文:望月透子 写真:屋宮秀美
フラメンコ髄がきっとアクースティカ倶楽部は存在するのだな、という印象を改めて感じた、
2022年7月30日、その日はやってきた。
高円寺のタブラオ・エスペランサを会場に繰り広げられた「アクースティカ倶楽部夏の陣」、一部は「ライブ~“利きカンテ”を踊る」。
バイラオーラに河野麻耶さん、凌木智里さん、渡部純子さんを迎え、アクースティカ倶楽部の“利きカンテ”で取り上げた曲を三人が踊った。二部の「みんなでライブ~!VAMANOS!」では、1部のライブ出演者との共演で発表したい人のための場所が提供された。
一部、バイラオーラ三人によるソロンゴで幕が上がる。凌木さんがタラント、河野さんがアレグリアス、渡部さんがソレアを踊った。
カンテはミゲル・デ・バダホスさんと定直慎一郎さん、ギターにペペ・マジャさんと北村海人さん。バイラオーラ三人三様、それぞれにさすがの踊りで観客を魅了した。
リハ‐sるから見る機会を得たのだが、僅かなリハーサル時間で、どんどんステージが作られていくその様子は、まさにプロの仕事だった。
そして、やっぱり、このイベントの大きな魅力は2部のチャレンジステージだったのではないだろうか。
1部で、プロの踊りを見せ観客を納得させ、2部にフラメンコ好きたちがチャレンジする場所があることを、この日は紹介したかったのではなかったのだろうか。
実は、この日のために、この7月に週1回の河野麻耶さんのクルシージョがあり、“利きカンテ”でやったタンゴをとりあげ、受講生たちが「この日」にそれを踊るという無謀にしか思えないチャレンジが裏で進行していた(こんな企画は西脇さんしか思いつかないだろう)。
このクルシージョ、タンゴを習うというより、“利きカンテ”のタンゴを踊るという言葉に惹かれて参加した人も多かっただろう。実は私もその一人だった。(一度もスタジオでのレッスンが受けられなかったこともあり、結局私はステージに上がらなかったが)二人のチャレンジャー、佐々木紀子さん、熊谷久美子さんが、1ヶ月で仕上げたタンゴを堂々と踊った。仕上がり具合は1ヶ月のものだったかもしれないが、そのチャレンジする勇姿に感動した。習い、発表する、フラメンコ好きの醍醐味が満載された演目だったと思う。
続いて、カンテに定直さん、ギターに静岡を拠点に活動している上遠野忍さんが登場し、Arアレグリアスを披露した。渡部さんと凌木さんが即興で振りを付けて踊った。
演奏・演技が始まるとステージ上の緊張は期待に変わり、見る者を引き込んでいった。
2部の閉めには、河野さんとミゲルさんで「利きカンテ種明かし」コーナーもあった。
1部2部と、盛り沢山な内容! じっくり味わうためにも、私ももう一度アーカイブで見直そう。
この後には、名古屋での「秋の陣」がすでに予定されているという。
来年以降、地方での開催を順次行っていく予定のようだ。ますます楽しみなアクースティカ倶楽部の活動。またひとつ、フラメンコ界に新しい種を蒔いた気がする。
秋の陣概要
開催日時 9月9日(金)19時開演
9月10日(土)12時半開演
会場 カサ・フラメンカ(名古屋駅4分)
参加料 会場 4,000円(自由席) 9日は完売! 10日はまだお席あります!
配信 2000円~の応援料をお願いします。
スペシャルシート 8,000円(両日2回ご来場の方限定の指定席)※配信&アーカイブ有り、 応援料2,000円からお願いします。 完売!
出演 バイレ 中尾貴子 河野麻耶 鰐部恭江(9日) 河野麻耶 石川慶子 渡辺なおみ(10日)
カンテ ミゲル・デ・バダホス
ギター 尾藤大介 こうずゆうじ
主催 アクースティカ倶楽部
【お申込み方法】
件名に「名古屋秋の陣申込み」と明記の上
以下の必要事項を記載して、club@acustica.jp 宛にメールでお申込みください。
1.お名前
2.1)自由席10日 2)配信9日 3)配信10日
3.お支払い方法 1)PayPal 2)銀行振込
4.在住県
5.メールアドレス
お問合せ先 アクースティカ
club@acustica.jp 電話:03-6410-334
菊地裕子
ライター
フラメンコ雑誌等で長く取材・執筆を行う。好きが高じて、現在は新宿ゴールデン街の老舗「フラメンコ居酒屋ナナ」にて週3回カウンターを務める。若い頃、演劇を志していたことがあり、その縁で11年前、フラメンコ舞踊家の東仲一矩が兵庫県三田市の劇場で上演したフラメンコ舞踊作品『カルメン』(ドン・ホセ/東仲一矩、カルメン/屋良有子、エスカミーリョ/稲田進)の脚本と演出を手掛ける。