<バイレ・ソロ総評>

菊地裕子
●今年のバイレソロ部門は近年では少なめの55人という出場者数だった。その中でも今年は、何度も挑戦している演者の鍛錬や精進、洗練の結果が目を引いた。新人公演をひとつの指標として成長していく若きアーティストを見るのは、毎年、本当に心が躍る。
 逆に、気になったのは、ブラソが概ねないがしろにされていること、パルマやカホンに頼って足音がほとんど聞こえない人が多いことだった。そういえば、マントンやバタ・デ・コーラも今年はなかったような。まあ、マントンやバタ・デ・コーラがなくとも、フラメンコは成立する。しかし、ブラソは身体にくっついた雄弁な語り手だし、足音に至っては、これがちゃんとできないとフラメンコとは言えないぐらいのものだ。パルマやカホンがいけないのではない。ほとんどの足音を打楽器に打ち消してもらってよしとする姿勢はどうなのよと言いたい。何でもかんでもシンプルが良いとは言わないが、基本はシンプルなところにある。ここがしっかりしていないと、あれこれくっつけても砂上の楼閣に過ぎない。飾らないところで、まずはしっかりと鍛錬、精進することが肝要だろう。
 また、舞踊的に優れていても、カンテをちゃんと聞いて踊っている方が少ないのにはがっかりした。これは1年や2年でどうこうなる問題ではない。バイレの方は、カンテとパルマを日常的に身体にしみ込ませる努力をすぐにでも始めないと、自分からコンパスやセンティードがにじみ出るなんてことは不可能だ。素晴らしいフラメンコに「オレ!」と言える感覚がなくて、オレ!な踊りが踊れるわけはない。(何だか、今年はやけに厳しいことばかり書いているけど、遺言たるたわごとだと思って笑って読み飛ばしていただきたい。書ける時に書いておかないと、そのうち何でも「いいよ、いいよ」って言っちゃうかもしれないしね、うん)
 昨年同様、評価はA以上のみの記載とした。奨励賞の選考に当たっては、7名記載の決まりがあったため、特A5名とA2名を推薦した。正直、受賞する・しないは、決して実力だけに左右されるわけではないと思う。私がA以上と評価した方々の中には、構成の工夫次第でぐっと変わりそうな方も少なくない。一方で、一皮むけるために何年とかかる人もいる。さらには、受賞してから伸び悩む人もいる。新人公演は、出場者の成長の一過程を見せてもらうだけの場なのだ。そう心得、今後とも興味と期待を持って見守って行きたいと思う。全ての出場者の血と汗と涙と精神の葛藤に、オレ!
※評価=[特A]>[A]>[A'] 
※菊地が奨励賞に推薦した7名=[推薦]

堀越千秋
●本年は特に、型にはまった、習ったばかりの踊りばかりが多くて、全てを見るのに相当の努力を要した。未熟なだけなら練習を積むことで良くなるが、根性がくたばっていてお稽古に通っているから満足、というのなら、我々年金生活者には酷な時間である。年金と言っても月に1万8千円である。こんなのを福祉と言うのか。福島の避難民を棄てておいてオリンピック招致のお祭りに愚民の気をそらそうとする、今夜はあと数時間で日本のファシズムが定まる前夜である。先日のマヌエル・アグヘタのカンテみたいに、そんな欺瞞を吹き飛ばすかのごとき踊りを踊って欲しいのに。
 そう。皆さん、アグヘタ聞いて頂きましたよね?失礼ながら、貴女のうしろで唄っているのだけがカンテじゃありませんよ。カンテを聞け!カンテを感じろ!というのは、こういうカンテのことです。踊りを前提としてカンテを聞くから、貴女たちの踊りはいつまで経ってもスポーツなのです。
 自分を美しく見せたい、体を動かすのが好き、だから踊るなら、フラメンコはそれに適していません。全く別の文化なのです。どんな文化か?カンテの中だけにそれを見い出すことが出来ます。体が踊らないように縛って、カンテだけをバッハのマタイ受難曲のように聞いて下さい。そんな聞き方に耐えられるカンテが果たしていくつあるか?マヌエル・アグヘタは、ほとんど現在唯一といってよい、その人であります。
 ランクはA、a゜、a、a'、B゜、B、B'、b゜としました。

