インターネット社会になり、誰もが情報を発信できるようになりましたが、必ずしも正しい情報ばかりとは限りません。特に自分が知らないことについては、その真偽を判断するのは難しいものです。公演評も同様で、演者の意図を汲み取ることなく、感想だけで終わってしまうものもあります。個人の感想を綴るブログであれば、読む方もそのつもりで読めば良いのですが、記事となると無責任なことは書けません。これからも、できるだけきちんと情報を整理した上で、観てきた公演をお伝えするように努めたいと思います。

ヘレスのフェスティバル公演からのピックアップの途中ですが、その前に夏のフェスティバルの情報が届きましたので、今回はそちらを先にお伝えします。

CartelFonF2018_Artistas.jpg今年で5回目となるスペイン北部、バスク地方のパンプローナで開催される「フラメンコ・オン・ファイヤー(「FLAMENCO ON FIRE」)」。今年は、8月21日から26日までの6日間、パンプローナが熱く燃えます。

第3回からフラメンコ・ウォーカーでも取材していますが、スペインの中でもフラメンコとは縁遠い北の地パンプローナに、このフェスティバルを年を追うごとにしっかりと根付かせて来たディレクターの実行力、そして、フェスティバル中は八面六臂の活躍をする心強いスタッフの結束力にも、毎回感動してきました。フラメンコギターの大御所のサビーカス、そして、クラシックの世界では、あのサラサーテの出身地であるパンプローナは、サンフェルミンの牛追い祭りでも有名。残念なことに現在スペインでは、2年前にサンフェルミンのお祭りの最中に起きた女性のレイプ事件の裁判が物議を醸し、女性への犯罪への対応が問われています。世界的にもセクハラ問題が取り上げられ、女性が立ち上がり始めた近年。今回のフラメンコ・オン・ファイヤーは、女性へのオマージュがテーマです。フェスティバルのポスターにも「FLAMENCA/O ON FIRE」と書いてあります。
FLAMENCAとはフラメンコの女性形。つまりフラメンコに関わる女性を表しています。ポスターのデザインは、昨年に引き続き、パンプローナ出身のクリエーターのミケル・ウルメネタ。新しいブランド「katsuki saguyaki」で新作を発表する一方で、ギタリストのビセンテ・アミーゴのツアーTシャツなどもデザインしています。

フェスティバルでは今年も、無料で聴ける「バルコニーからのフラメンコ」や路上でのジャムセッション(と言っても出演者はなかなか豪華で、飛び入りゲストもあります。)、そして、バスクならではのガストロノミーを楽しめる「サビーカスのピンチョスツアー」を企画。各バルがフェスティバルにちなんで、期間中だけのスペシャルなピンチョスを用意しています。そして、待望のプログラムの発表がマドリードの老舗タブラオ、コラル・デ・ラ・モレリア(Corral de la Moreria )で行われました。
今年は、毎日21時と23時半の2公演で、会場は大ホールであるバルアルテとホテル・トレス・レジェス内のホールというすっきりとしたプログラムになりました。そして、ゲスト陣はまたもやとても豪華なラインナップです。6日間、12公演で、今のフラメンコ界のトップアーティスト達が堪能できる内容です。(アーティスト名のスペイン語表記はポスター画像をご参照ください。)

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21時 マイテ・マルティン(歌) & ベレン・マジャ(踊) 「テンポ・ルバト(Tempo Rubato)」
23時半 ヘマ・モネオ(踊)「Desde el sur y para el norte」

8月22日
21時 エストレージャ・モレンテ(歌)
23時半 イスラエル・フェルナンデス(歌)「Universo Pastora」

8月23日
21時 ドランテス(ピアノ)、アダム・ベン・エルサ、ティム・リエス、ゲスト:パストーラ・ガルバン(踊)「Flamenco meets Jazz」
23時半 ローレ・モントージャ(歌)&フアン・カルモナ(ギター)「Recuerdos」

8月24日
21時 トマティート(ギター)&ナバラ交響楽団「アランフェス協奏曲」
23時半 ラ・トレメンディータ(歌)「Delirium Tremens」

8月25日
21時 エバ・ジェルバブエナ(踊) 「Carne y Hueso」
Guadiana con Los Mellis
23時半 グアディアーナ(歌)& ロス・メジス(パルマ/歌)「De plata las herraduras」

8月26日
21時 ディエゴ"エル・シガラ"(歌)& ディエゴ・デル・モラオ(ギター)、ホセミ・カルモナ(ギター)、パケテ(ギター)「Tres guitarras y una voz」
23時半 ベレン・ロペス(踊)「Flamenca」

Mayte Mart。n y BelO Maya.jpgオープニングは、コンサートと同名のCDをリリースしたばかりのマイテ・マルティン。音にこだわり、レコーディングをゼロからし直したほど大切にした作品です。(こちらの過去記事でご覧いただけます。)ゲストには、以前来日公演もあった名作(個人的に大好きな作品なので)「Flamenco de camara」などで共演していたベレン・マジャ。久しぶりに、二人がどんな掛け合いをしていくか楽しみなところです。

Eva Y1erbabuena.jpg女性に捧げるフェスティバルだけあって、今回は女性アーティストが多く登場します。エストレージャ・モレンテ、ラ・トレメンディータ、そして前回は娘のアルバ・モリーナが出演していたローレ・モントージャ。バイレでは、ヘマ・モネオ、ベレン・フェルナンデスという迫力系。そして、現代のフラメンコバイレ界のトップの一人、日本公演も多いエバ・ジェルバブエナ。

Tomatito.jpgトマティートのコンサートでは、第一部はフラメンコ、第二部では、ホアキン・ロドリゴの名曲「アランフェス協奏曲」に初挑戦します。過去に、亡きパコ・デ・ルシアが録音したことでも有名で、昨年のこのフェスティバルでコンサートをした、ギタリストのカニサレスも演奏しています。基本的に楽譜は読まないトマティートが、どんなアランフェスを聴かせてくれるのか、注目のコンサートです。

一流のフラメンコとバスク料理というダブルで美味しいフェスティバル。夏のバカンスの候補の一つになるのではないでしょうか?

公演のチケットは、公式ホームページから購入できます。今年は、バルアルテでの21時からのコンサートの6公演通し券も25%オフで販売されています。
チケットのお求めはこちらから。公式ホームページの入り口はこちらです。

写真/FOTO : Copyright to Flamenco On Fire
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