アントニオ・ガデス舞踊団来日!
WHO IS GADES?「カルメン」とは??
文 凌木智里
「アントニオ・ガデス舞踊団来日!」の報せに、
それだけで沸いたアフィシオナードの方々も多いことと思います。
でも一方で、
ん?「アントニオでがす」ん?「アントニオですが」んん?…と、
今ひとつピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。
今日は、そんな方のためのガデスの世界への手引きをお届けします。
まず、アントニオ・ガデスという人は、スペインのフラメンコ舞踊家・振付家です。
2004年に68歳で亡くなりました。
しかし、もう本人は鬼籍に入っていらっしゃるというのに、
ご覧の通り舞踊団は彼の名前を冠しています。
それはもちろん、彼が創立者であったということもありますが、
それ以上に、彼の作った作品やイズムを受け継ぎ伝え残していこう、
という人々の思いがあってのことなのです。
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アントニオ・ガデスは、1936年に生まれましたが、この年はスペイン内戦が始まった年。
志願兵となった父親は負傷、戦後の貧しい生活、
自身も幼い頃から働くという、戦禍と共に始まった人生でした。
それでもそんな中から無事に彼の才能は見出され、育てられました。
芸能の神様が放っておかなかったということかもしれません。
最初に舞踊団を結成したのは、1974年。
フランコの圧政により命を落とした詩人ロルカの「血の婚礼」を上演して、
世界的にその名を馳せました。
にもかかわらず、反フランコの活動家の死刑に抗議する形で舞踊団を解散、
自身も38歳の若さで舞踊活動から引退して、キューバへ移り住みました。
その後、フランコが没したスペインへ戻り、
スペイン国立舞踊団の初代監督を経て、再びアントニオ・ガデス舞踊団を結成します。
そして1983年。ガデスの「カルメン」は、ようやくここで産声を上げます。
カルロス・サウラ監督と手を組んで、映画版を制作するのと同時に、
舞台版も作られました。
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この二つのカルメンは、フラメンコ界、映画界、舞踊界、
全ての芸能の世界に熱狂的に迎えられたと言います。
舞台版は、舞踊団の高い技術をたっぷり堪能できる舞踊作品ですが、
華美ではない陰影のある照明効果、
鏡を効果的に使う舞台装置や、椅子をうまく活用するなど、
サウラの映画に共通する雰囲気も持っています。
かつ、映画と違ってまさに“編集”なし、
間を取らずに一息に開幕から閉幕までを走り抜ける演出は、
相当に考え抜かれたものではないかと思います。
幕開けの舞踊団のレッスンシーンは、
やはり映画よりも舞台で圧倒されたい迫力。
そこからいつの間にかカルメンの世界に溶けるように連れていかれる見事さ。
そして、映画版だと「もっとフラメンコ見たーい!」ってなっちゃう方も満足の、素晴らしいフラメンコシーンの数々。
さらにアンコールかと思いきや舞踊団のテクニックを堪能できる終盤の場面。
あそこが良かった、ここが好きだった、と、一緒に鑑賞した方とのアフタートークも盛り上がること間違いなしです。
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それからもうひとつ、ガデスが画期的だったことは、
「自分」ではなく「作品」を残し伝えるために、
亡くなる前に財団を設立したことです。
「個」を重んじるフラメンコにあって、これは稀有なことですね。
どちらがいいというような話ではなく、
こうしたクラシックバレエのような形を取ることによって、
フラメンコの世界でも「作品」を残し、踊り継いでいこうという流れができました。
これがあったおかげで、ガデスの作品はガデス亡き後も、そのイズムを継承した舞踊団があれば永遠に演じ伝えていくことができるのです。
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と、まあ、歴史を作った舞踊家なので、
ゴタクもいくらでも並んでしまう訳ですが、
かくいう私も、実は生カルメン未体験。
この絶好の機会に、舞台「カルメン」に触れて、
その感触を深く味わい、ガデスの美学や哲学みたいなものを舞台を通して感じられたら。
歴史や知識を得る以上に、それが何より素敵なことではないでしょうか。
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アントニオ・ガデス舞踊団「カルメン」
2022年10月22日(土)13:00/17:00 10月23日(日)13:00
東京文化会館大ホール
S席¥13000 A席¥11000 B席¥9000 C席¥7000 D席¥5000(税込)
主催 MIYAZAWA&Co. サンライズプロモーション東京
チケットのお求め:アクースティカ(チケット予約専用ページで、S席・A席のみ取扱い)他
公演HP http://miy-com.co.jp/events/antoniogades/
- 就学児童入場不可
- 車椅子席をご希望のお客様はS席チケットをご購入の上サンライズプロモーション東京へお問い合わせください。
- 本公演は自治体や政府のガイドラインに沿った上で、新型コロナウィルス感染予防・感染拡大防止対策を講じ、開催致します。
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凌木智里
CHISATO SHINOKI
フラメンコ舞踊家
4歳よりクラシックバレエを始め、コンクールでの入賞などを経て、高校1年の時にロンドンへバレエ留学。帰国後バレエから一転、日本大学芸術学部放送学科に入学し、ラジオ演出を専攻。卒業後、声を使う仕事の道へ。ラジオDJ・ナレーション・司会などの仕事をする。その傍らフラメンコを始め、再び踊り手としての自分に目覚め、フラメンコの魅力に深く傾倒し、その道を追及し続けている。現在は、声の仕事をする一方で、都内タブラオ・イベントなどでフラメンコライブにも出演、指導活動も行っている。横浜市のFM Salus「あおバリューradio」木曜日パーソナリティとして生放送にも出演しており、“踊る喋り屋”として独自の活動を展開、アクースティカ倶楽部では音声コンテンツ「ハマってみよう!フラメンコ沼」ナビゲーターを務めている。
![Profile Picture](https://flamenco-sitio.com/cp/wp-content/uploads/2022/03/しのき3-thumb-1352x1352-11685.png)