西脇美絵子
●今年はいつもより20人も出場者が少なかった。そのせいか突出した人は少なく、奨励賞のボーダー上に大勢がひしめき合う例年に比べると、全体のレベルは幾分低かったように思う。私が絶対奨励賞!と思った人は2人、奨励賞と思った人は2人、奨励賞のボーダー上にいると思った人は4人。この8人の中から7人を奨励賞に推した。因みに去年はここまでに17人いた。そして、あと少しで奨励賞のボーダー上と感じた人は17名と続く。上記の人たちは、各コメントの最後に、◎スペシャル、◎、○、小○の記号を付した。
 全体を通して気になったのは、踊り始めのテンションが低い人が多いこと。最初は過剰な緊張で力が入りすぎたり、硬くなってしまう人が本当に多い。多くの人が、後半になって調子をあげてくるのだ。ある意味それは自然なことでもあると思うが、観客の心をつかむには、踊り始めの一瞬、最初の30秒がとても大事。一発目からガツンと入っていけるポテンシャルを目指してほしい。
 また、今年も連続出場者が大勢いたが、受賞の有無に関わらず、成長の跡を感じた人が多かったのは嬉しいことだ。一方、立ち止まっているように感じた人も見受けられたが、それを自覚している人は、やみくもに技術を磨こうとするのではなく、練習方法、フラメンコへのアプローチの仕方そのものを捉えなおしてみてほしい。私は技術を軽んじる者ではないが、それは踊るための前提のようなもの。フラメンコ舞踊は、舞踊テクニックだけでは踊れない。根本を見つめ直すことが重要と思います。
 最後に、今年はバックの音楽陣にスペイン人アルティスタを起用する人が非常に多かった。バイレ練習生にとって、スペイン人との共演は夢の一つだと思う。そこで学ぶこともたくさんあるだろう。ただ、彼らの、あのド迫力のパワーを受け止められるものを持っていないと、踊りがとても希薄に見えてしまうことは、覚えておいた方がいいと思う。スペイン人と共演してよい結果を出すには、彼らのレベルに呼応できる(少なくともついていける)それ相応のフラメンコ力と、コミュニケーション能力がなければ実現できないことは言うまでもありません。
 新人公演の3日間は、私自身も襟を正して過ごす3日間です。皆さんの情熱に応えうる選考ができたか、合評が書けたか...。選考についても、それ以外のことも、私自身の考え方を出来るだけ具体的に書いたつもりです。ご意見のある方はどうぞ遠慮なく、コメント欄に書いてください。私への質問やご意見については、必ずお返事します。

11.柴田千穂(ガロティン)

11.柴田千穂(ガロティン)

●バランスが取れ、安心感のある踊り。最近の言葉で言うと「普通に上手い」(褒め言葉ですよね?)。でも、ガロティンであってもフラメンコに違いはなく、心に響かないと「上手ねぇ」で終わってしまう。もっとコンパスを生かしてメリハリをつけ、大きく踊ることができたら、魅力が増したはず。あるいは全く違うテイストのパートを入れるとか。ともあれ、観客の想定内から外れる工夫が必要なり。(菊地裕子)
●足が良い。上体が動かないのが良い。上手いのだがつまらない。熱気がない。踊るモチーフが、カンテの中に無いからだろう。[B°](堀越千秋)
●身体はよく動いていて、上手く踊れる人なのだと思う。だが、テンポの速さに細かい振りがついていかない。振りの最後の部分が小さくまとまってしまう。振りを詰め込むことに終始しているので、一つ一つの振りが分断されてしまって、次の動きへとスムーズにつながっていかない。小手先で踊っている印象だ。細かい振りこそ、早いテンポの時こそ大きくひねる、大きく動くくらいの覚悟がほしい。でなければ、テンポを落として丁寧に踊ろう。(西脇美絵子)

12.大野明子(ティエント)

12.大野明子(ティエント)

●ペソはあるのだが、振付通りにやることだけが表面に出てしまった。ひとつの動きをやり切れていないうちに次の動きに移るため、振付の段取りがただつらつらと流れていく感じ。とりあえず踊り込むべし。そして背筋を鍛える! 表現云々はその後です。(菊地)
●足が良い。ゆっくりしたうごきにもっと、意味を見出さなくては。情を入れすぎる。情は、客に感じさせるものであって、自分が首を傾けてまでそこに溺れ込んではいけない。そのためには、カンテそのものがもっと心身に入っていなくてはならない。タンゴになってからは、もっと前のりのリズムにしてほしい。[B°](堀越)
●キレもタメも重さも、基本的には身につけている人だと思う。だが、ツメツメの振りをこなすことに精いっぱいで、表現に至っていない。振りを踊りきることに夢中だから、バックを受け止める余裕もない。そんなに早いテンポが大事なのかな? 観客は振りのデパートを見たいんじゃない。あなた自身を感じたいのです。(西脇)

