコンサートが始まったのは2001年か2002年でした。もうかれこれ20年以上も続いているのは嬉しいことであります。私も過去3回出演したことがある思い出の催し物です。3回目は日本の教室生徒の発表会も兼ねての公演で楽しかったのです。
チュンベーラ劇場はアルハンブラ宮殿を背景にコンサートが観られる素敵な中劇場なのです。サクロモンテにはチュンベーラChumberaというサボテンがいっぱい生えているので、それで名付けられたチュンベーラと呼ばれる場所自体は劇場、テラスや洞窟もある大きな敷地であります。プライベートな会合やパーティーで利用できます。劇場内には今は亡きマノレーテの舞踊学校Escuela Internacional de Flamenco Manoleteのオフィスもあり、スタジオもあります。敷地全体が小高い丘ですので、現在は上の方にオフィスを移転しています。夏などはマヌエラ・カラスコやファルキート、アントニオ・カナ―レスなど沢山のアーティストのクルシージョも開催されてきました。
さて、このパトリモーニョ・フラメンコは、だいたいグラナダのアーティストが出演していました。普段タブラオ出演やフィエスタなどが中心の中堅アーティストでもその気があれば自分企画のリサイタルができるという有難い場所でした。今でもそのアタックできる場所であることは変わりないようですが、このコンサートの推進者によって雰囲気が違ってくるのです。今はですね、土地のアーティストだけでなく様々なところから様々なアーティストがやって来て出演している感じになっています。スター級のアーティストは出ませんが、その分入場料もお手頃なのが嬉しいです。長年8€だった入場料が10€に値上がりはしましたが、庶民には有り難い額です。とにかく様々なアーティストが出演するのでとっても楽しめますよ。

ANDALUCIA FLAMENCO アンダルシア・フラメンコ

これは 私の好きなフラメンココンサートです。アンダルシア・フラメンコAndalucía・Flamencoと言います。以前はフラメンコ・ビエネ・デル・スル Flamenco viene del sur(フラメンコはスペイン南部、アンダルシアが本場)と題されていましたが、なんでこんな平凡なタイトルに変えたのかはよくわかりません。
このコンサートはセビージャやマラガでも開催されていました。今もセビージャではやっていると思います。グラナダは2月頃~6月のいつも月曜日の夜に開催されていました。場所はアルハンブラ劇場Teatro Alhambra、300人ぐらいの山小屋のようなスタイルの小劇場でアーティストの息遣いまで近くで見られるのが嬉しいです。
客席の後ろに向かって高くなっていますので後ろの方の席になると天井が直ぐ上にあるわけです。このコンサートには多くのアフィシオナード(愛好家)が集まります。内容も中堅以上の実力アーティストのフラメンコ作品が観られ、小さい劇場ですから一体感があってとてもいい感じなのです。ハレオが飛び交うと響き渡り盛り上がります。私には平日、月曜の夜というのがどの催事とも重ならず、自分の都合もつけやすいのが嬉しかったのですが、昨年から週末の、しかも5月~6月という他にもコンサートが多い時期にまとめて開催されるようになりました。週末開催というのはちょっと迷惑です。土曜日などはペーニャや他のコンサートと時間が重なり、どちらかを諦めなければならなくなりますから残念です。「フラメンコ・ビエネ・デル・スル」の時代は良かったと懐かしんでいる私です。今年はエバ・ジェルバブエナ、ドランテ、そして日本でもファイナルコンサートをやった、あのフラメンコの女王マヌエラ・カラスコの公演もここでありました。

