JAVIERFERGO_C-LINARES_03.jpg今年のフェスティバルは、ビジャマルタ劇場の経済的危機による存続問題の影響か、いろいろなところで経費削減がされています。以前はどこに行っても手に入ったプログラムはなくなり、劇場入館証の写真貼付も割愛。エコ的観点では節約できる部分にメスが入ったことは悪いことではないのですが、一つ残念なのは、ここへレスならではの、シェリー酒の振る舞いがなくなったこと。以前は、開幕初日には、劇場のホワイエでベネンシアドールが観客に一杯ずつ注いでくれていました。また、ゴンザレスビアスのボデガでのコンサートでも、入り口で同じようにシェリー酒の振る舞いがあり、先に席を確保するか、酒を確保するかの選択に迫られたものです。と、書いて劇場に出かけたら、思いが通じたのか、今夜はビジャマルタ劇場でシェリー酒の振る舞いをやっていました。

JAVIERFERGO_C-LINARES_04.jpgフェスティバル三日目に行われたボデガでのコンサートは、とても楽しみにしていたカルメン・リナーレス(Carmen Linares)のコンサート「Verso a verso」。Versoとは詩の1行のことで、このコンサートは詩人ミゲル・エルナンデス(Miguel Hernandez)の詩を歌うもの。カルメンが2005年に来日した際のコンサートの仕事を受け持った関係で、ツアー中も一緒に過ごし、彼女のカンテはもちろん、そのお人柄の素晴らしさ、温かさにますますファンになりました。なんと、当時のカルメンへのインタビューがまだウェブに残っていますので、ご参考までに。こちらです。

また、今回のグループには、前日のマイテ・マルティンのコンサートでも弾いていたギタリスト、サルバドール・グティエレス(Salvador Gutierrez)もいるということで絶対外せない!と意気込んでいました。(下記のビデオの2:14あたりに、サルバドールらしいタッチが聴けます。)ところが、想定外の事態によりヘレス郊外からコンサート開始までに戻ってこれず、痛恨の見逃し。だからと言って、このコンサートを紹介できないのはさらに残念なので、せめてビデオと写真をご覧ください。

21時からのビジャマルタ劇場は、フエンサンタ"ラ・モネタ"(Fuensanta la Moneta)公演「DIVINO AMOR HUMANO」。この作品は、サンタ・テレサ・デ・へスス(Santa Teresa de Jesus)の人生と彼女の残した詩にインスピレーションを受けて作られたもの。
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サンタ・テレサ・デ・へススは、日本では大テレジア、またはアビラの聖女テレサと呼ばれ、1515年にスペインのアビラに生まれた修道女です。堕落した修道院に改革を起こすために闘うと同時に、神に対する絶対的な愛を貫き、自分に与えられた耐えがたい苦しみすら、神が与えてくれた意味のあるものであると捉えていたようです。

そんな聖テレサの生き方を尊敬し、バイレを通して語る責任を感じたというモネタ。記者会見場にはベビーカーと共に登場。中には昨年の9月に産まれたアルベルト君。妊娠7ヶ月まで踊っていて、出産後2ヶ月でバイレに復帰しました。妊娠中はあまり食べられず、痩せてしまったというモネタは、以前より、女らしく美しくなっていました。母になって時間的にも体力的にも大変になったはずですが、作品創りを通じて、聖テレサと繋がることによって、何か得るものがあったのかも知れません。

夜中0時のサラ・パウルでは、二日間にわたって地元のカンタオーラ、メルチョーラ・オルテガ(Melchora Ortega)のコンサート。「Melchora Ortega presenta a La Memole y su combo flamenco en por los pelos」という長いタイトル。「メルチョーラ・オルテガが送る、メモレとコンボ・フラメンコ危機一髪!」というとこでしょうか。メモレとはメルチョーラが14,5歳の頃に友達から呼ばれたあだ名。アニメのキャラクターだというので、後で詳しく聞いたら「"小さなモメレ"という日本のアニメだよ。本当は大人なんだけど、子供の姿をしているんだ」と。え?メルモちゃんだと逆だし?なんだろう?と調べてみたら1984年から85年にかけて放送されていた「とんがり帽子のメモル」という日本のアニメで、メモルは、幼児の姿だが実年齢は24歳という役どころ。間違いなさそうです。メルチョーラの母は、娘がこの名前で呼ばれるのが嫌で、友達が「メモレいる?」と家に来ると「そんな名前の子はここにはいないよ」と答えていたそうです。