13.藤村純子(シギリージャ)

13.藤村純子(シギリージャ)

●珍しく、振付のほとんどをサパテアードが占めた踊り。ある意味、面白いし、非常に丁寧に正確に打とうとしていることはわかるが、いかんせん、音が小さすぎて説得力が今ひとつ。耳をそばだてていれば、所々に良い感じのセンスが伺われるし、決して一本調子ではないのだけど、ずっとこれでは少々疲れます。意図を明確に伝える工夫が必要だったのでは。(菊地)
●残念ながら、バックも巻き込んで退屈だった。長い!シギリージャ、唄えますか?唄えないものは踊れない。[B'](堀越)
●動きがすべて小さいので変化に乏しく平坦な印象。ところであなたは、フラメンコのどんなところが好きですか? 自分はなぜフラメンコを踊るのか?もう一度とらえなおしてみてください。あなたが何をしたいのかが、見えてこないのです。そして、フラメンコを踊るに必要な流儀を身につけていきましょう。脇がいつも落ちていたのが、特に気になりました。(西脇)

14.川田久美子(アレグリアス)

14.川田久美子(アレグリアス)

●伸びやかな踊りで好感が持てるが、シレンシオでやや間延び。また、動きがバックと微妙にマッチしていない。1人だけで踊っている感じ。生のギター・カンテと共に演じられるバイレソロは、その一体感も重要なポイント。共に舞台を創る感覚をぜひ磨いてください。(菊地)
●大柄で美しい。舞台映えする。足はまあまあ。リズムのあとを追いかけている。貴女が指揮者なのだから、先んじなさい。いっそ1秒位先を行って、楽隊を待っているくらいのつもりで踊らないと、もったりぬるぬるしたアレグリアスになります。[B](堀越)
●華がある。体内のエネルギー含有量高そう! だが、そうした素質が生かされていない。勢いはあるのだがすべてがぞんざい。まずは、基礎力を。軸と重心をしっかり身につけること。歩く部分も踊りの一部であることを忘れないで。(西脇)

15.津幡友紀(ロマンセ)

15.津幡友紀(ロマンセ)

●強い個性。ペソがあり、リズムの面白さでも魅せた。良い踊り手。でも、作品としては、もう一波乱欲しかった。詰め込み過ぎは良くないけど、山場をもっと高いところに設定して、もっと印象深い作品にして欲しいな。[A](菊地)
●上手い。と思ったが、リズムが後乗りで遅れがちである。[B](堀越)
●まだ未完成だが、独特の味が出ている。全体に上手くまとまっているが、その先の盛り上がりに欠ける。身体も技術も基本は押えているが、ツメが甘い。キレもタメももっとほしい。リズムを自発的に打ち出そうとしているのはわかる。でもうかがっちゃうと、微妙に遅れます。すべてをもう一歩分踏み込んで、体得してほしい。[小○](西脇)

16.椎原佳奈子(ソレア)

16.椎原佳奈子(ソレア)

●集中力が高く、唄振りなどは踊りに血が通っている感じ。バイレ、カンテ、ギターの三位一体という言葉を思い出した。そうそう、これです、私が言いたいのは! カンテに感じている私と同じか、それよりもっと踊り手が感じているのが伝わる。あらまほしき姿なり。オレ!もう1回観たい![特A][推薦](菊地)
●ゆっくりと、カンテを客に感じさせながら踊った。良ろしい。ラストはもっと思い切り前ノリに、たたみかけて欲しかった。[a°](堀越)
●詰め込まない振りを、ゆったり重厚に踊っていた。歌に感応してソレアの世界を踊っているのが素晴らしい。力をギュッと込める瞬間がたまらなくかっこいい! ただ、特に間合いをとった振りの部分は、さらに密度が欲しい。踊り込むにつれて、どんどん引き込まれいったが、最後の大きなうねりには至らなかった。惜しい![○](西脇)

17.藤本ゆかり(ソレア)

17.藤本ゆかり(ソレア)

