ヘレスの自宅に小さな踊り練習用スタジオがある。
私自身はここでは練習しないのだけど
他の人が自主練習などに使ってくれている。


なぜ私は自宅のスタジオで踊りの練習をしないのか?
家のリフォームの計画を立てていたころはまだ練習していた。
(だから練習スタジオが欲しかった)
出来る限り自分たちで作業したこともあり、
工事は3年もかかってしまった。
そして、この3年の間に私はフラメンコを練習しなくなっていた。
舞台で踊るフラメンコから
舞台以外で表現するフラメンコ『スローライフフラメンコ』に変わっていったためだ。
私の内側にあるフラメンコ的な何かを表現する場が
私生活そのものになっていったのだ。
だから8年くらい前から、自分が発信していくフラメンコには『スロー』という言葉をくっつけつことにした。
スローといっても、ゆっくり踊るという意味ではなく、
普通の人たちが日常生活の中で楽しんでいる、
生活に根付いたヘレスのフラメンコから私が学びとった、
競争じゃなくって協調のフラメンコ。
そして別に踊らなくても、歌わなくても、
スローライフから出て来た自己表現はみんなスローフラメンコと呼ぶ(と私が決めた、笑)。
私自身が見たい、感じたい、伝えたい、育てたいフラメンコは、
実生活という人生舞台で日々表現していく「あなたマーク」のフラメンコだ。
だってフラメンコは、練習スタジオって四角い空間からの生まれるんじゃくって、
その人の人生っていう空間制限のないとこからの生産物であって欲しいの。
さて、私自身はサパテアードやブラッソの訓練はしないけれど、
このスタジオのお陰で、自宅にいながらいつもフラメンコが側にある生活を送っている。
例えば、サンテイアゴ地区出身の若い踊り手フェルナンド ヒメネスが
いつもスタジオを使ってくれているから、
彼のパルマを聞きながら料理するといった感じに。
日本のフラメンコ界でも、
特にヘレスファン、プーロフラメンコファンに評価されているフェルナンド。
廊下の突き当たりのスタジオに通じる扉をノックして、
私「ちょっとすみません!写真撮影と日本の練習生についての意見やアドバイスをお願いしたいんだけど」
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フェルナンド「僕たちは、日本人練習生をスポンジって呼んでいるんだ。すごい吸収力だからさ。その賢さにかけては特に抜きん出てるよね。
テクニック的にかなりレベルの高い人が日本には大勢いるし、その中にはムイフラメンコな人だっているね」
「いくつかアドバイスするよ。
1、クラスの場に入ってきたら恥を忘れること。日本を忘れること。
2、君と僕が同じ目線の関係であること。先生と生徒という枠を超えて、みんな同じ人間なんだから。
3、体の動きを学びとること(訳者注。この場合、振りのことを言っているのはなく、フラメンコ的な動きを指す)。
4、フラメンコとしての立ち方、在り方をつかむこと。踊る以前に舞台上に立ったときの立ち方で、そのステージの50%の勝敗が決まってしまうと僕は思ってる。
後の50%は、伝える力とサパテアード。
5、どう衣装を身に着けるかも問題(訳者注。衣装のおしゃれ度の話ではなく、フラメンコ的な着付けを指す。闘牛士が戦う前に衣装をにつける儀式をするが、その感覚に近いものと想像する)」
クラスを受講していたイスラエル在住の名坂明子さんに感想を聞く。
明子「現在エルサレムに住んでおり、へレスに来るたびにフェルナンドに教えてもらっています.
いわゆるアカデミアのような形ではなく、振付がどうであるというよりも、それはヒターノであるかどうか、ということを何よりも重視したクラスのように思います。
また、フェルナンドはクラスの中でたくさんのことを話しますが、これは私にとって、新しいパソを習うよりもずっと大切なことで、本当にたくさんの気づきをもらっています。
クラス自体はあらゆることがフェルナンド流、何というかそれは例えば「小さい頃公園で夢中になって遊んでいて、気が付いたらもう真っ暗だった」、という感じに近く、
いつもあっという間に時間が過ぎます。
また、クラスという枠を超えて学ぶことが本当に多く、フェルナンドや彼の家族との触れ合いを通して、
彼らの生き方、彼らが何を思い、何に笑い、何に悲しみ、何を大事にしているのかを肌で感じることができ、私にとっては本当に貴重な体験です。
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私「ふむふむ、このアドバイス、スローライフフラメンコにとっても参考になるぞ!」
1、私のレッスン場(!?)である自宅のキッチンに入ったら、料理の常識は捨てよ。
2、私と野菜の生命が向き合う、食べ物への感謝の心!
3、ガスコンロ、流し、冷蔵庫との動線内を最小の動きですませよう。
4、まな板の前に立ったときの体の姿勢、そして心の姿勢。
5、毎日つけるエプロンの紐をきりっと締めて、気も引き締めて。
(念のため言っときますが、決してプーロフラメンコをからかってるわけじゃないですよ、私100%真剣に言ってるの)
ほら!
スタジオと同じ(?)稽古ができるでしょ?
そう、
だから私はスタジオにいないのだ。
Fernando Jiménez (フェルナンド ヒメネス)
1988年ヘレスのサンテイアゴ地区に、Tia la Piriñacaの孫として生まれる。
Jose Vargas "El Mono"の甥っ子でもある。
毎日がフラメンコと共にあるその家族の影響下で、幼少時代から踊り始める。13歳でプロとしてデビュー。
現在、サンテイアゴにあるタブラオ『タベルナフラメンカ』で舞台をこなしながら、
スペイン国内、ヨーロッパはもちろん、日本にも数回来日して活躍中。
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年末年始、約4年振りに帰国します。
そしてフラメンコ楽学広場『シティオ塾』にてスローフラメンコのクラスをいくつか開催させてもらいます。
1、ヘレスのゆったりブレリア <ギター付> 1月7日、12日
2、疲れた心と体に効く スロー・フラメンコ 初心者~中級者対象クラス<ギター付> 1月10日、12日
3、疲れた心と体に効く スロー・フラメンコ フラメンコ未経験者クラス 1月11日
詳しくはこちらを見てください。

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このスタジオ1時間4ユーロで貸してます(ヘレス デ ラ フロンテーラ)。
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