エメラルドグリーンのロングドレスに、大ぶりな金貨を連ねたゴールドネックレスは、ダークブラウンの肌によく映える。まさしくヒターナの女王といった風格! 不世出のカンタオーラ、レメディオス・アマジャは、冒頭のシギリージャ・イ・ロマンセでフアン・デ・フアンらと絡んだ後、 3曲目のタンゴでガラリと衣裳を変えて再登場した。

 本公演「踊りの声~La Voz del Baile」はフアン・デ・フアンが主役だが、バックのメンバー達も、それぞれがソロ公演ができる実力者ぞろい。従ってフアンのバイレを軸にしながら、各メンバーのソロの見せ場も用意された全9曲、という豪華なプログラムだ。
 レメディオスの十八番ともいえるソロのタンゴは、マカリーネスのカホン&パーカッション(ボンゴのような楽器も使っていた)がバックでモダンスタイルな軽いリズムを刻み、ディエゴ・デル・モラオが伴奏だった。
 太く伸びのよい、それでいて深いケヒオ(嘆き)の響く声は、生で聞いても素晴らしかった。同じくエストレマドゥーラ系のヒターナ、ラ・カイータもそうだが、こうした声で軽快なタンゴを唄うところに妙味がある。カマロンの往年の名曲「コモ・エル・アグア」のレトラ「Si tus ojillos fueran aceitunitas verdes・・・ (もし君の瞳がグリーンオリーブなら・・・)」も出て、カマロネーラの面目躍如。パルマを叩く角度やハレオの掛け方といった、ステージ上での細かい所作すべてが美しく、威厳があり、一挙手一投足から目が離せなかった。こんなアルティスタは滅多にいないだろう。
 主役のフアン・デ・フアンには、シギリージャ、ソレア、ブレリアを唄ったが、伴唱というより、カンテソロにフアンのバイレが絡むといった形に見えた。フアンのバイレにはタップダンス風の変化球も見えたが(アメリカのタップダンサーとの共演の影響?)、基本は剛速球のサパテアードでぐいぐい押しまくるスタイル。それが悠然と構えるレメディオスと鮮明な対比をなしていたのが、印象的だった。次回は敢えてサパテアードを封印したバイレも見てみたい。
 ディエゴ・デル・モラオは柔らかな、ニーニョ・ホセーレは鋭角的な音で楽隊の中核を担った。二人の音はとにかく大きく、力強いうえ、抜群の安定感があるのだ。こうした超一流メンバーによるラストのブレリアが見ものだった。ぶ厚いコンパスが、客席まで地鳴りのように迫ってくる。7人のリズムの強烈な一体感。本物の凄みがそこに見えた。(11月4日/東京公演)

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