今日本にフラメンコの教室はたくさんあります。
素晴らしい先生も大勢いらっしゃいます。
それでも、日々フラメンコを取材していると、色々と感じることがあります。
また、私自身が「こんなことを学びたい!」、「もっと具体的にフラメンコを理解したい!」という欲求が出てきたりします。
そうした思いをバックボーンにしてシティオ塾の講座を企画しています。9月からは新たに4つの講座が開講しますが、それぞれの講座を企画するに至った私なりの思いを述べさせていただきたいと思います。


①「伝統的スタイルのクアドロ実践講座」講師 高橋英子
eiko5.jpg今、タブラオではプロとアマの線引がくずれて、クラスの上級者、自称プロというような方が大勢出演されています。集客的には成功していることもあり、いろいろな問題を孕んでいるとは思われますが、この流れは止まりそうもありません。というか、実はこの層が、今一番日本のフラメンコを元気に支えている人たちでもあります。
 
それでもそのステージを拝見すると、???と感じてしまうことが。残念がら少なからずあるのです。
本番を重ねていくことがフラメンコの場合は特に上達につながることはわかっています。でも、単に一人づつソロを踊っているだけで、バックの踊り手さんたちからパルマもハレオもかからない、あるいはそれがチャクチャなライブは、やはり見ていて楽しくありません。
はっきり言って、まだ実力不足、でも意欲と情熱はいっぱい持っているフラメンカたちに、役立つことがなにかできないだろうか? 近年ずっとそんなことを考えていました。
そんな思いがこの講座を考えた根底にあります。
フラメンコを踊っている人ならば、タブラオで踊ってみたい、クアドロに参加してみたいと思うのは、当然の夢、目標だと思います。
でも、ライブは発表会ではありません。ましてやお金をとってお客様に見ていただくのです。教えられたことをそのままやっているだけでは、だめです。もっと自律的にフラメンコに参加できるようにならなければ。
クアドロにはクアドロのルールが有ります。それをまず知らなくては! そして、自分一人ではなく、他の人が踊るときの盛り上げ方や、カンテやギターとの濃密なコミュニケーションがとれなければ! 
そうしたこと学んでいただきたいとこの講座を企画しました。
講師の高橋英子さんは、御存知の通り、長い間スペインに暮らし、今も両国を行き来しながら活動されています。本場仕込みのノウハウと経験、そして強いアフィシオンを持った方です。
そんな英子さんが、昨今の日本のフラメンコ状況に対して、同じような思いを抱かれていることを知り、この講座の講師をお願いしました。
タブラオで踊ってみたいと夢を描いている方、すでにタブラオに出ているけれど自信がないと感じていらっしゃる方(それが自覚できることは素晴らしいことです!)、改めてクアドロの何たるかを学んでみませんか? 
3ヶ月という短い期間ですから、全てを完璧にマスターすることは無理です。でも、クアドロで踊るときに求められる事柄の基本、身につけ無くてはならない方向性は、学んでいただけると思います。
そうそう、このクラスは日曜クラスと水曜クラスの2クラス開講予定なので、欠席の場合は振替受講ができます。
 
 ※講座の詳細情報はこちら
 ※講師の高橋英子さんが本講座ついて記事を書かれています。その1
 ※講師の高橋英子さんが本講座ついて記事を書かれています。その2
②「レトラと元唄(CD)から学ぶカンテ」講師 濱田吾愛
80ピクセル.jpg私は独学でカンテの練習をしているのですが、私の先生はCDです。それは、教室に通う時間がないという個人的事情もありますが、インタビューやプライベートな場で歌い手の方たちがどのように練習を重ねてきたのか聞いてきた折、皆さん、とにかくCDを聴き込んだと、口を揃えたように言っていたからです。いつしか、私自身もそう確信するようになりました。
ところが、カンテ教室で学んでいる人の話を聞くと、「先生の歌を録音してそれを覚える、スペイン人アルティスタが歌う元唄はあまり聞いたことがない」という人が、結構いることに驚かされました。それはあまりに本末転倒ではないかと。
教室に通うことが悪いなんてことではありません。一人でCDを聞いても、よほどセンスのいい人でなければ耳だけで完コピするのは難しいし、だって一人で黙々とCDを聴き続ける事自体めんどうなことですから。(ちなみに私も一人では、耳コピなどできないので、独学と言っても元ギタリストでカンテ好きの夫の助けを借りています)
一人では掴みきれないリスムや音程を解釈してくれ、間違いを指摘してくれる先生はとても重要な存在です。先生についたほうが当然上達も早いでしょう。でも、やっぱり、最大の手本は本家本元スペインのアルティスタたちだと思うのです。
元唄をいかに完璧にコピーするか、すべてはそこから始まるのです。
この原点に立ち返ったカンテ習得の場を作りたい、その思いがこの講座になりました。
講師の濱田吾愛さんは、現在はカンタオーラとしても活動されていますが、もともと第一級のフラメンコ研究家です。幼いころから培われたフラメンコを聞く耳、カンテのバックグラウンドとなる文化的背景に対する深い知識は右に出る人がいないと言っていいでしょう(同じくフラメンコ研究家でお父上の濱田滋郎氏を覗いては)。
カンテにはなんといっても言葉の壁が大きく立ちはだかります。それを克服しようとする時、スペイン語をクリアすることがまず必要になりますが(ちなみに私はこの点は全くおろそかになってます)、レトラを理解するためには、ただスペイン語がわかっているだけダメなんです。スペイン人やヒターノの生活習慣や歴史的背景などがわかっていないと、本来の意味を読み取ることはできません。レトラから学ぶとは、単に訳詞が付いているということではありません。
「元唄から学ぶ」を打ち出すことは、教える先生にとってはやりにくいことだろうと思います。ご自分の歌を手本にしたいのが人情ですし、自分流に教えるというわけには行かなくなりますから。
吾愛さんは「元唄を手本にして修得する」ことに、強い共感を示して下さり、この講座が実現しました。
じっくりとカンテの基本を身につけたい方、レトラに隠された深いカンテの世界をを知りたい方、特におすすめの講座です。初めてカンテに挑戦したい方。歓迎です。
 
 ※この講座の詳細譲歩はこちら
 ※浜田吾愛さんがこの講座について書かれています。
秋から始まる講座はあと2つありますが、長くなりましたのでそれはまた次回に!

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