MILNOFF ミルノフ 

今年のプログラム

パンデミックで世の中一変した2020年にミルノフMilnoff というフェスティバルが生まれました。それはちょっと明るいニュースでした。思い出せば、スペインはその年の3月にEstado de Alarma(警戒事態)となり、国民に外出禁止令が出ました。その時私はスペインに居たのでこのブログでもお伝えしました。9月にはやっと帰国できたのですが、同じ9月に開催されたこのミルノフを見られなかったのがちょっと残念でした。この年は殆んどの公演が街に設置された会場で行われ、嬉しいことに入場無料で、コロナ禍のグラナダ市民もフラメンコを身近で楽しめたようです。
その後、グラナダ市の文化事業として嬉しいことに今年で5回目を迎えました。今年は6月~7月に開催されました。この催し物の精神は1922年のあの歴史に残るカンテフェスティバル「コンクルソ・デ・カンテ・ホンド」Primer Concurso de Cante Jondoが根底にありまして、文化芸術の宝庫であるグラナダの財産の一つであるサクロモンテのザンブラをはじめ、その他フラメンコ芸術の活性化を図ろうということなのです。
ではいったい誰が音頭をとっているのかと言いますと、ペペ・ルイス・カルモナ”アビチュエラ”Pepe Luis Carmona ”Habichuela”なのです。ぺぺ・ルイスはグラナダのギターで有名なアビチュエラ家のルイス・アビチュエラの息子さんです。フォアン・アビチュエラ、ぺぺ・アビチュエラは父親ルイスの兄弟です。かつてはバルベリア・デル・スールLa Barbería del Surという3人組のグループの一員として活動していましたのでご存知の方も多いと思います。とにかくカッコよかったのであります。彼はギタリストではなく歌い手、素敵な曲で90年代かな、人気があり私もファンでした。バルベリアを離れた後もそれなりの活動歴がありますが、現在彼はグラナダに住んでいます。
もともと彼の親も叔父さん達もサクロモンテ出身で小さい時はサクロモンテのクエバ(洞窟)で踊ったりしていたわけで、青年になるとマドリッドへ移動したのです。昔は活動の拠点をマドリッド、外国などへ移す人が多かったのです。日本だって若者は夢抱いて地方から東京に出て自立しますよね。ですから皆マドリッドに家を持ち、ぺぺ・ルイスもマドリ育ちのマドリっ子、皆んなマドリッドで活躍していました。
同じようにへレスからやって来ていたフラメンコたちとも同じアンダルシア人なので当然のように息が合って、ケタマKetamaなんかもそうですがグループフラメンコの一時代を築きました。そんな彼がルーツであるグラナダに住み始めたのはサクロモンテのこれまたとってもフラメンコなファミリーの娘さんと結婚したこともあって、グラナダで再出発と相成ったのではないかと想像しています。素敵じゃないですかね?
グラナダのフラメンコをもっと活性化させようと、ちょっとヒターノ優先の現代的プーロ路線でやっている感がありますが、それは彼のヒターノとしてのプライドだと思います。それは毎年招かれるアーティストの顔ぶれを見ればわかります。彼の人脈、好みなども関係しているでしょうし、ペーニャ等とは違った域のフラメンコを楽しませてくれるのでこのMilnoffミルノフは今後も楽しみなコンサートの一つであります。

FESTIVAL INTERNACIONAL MUSICA Y DANZA グラナダ国際音楽舞踊祭

プログラム表紙

グラナダと言ったらこの長い歴史を持つ音楽祭ですね。フラメンコだけでなく広く音楽舞踊を満喫できる格調高いコンサート、グラナダ国際音楽舞踊祭 Festival Internacional Musica y Danzaが毎年6月末~7月上旬に2週間ぐらい開催されます。
もう73年も続いているなんて凄いですね。私は大昔に、セビージャから見に行ったことがありました。ヘネラリッフェ劇場で、どこかの舞踊団の公演だったのでしょうか、忘れましたが、やたらマントンを羽織った美しい女性達がパートナーと連れ添いさっそうと入場する中、こちらはチケットが売り切れで入れずにどうしたものかと途方に暮れていましたら、入り口付近にいた警備員のおじさんが内緒で裏口から入れてくれたのです。そして、あのヘネラリッフェの劇場を囲む大木が茂る一角の舞台が見える秘密の場所に連れて行ってくれたのです。大丈夫、何もされませんよ、他にも同じような人たちがいましたから安心でした。まぁそんな訳で舞台からかなり遠かったですけど、ちょっとラッキーだった思い出や他にもいくつか忘れられない思い出があります。たださすがに出演したことはありません(笑)
ちょっと話が本題から外れましたが、この音楽祭でフラメンコは少ないのですが必ず大物アーティストが出演します。アルハンブラ宮殿の王宮のパティオや、カルロスキント宮殿とか、ヘネラリッフェ公園劇場など舞台があちこちに設置され、素敵な場所で落ち着いて観られるというのもいいですね。入場料もバレエやオーケストラなどフラメンコでも高額だったりします。とにかく世界各地から有名な音楽団、舞踊団、アーティストがやってくるのですから。そして、そのような高尚なコンサートばかりではなく、FEXという庶民レベルの関連プログラムも別にあるので、それこそあらゆる音楽舞踊公演が楽しめます。FEXは確か入場無料のものも多かったと思います。場所もアルハンブラ宮殿に限らず市内の色々な場所で音楽祭の一環で開催されるのです。コロナ禍の4年前もFEXの公演をいくつか観ました。
その他クルソ(講習会的なこと)もあります。毎年春にプログラムが発表されるのでいつもプログラムを貰いに行きますが、残念なことに紙のプログラムは有料になってしまいました。まぁそんなに高くはないのですが、古い私にとってはちょっと違和感ありです。