●よく踊れている。ブレリアになってからのノリも悪くない。しかし、ソレアの唄振りでの足の入れ方が気になる。唄の創り出す空気の質感におかまいなしに足が入ってくると、観客の集中力は一気に削がれます。その重い空気に頷くのか、膨らますのか。心を動かす唄振りのあり方を要研究。(菊地)
●さり気なく、普通に立つ姿が、力が抜けていてよろし。動きもゆっくりしていて、ソレアを感じさせた。[a'](堀越)
●踊り手の意思が感じられ、振りを追いかけていないのがいい。だが、形が美しくない。フラメンコ舞踊は美しい形を競うものではないけれど、フォルムだっておざなりでいいわけがない。フラメンコのなんたるかをつかんでいる人と思う。こういう人にこそ、形も追及してほしい。[小○](西脇)

18.田倉京(タラント)

18.田倉京(タラント)

●今年の出場を大変楽しみにしていた。最初は何故にファン・ビジャール Jr.の唄でタラントなのだろうと思い、実際に踊りを見てからも、確かにメチャクチャ上手いけれど、満を持してのはずの割にはインパクトに欠けるかもと心配になった。が!タンゴになってからの目の覚めるような展開!ファンの唄も素晴らしく、その唄に寄り添って踊る彼女は極彩色の大輪の花!そうだよ、フラメンコはこれなんだよ!オレ![特A][推薦](菊地)
●力はあるのに、自信なげな固さがあった。少し余分な振りがある。これがこなれないかんじをかもし出した。動きをもっと省いたらよかった。そのために首が少し前に出た。しかし後半は独創的な自由を感じさせて、俄然よくなった。全篇これくらいはじけてほしかった。[a'](堀越)
●やや気負いはあったものの踊り出しから高いポテンシャル。登場した途端、ステージに芳しい華が咲いた。昨年までも高い技術を持っていた人だが、大きく一皮むけた。オレ! フォルムが美しい、しかもそればかりに頼っておらず、キレも力強さもノリもある。このテイストが、田倉さんの個性とは思うが、もう一段深みが増すとさらに大きな感動を呼ぶに違いない。[○](西脇)

29.細野貴子(アレグリアス)

29.細野貴子(アレグリアス)

●まだ振付をこなすので精一杯なのか、動きが中途半端に流れてしまうところが多々。踊り込むことと同時に、上半身を鍛えることが重要。動きにキレと柔らかさが出てくると、表現の幅が広がります。頑張れ!(菊地)
●元気がある。しかし振りを合わせているのみ。リズムが止まる。どんどん先んじて踊れ![B](堀越)
●生き生きとしたアレグリアス。コケティッシュな魅力もある。だが、技術的にはこれから。振りがつながらないところがある。もっともっと踊り込んで、弾けてほしい。自分の内側からエネルギーを創出する、その回路を探してください。(西脇)

30.小林成江(ソレア)

30.小林成江(ソレア)

●モデルノなデジタル風の振付(菊地用語です)で、キレがあり、アクセントがコンパスに入っていて気持ちいい。よく踊り込んでいるし、いい踊り手だと思える。惜しいのは盛り上がりに欠けたこと。構成・振付をもう少し練って、観客にカタルシスを与えるような工夫をし、ぜひ再挑戦を![A'](菊地)
●大きく美しいが、人形みたいに無表情である。振りはこなしているが、心の中にソレアが無い。何を感じているのか、貴女自身の袋を破いて客に示さないと。ソレア唄えますか?[B](堀越)
●踊り始めの立ち姿、緩い。踊っている時も突っ立って見える。まずは、美しい立ち姿を研究する必要あり。軸をしっかり作って、膝を上手く使って動きをスムーズに。腰の決めも大事です。基本から確実に積み上げて行こう。カンテやギターをいっぱい聴いて、心で聴いて感じる(心が反応する、すると体も反応する)そういう心身を作ってください。(西脇)

31.宮本靖子(シギリージャ)

31.宮本靖子(シギリージャ)

●振付自体は悪くないのに、平板な印象。身体全部を使って表現して欲しい。また、足のパートが弱く、マイクから離れたところで打つと、何をしているかわかりづらかった。体幹を鍛えて、身体表現も足も、もっと大きく膨らませて!(菊地)
●出ダシから遅れていた。シギリージャはゆっくりした曲だが、気迫に充ちていなくてはならない。リズムに先んじよ![B'](堀越)
●意思的に踊ろうとしているのがいい。感情表現をしようとしているのは感じるのだが、それを伝える身体がまだできていない。心に身体がついていかないと、思いは空回りしてしまう。フラメンコを踊る、感情を伝えられる身体と技術をしっかり身につけよう。(西脇)

32.長村奈津代(グアヒーラ)

32.長村奈津代(グアヒーラ)