JAVIERFERGO_MEMOLE_01.jpgメモレ"であり、本名のイマクラーダであり、そしてカンタオーラとしてのメルチョーラが、女性の情、喜び、愛、哀しみを歌っていきます。コンボのメンバーは、ギター:サンティアゴ・ララ(Santiago Lara)、ピアノ:アレハンドロ・ロハス・マルコス(Alejandro Rojas Marcos)、コントラバス:アントニオ・コラレス(Antonio Corrales)、サックス/ハーモニカ/フルート/クラリネットに以前コンサートをご紹介したディエゴ・ビジェガス(Diego Villegas)、パーカッション:ペドロ・ナバロ(Pedro Navarro)、コーラスとパルマ:ロシオ・ソト(Rocio Soto)とフェルナンド・ガラン(Fernando Galan)という、へレスとその近郊出身者メインの構成。そして、ゲストにはバイラオーラのイサベル・バジョン(Isabel Bayon)とメルチョーラの夫でカンタオールのダビ・ラゴス(David Lagos)。キャバレー風の舞台の雰囲気で、超ハイヒールに黒のタイトなドレスのメルチョーラが登場してスタート。「皆さん、哀れな私を笑ってくれていいんですよ」とメランコリックに歌い出します。

JAVIERFERGO_MEMOLE_04.jpg次の曲ではイサベル・バジョンが登場。Ladies and Gentlemanを各国語で。ちなみに日本語は「みなさま(みなさん?)」でした。コミカルながらもかっこいいさすがのフラメンコを見せてくれました。彼女の踊りは是非、ビデオでご覧ください!ちなみに下の映像は初日のもの。私が観に行ったのは二日目でナマモノだけに微妙な違いがあります。そこがまたフラメンコの面白いところです。

JAVIERFERGO_MEMOLE_03.jpgそこに、メモレ張りの赤いハットでメルチョーラが現れ、歌でヘレサーナ(Jeresana へレスの女性)である自分、そして自分の生まれたへレスのお国自慢。しまいには「世界で一番有名なところ」とまで。
ショーはテンポよく展開し、コンボの中でもディエゴ・ビジェガスとサンティアゴ・ララの演奏が各場面をリード。イサベルも踊りだけでなく、歌も披露します。騙した男への恨み節あり、一途に愛し続ける歌あり、涙あり笑いありの歌の数々。

JAVIERFERGO_MEMOLE_10.jpg「ローラ・フローレスが誰だか知ってるわよね?」のフレーズからは、地元の大スター、ローラ・フローレス(Lola Flores 1923-1995)の歌が続きます。「LIMOSNA DE AMORES」は、夫のダビとのデュエット。がっつり目と目で見つめ合い、相手の歌に思わず「オレ!」とつぶやく熱愛ぶりで、チークダンスもありました。ダビは歌う時も、演出の場面でもとても丁寧な姿で妻のコンサートをサポート。会見で、妻が3人の子供の母でそれだけでも大変なのに働き者で、カンタオーラも続けて、日々闘っていることに対して強い敬意と愛情を示していました。それがこの舞台上で溢れ出ているような場面でした。

JAVIERFERGO_MEMOLE_05.jpg続いてイサベルがマイクを持ち「Ay, Pena Penita Pena」を歌い出しますが、そこからブレリアのバイレに。さらには、メルチョーラがハイヒールを脱いで裸足で戻り、激しく「Fuego,fuego」を歌います。ローラ・フローレスの歌は、きっと彼女の少女時代のレパートリーだったのでしょう。ノリノリで盛り上がり、「Estoy como nunca!(もう最高の気分よ!)」舞台も客席もこの言葉を叫んで楽しいコンサートは終了!帰宅は夜中の2時前。フェスティバル期間中の定時です。

写真/FOTO : Copyright to JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ
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3つの壁の乗り越え方

【フラメンコに行き詰まりを感じている方へ】

フラメンコ(カンテ/踊り/ギター/他)が難しい...
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