LORCA Y GRANADA ロルカとグラナダ

数あるPinedaフライヤーの一つ

8月にはグラナダやフェデリコ・ガルシア・ロルカをイメージしたロルカとグラナダLorca y Granadaという催し物が、アルハンブラ宮殿のヘネラリッフェ劇場で約1ヶ月ぶっ通しで開催されます。もうかれこれ20年も続いているこの公演は、市民戦争の犠牲者となったグラナダの詩人、劇作家であるロルカを称賛し、敬意を表し、偲び、ロルカ関連の作品を上演してきました。ところが、パンデミックの年は大変でしたからイレギュラーでロルカ関連というのではなくグラナダの大物アーティストの4つの公演になりました。また、昨年の作品『PICASSO Y LA DANZA』で突然ロルカからピカソにすり替わってしまったというおかしなことが起こりちょっと批判されましたが、まぁとにかく毎年開催される真夏の夕涼みフラメンコには大勢の観客が集まります。野外のBARバルも出ていて雰囲気満点です。
今年の作品は近年躍進目覚ましいグラナダの誇るバイラオーラ、パトリシア・ゲェレーロが率いるアンダルシア舞踊団Ballet Flamenco de Andalucíaの興味深い作品『Pinedaピネーダ』が上演されました。パトリシアは次世代のスターとして期待されてはいましたがこの10年の目覚ましい活躍ぶりには圧倒されます。短期間でとうとう舞踊団の監督に就任してしまいました。凄いテクニックとハートを持っていますね。今回の作品も舞台構成技術なども卓越していて見応えあると評判です。 セビージャのBienal ビエナルでもこの作品が上演されました。ビエナルの開催前に発表されたフラッシュモブで彼女振付の踊りを体験するのもいいですね。パコ・デ・ルシアのRio De La Mielっていう曲に合わせてパトリシアが振り付けたものです。まだ見てない方がいらっしゃいましたら一緒に踊ってみてはいかが?
フラッシュモブ(通し)  
フラッシュモブ(パソの説明) 

ところで昨年あたりからスタイルがちょっと変わったようです。以前はメインの作品を約1ヶ月やっていただけですが、それだけでは飽きるからとか、最後にちょっと雰囲気変えてっていうことなのでしょうか、本公演とは別に最後の3日間に「おまけコンサート」があるのです。これもどうしてなのかわかりません。今年の顔ぶれは、初日に元パタ・ネグラPata Negraのライムンド・アマドールRaimundo Amador&リン・コルテスLin Cortésという方のコンサート。リン・コルテス、このアーティストはいったいどなたなんでしょう?すいません。全然知りませんでした!どうやら最近人気のヒターノでフラメンコポップ系のアーティストのようです。私もだいぶ遅れてしまいました。ライムンドと一緒に観られるのは嬉しいですよね!
リン・コルテス(Feria de Sevilla)これって楽しいビデオですね!

2日目はアルカンヘル、最終日はトマティート、これらのアーティストはお馴染みですね。

CORRALA FLAMENCA コラーラ・フラメンカ

最後にご紹介したいのはとコラーラ・フラメンカ Corrala Flamencaいう庶民的なカンテのコンサート。これは私向きです。何故ならGratis(無料)なのです。但し、予約しないと入れません。これがちょっと面倒ですが、それは仕方ありませんね。でも簡単、朝電話するだけで予約できます。
コラーラ・デ・サンティアゴ Corrala de Santiagoというグラナダでもアンティックな地区にある16世紀の建物(ホテルの様に宿泊もできますが、一般の人も泊まれるのかはわかりません。)の中庭で行われるので100人ぐらいでしょうか、椅子に座れなくても立ち見で入れます。開始1時間前ぐらいに行けば近くに席がとれますが、小さいパティオの仮設舞台でだいたいどこに居てもよく見えるのが嬉しいです。フラメンコに最適、じっくり鑑賞できてお勧めです。
主に土地のアフィシオナード(フラメンコ愛好家)が集まり、出演アーティストはグラナダのアーティストが多い中、時々地方のアーティストもやってきます。今年はへレスのミヒータ・デ・へレスとギタリストのドミンゴ・ルビッチがやってきました。
グラナダでもへレスのアーティストは人気があります。ブレリアっていったらへレスということで納得しているようです。


つれづれなるままに書いています。グラナダに行ってみたくなりませんか? 
さて次回は最近のタブラオ状況とか、グラナダフラメンコ界の嬉しい話題などに触れてみたいと思います。お楽しみに!
(つづく)

3つの壁の乗り越え方

【フラメンコに行き詰まりを感じている方へ】

フラメンコ(カンテ/踊り/ギター/他)が難しい...
先行きが見えない...
壁を感じている...