●アバニコを使ったグアヒーラ。エレガントな舞踊表現を要する振付で臨み、昨年より上達のあとが見えるが、まだ所々、荒さが散見される。特に、首が前についてしまう癖は、表現の幅を著しく狭めます。日頃の姿勢から気をつけて。あと、所作は一つひとつ丁寧に完了してね!(菊地)
●遅れる。首が前に出る。体の振りだけじゃなく、カンテをよおく覚えなさい。そして好きになりなさい。[B'](堀越)
●去年よりはよくなっているが、身体の動きがまだ硬い。重心をもう一つ下げ腰と膝を柔らかく使い、決めることが必要。立ち姿の美しさも研究の要あり。長い裾に振り回されない強さはよい。が、もっとリズムに乗って裾の先までコンパスに収めるくらいの心意気、細やかさが欲しい。(西脇)

33.大野環(バンベーラ)

33.大野環(バンベーラ)

●おお、決然としてフラメンカ! 唄を呼び込む踊りなり。このような踊り手が増えるのは非常に喜ばしい。しかし、大舞台の作品としてはもう一歩、観客の心臓に肉薄する何かが欲しい。それは身を捨ててしか成し得ないことかもしれないが、たった1箇所でもそういう場面があれば、観客は心で快哉を叫ぶはず。あと一歩![A](菊地)
●体がやわらかく、よく動く。それは良い。しかし、何故この曲なのか?モチーフを感じない。[B°](堀越)
●泥臭く鉄火肌なヒターナ姐御の風情あり。バックにけしかけるような挑みがありこれも良い。だが、フォルムがあまりに荒い、美しくない。フラメンコと言えども肉体表現であることに変わりはない。身体づくりをはしょったままフラメンコだけつかんでも、限界があると思う。何もバレエダンサーのようになんていってるんじゃない。その個性を生かしたまま、踊りの基本を体得してほしい。[小○](西脇)

34.長本真由(アレグリアス)

34.長本真由(アレグリアス)

●よく踊っているが、足のパートに技がいっぱい詰め込まれていて長尺な印象。足をたくさんやるのが悪いのではなく、全部力一杯にやるから、かえって平板に見えるのです。アレグリアスの楽しさのひとつは、余裕を持った遊び心。リズムの楽しさを伝えるためにも、もっとメリハリを!(菊地)
●力一杯のアレグリアスであった。なのに、ありがちな両腕ピン伸ばしの万才がなく、よろしい。どことなく習った振りの感がまだぬけないが、間が良い。マルカールの時、もっと力を抜けばより美しいのに。[a°](堀越)
●ものすごいエネルギー量。コラヘのかたまりみたいな弾丸パワーだ。すべての動きが怒っている。でもどこか動きがもっさりりているので、とんでもない腹の据わったおばさんパワー(これ、断然ほめ言葉です!)かと思いきや、あとから聞いたところによると、まだ高校生というではないか! この強烈な個性、アクの強さ、独特の間合い、タダ者ではありませんね。どうぞこの個性はこのままに(今の日本のフラメンコに一番足りない個性と思う)、踊れる身体を作ってください。切れ味鋭い、コラヘと若さに溢れた、長本さんの次の踊りが見たい。[小○](西脇)

35.永田健(ファルーカ)

35.永田健(ファルーカ)

●クラシカルなファルーカを、けれん味もなく、崇高に踊った。そのひたむきさには曲想に通じるものがあり、何とも説得力に満ちていた。今までの彼の踊りの中でも、最も彼らしさとフラメンコの美学が感じられた作品。永田君の真摯なアフィシオンに心から敬意を表します![A][推薦](菊地)
●グアポ!と言いたくなる姿はよろし。足もいい。上手い。ゆっくりの動きが良い。いいとこずくめなのだが、動きが兵隊さんみたいだ。動きが自分のものになっていないわけだ。少ない男性ゆえ、甘い点をつけたくなる。[a'](堀越)
●これぞファルーカというような、伝統的で王道をいく振付を、マチョに、精緻に踊った。立ち姿が美しい。力みがなく等身大の自分で臨みながら、そこには確固たるフラメンコの美学と技術があった。初出場から2年3回目の挑戦だったか、わずかな期間に見せた永田さんの変化、飛躍ぶりには尊敬の念さえ覚える。その真摯な取り組みに心からのオレ!を贈りたい。個人的な好みとしてはこのファルーカ。ものすごく幸せな心持で今年の新人公演を観終えることができた。[◎スペシャル](西脇)

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