フラメンコ音楽ファンのみなさん、お久しぶりです。今週末に上演の「踊りの声~La Voz de Baile」(京都11/3・東京11/4)に、何と、私も大ファンの唄い手、レメディオス・アマジャが登場します! これを機に彼女のディスクとウイスキーを引っ張り出して、前夜祭といきましょうか。

 ベスト盤をのぞけば、一番最近のオリジナル・アルバムは、2002年発表の「ソンソネーテ」(EMI)。ここまでフラメンコど真ん中の、かすれたひび割れ声は、いま彼女以外にほとんど思い当たりません。昔からカマロネーラ(カリスマ歌手・カマロンの愛好家)を公言し、初期は確かに似ていましたが、本作の声はぐっと深みが増し、無二の個性が光ります。
 1曲目の「ソブレビビレ(生き残る)」は、70年代にイタリアの女性歌手ミーナが出した「Fiume Azurro(蒼い河)」のスペイン語ヴァージョンで、ロシオ・フラードも歌っていたものを、ルンバ・フラメンカ風にカヴァー。「アイ・・・自分をいつわってでも、生き残らなければ」という歌詞が、強い女の象徴のようなレメディオスが唄うと、実に真に迫ります。
 カマロンに捧げた「ロマンセ・デ・アマルゴ」(カニサーレス伴奏)や、70年代のアンダルシア・ロックバンドへのトリビュート「アイレ・デ・アラメダ」など、収録の全10曲はバラエティーに富む構成。
 ブレリア「エン・エル・リンコン・デ・ルイス」では、48歳で早世したヘレスの吟遊詩人、ルイス・デ・ラ・ピカ(1951~1999)を追悼します。「ウン・ドス・トレス、フエゴ!」と口火を切る声はルイスのものでしょうか。「あんたはヒターノの中でも唯一のボヘミアンだった/われらのフラメンコ感覚の象徴だった」――こんなルイスのアルバムも、またいずれ。
 思わずウイスキーへ手が伸びるほどのカンテは、昨今、実に少ないですが、漆黒の炎を宿すレメディオスの声は、まぎれもなく本物です。しかも今回はニーニョ・ホセーレ、ディエゴ・デル・モラオという、当代一流のフラメンコ・ギタリストが脇を固めます。
 レメディオスと合わせたVAT69は、最近、ブルース歌手のハウリン・ウルフを聴きながら飲んでいたウイスキー。レメディオスとウルフは時代は違えど苦労人同士、もしかして気が合ったかもしれません。さて、今夜はもうこのへんで、そろそろグラスを用意しましょうか・・・・・・

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