（一般的なフラメンコには直接関係ないかもですが）
スローフラメンコ的にはかなり関係あると思っている、
２０年以上前に受けた自己開発セミナー合宿でのワーク
『難破船』の話です。
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トレーナーが巧みにみんなにイメージを与え始める。
「みんなで大きな船に乗っています。快適な船の旅。
友達同士楽しく過ごしていました」
「ところが穏やかだった天候が一変して大嵐に！」
「船は大波に揺られ続け、沈没は時間の問題です。
一艘の救命ボートに乗れるのはわずか数名のみ」
「あなたはボートに乗りますか？それとも、他の人を生かしますか？」
さあ、人生ゲームのスタート！
即興演劇のようではあっても、
でも決して演技ではなく
真剣に架空の状況を生きるワークです。
雰囲気を出すために部屋は真っ暗。
大風の音が大音量で流れる。
誰が生き伸びて、
誰が沈んで行くのか。
少し迷ったが
私はすぐに生きることを選んだ。
ボートに乗りたいと
みんなの前で主張する。
反感を覚悟していたのに、
なぜかすんなりと救命ボート乗船を許してもらえた。
許すというよりは
わりかし「どうぞ、どうぞ」
って感じだった。
私は末期の胃がんで闘病中の
母親の命救済を賭け事にしていたので、
出されたワークは全部本気でやると決めていた。
命のはかなさ、
たった一つの命の大切さを
感じ始めていた時期だから
特にこの『生きるか死ぬか』のワークを
軽く流すことはできない。
それなりにドラマはあったがものの、
そんなに混乱することなく
ボートに乗る人たちが決まった。
救命ボートに乗ったのは
女性がほとんど。
そして若い男性。
いわゆる弱いとされる人たち
『女子供』を助けるという
一般常識にそった結果だった。
私たちの演技（？）の終了と同時に
沈没した人たちに向かって
トレーナーが怒鳴り出した。
「このうそつき野郎ども！
偽善者ぶってかっこつけたいだけじゃないのか？
弱いものに譲って自分は死を選ぶだと？
自分の命をそんなに簡単に投げ出すのか？
そもそもお前たちは、ほんとに彼らよりも強いのか？
それとも、このワークをなめてるんじゃないか？
冗談じゃないんだ、１００％本気でやったのか？
この結果は自分の人生を中途半端に生きてきた証拠だぞ！」
この怒りの罵倒は本物だった。
何かがぐわ〜っと参加者たちの内心にせまる。
そして、
次に生き残った数人にも怒りが飛んだ。
「自己中心人間！エゴイスト！
お前たちはいったい何様なんだ？
他人は死んでお前たちが生き残るだって？
お前たちには大勢の命を犠牲にするだけの価値があるっていうのか？
血も涙もないやつとはお前らのことだ！
恥ずかしくないのか？
どんな顔して社会に戻るんだ？
死んだ彼らの親や子供たちになんていいわけするだよ！」
ががが〜ん！！
どっちにしても
グサグサと胸に突き刺さるトレーナーの言葉。
映画で死の場面をたくさん見てきているけど、
それはあくまでもフィクションだし、
いつも自分はそれを暖房のきいた部屋で
ポップコーン食べなから鑑賞している部外者だもの。
だから架空の状況とは言え、
自分自身の死に直面したのは初めての経験。
ポップコーンなど食べるどころか
床に放り投げたことさえ覚えていない状況だ。
足で踏みにじられるような劣等感の後に
うわっ、
体に『生』の意識が特出した。
親に、お金に、友人に、社会的地位に、
そして法律に守られている私たちの毎日の生活は、
自分の命は自分で守るという状況とは程遠いところにあるだろう。
いわゆる豊かな社会にいる私たちの
本来の意味での『生』の感覚は
見えないどこかにしまいこまれてしまっているようだ。
自己中野郎！とかなりののしられた後の私はというと？
以外にも
とてもとても強かった。
自分が生き残ったという結果に対して迷いがなかった。
勝ち取った『命』に迷いがなかった。
内面から出てきた要求にしたがった自分は
その結果からくる責任を全面的に受け入れられるようだった。
自分で選んだとはっきりと言い切れる選択だ。
社会的にどうかとか
道徳的にどうかとか
そういう観点から頭で考えた選択ではない。
母の死を目前にする状況で
私は『今は生きのびたい』としっかりと感じたのだ。
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基本的には不自由なく
ぬくぬくと育った私がフラメンコに惹かれた。
なぜだろう？
なんとなく空虚感を覚えたり
ベールがかかったように見えていた景色は
なんなのだろう？
優等生タイプの
規則を守るいい子な真紀は果たして本当の私なのだろうか？
難破船で生き残った後に感じた
あの最強さはどこから来るのか？
ヒターノの古いカンテから感じていた
雑草のような強い強い生命力を
自分自身の中に感じ取った瞬間だった。
ワーク後、
みんなで笑いながら安心してポップコーンの食べられる
暖房のきいた部屋に帰る中、
何かが私の中でその存在を訴えている感じがした。
それって何？
