バイレ・ソロ総評

菊地裕子
●今年のバイレ・ソロ部門は59名が出場。私が今回、素晴らしいと感じた【特A】の人は8名だったが、奨励賞には1割の6名だけを推薦するようにとのことで、選考会ではその中から6名を推薦した。しかしながら、その差は大きくはなく、今回、私が文句なく奨励賞と思ったのは、 廣木恵理さんと土方憲人さんの2名で、あとはボーダーライン上にいた。 廣木さんに関しては、その突出したフラメンコ性に感動し、土方さんに関しては、既にフラメンコ舞踊手として突出していることに感銘を受けたが、他の方々は「突出」ということがなく、総合的な判断が働いての選出だった。となれば、これで新人公演を卒業する人も、これからチャレンジする人も、多くの舞踊手の中に埋没する可能性が多々ある。そのことを忘れずにいて欲しい。
 フラメンコのバイレ・ソロが目指すのは、唯一、あなただけの印のある踊りだ。それはカンテもギターも同じだけれど、群舞から出発することの多いバイレの人々は、ともすれば、振付通りにきれいに踊ることを目標にする傾向がある。それを評価する人が仮にいたとしても、フラメンコ的にはそこにはたいした価値はない。美しく踊ることや大きく踊ることにも、究極的には価値はない。むろん、舞台芸術としてのフラメンコには、それらは意味のあることだが、基本がフラメンコ的価値に基づいていなければ、それらがフラメンコの感興を生むことは絶対にないと私は思っている。今、スペインからも音楽的、舞踊的に「進んだ」フラメンコが入ってきているけれども、外国人である我々が、フラメンコの感興を芯から感じるまで勉強することなくして、ただ形ばかりの「フラメンコ」を踊ったとしても、誰をフラメンコとして感動させられるだろうか。
 あ、また言い過ぎた!ごめんごめん。年寄りの冷や水でしたね。えへへ。何がフラメンコとして価値があるのかについては、他にも各コメント欄に書いたので、こちらも合わせてお読みください。
 いつものことながら、何年もチャレンジしている出場者が成長している姿を見るのは、何より嬉しい。そして今年は、バタ・デ・コーラやマントン、パリージョなどを使った演目が増えたことも喜ばしかった。受賞云々に関係なく、こうした技術が受け継がれていくことも大事なことだと思う。また、群舞もそうだが、地方からエントリーした出場者たちに声を大にしてエールを送りたい。そして出場した全ての人に、お疲れ様!y ありがとう!
※評価=【特A】>【A】>【A'】
※菊地が奨励賞に推薦した人=【推薦】

中谷伸一
●筆者が拝見したのは8月23日(日)出場の18人だけだが、それでも例年のごとく、実力に大幅なバラつきがあった。新人公演といっても年齢・出場回数制限はなく、参加モチベーションもそれぞれ異なるからだ。敢えて共通点を挙げるなら、バイレ・フラメンコは、カンテ、ギターと共同でコンパスを作る、「視覚化された音楽」との側面で捉えている人が少ないことか。サパテアードが生むソニケーテの豊かな魅力を、もっと重視する人がいてもいい。

高橋英子
●今年も皆さんのそれぞれに心の籠る踊りを堪能しました。技術的にある一定のレベルに達していて滞りなく一曲を踊れる方が増えてきていますし、その中でそれぞれの個性が見えるのは嬉しいことです。今回思ったのですが、年々参加者の演技は凝った振付や音楽、舞台照明などで派手なものになってきていて、それはある意味でいい傾向だと思います。インパクトある踊り創りは観る人の感動をより大きくします。ただ、ちょっとたぶらかされてしまう、個人の踊りではあまりに過剰な細工はちょっと考えものかもしれない、演技者の演技自体がよく見えてこないという問題点を私は感じています。また、踊る側にそれだけの表現力も要求し、バランスがとれないおかしな結果に終わってしまうこともあるので、注意も必要ではないかと思いました。それから、伝統的な、クラシックなフラメンコが失われつつあり、現代の乗りのフラメンコ芸術、新しい傾向がグローバル化の中で発生してきている、そんな感じもしました。新人公演にもじわじわとそんな現代化の波が押し寄せてきている......などと思ったりもしています。
 今年はある意味で激戦が展開されました。昨年も思いましたが、特にシリアスな曲は、奨励賞にかける意気込みは並みのものではないといった物凄いテンションで踊り込んでいらっしゃる方が多く、圧倒されます。シリアスな曲とは例えばシギリージャとかソレアとかタラントとかですが、私達が気持ちをダイレクトに入れやすい曲風、曲の魅力があります。逆に明るいアレグリアス系はそう意味で表現がとても難しいというのが私の抱いているイメージです。時々程ほどのテンションで深みのある踊りを見たい、などと思ってしまいますが、それは私の個人的な趣味かもしれないです。新人公演では、各参加者がそれなりの思いを籠めて挑戦するというところに意義があり、若さとそのパワー、フラメンコへの情熱が満ち溢れるのは頼もしいことです。とにかく皆さんのこれからが楽しみです。
 さて、今年も出場者の印象やその演技の感想、助言などを簡単に書かせていただきました。続けて沢山の踊りを一気に見とどけるのは至難の業、出場なさった方はほんの参考にしてくださいね。またいつか皆さんの踊りを拝見できれば嬉しいです。

バイレ・ソロ部門 8月23日(日)第3日

写真:©大森有起

16.津田可奈(ソレア・ポル・ブレリア)

16.津田可奈(ソレア・ポル・ブレリア)

●よく踊り込んだソレア・ポル・ブレリア。ここ数年、何度かの挑戦を観ているので、かなり期待があったのだが、ソレポルのニュアンスが伝わりにくく、単調な印象になった。大変に練習したことは見て取れるが、背中の緩みがキレを鈍くしてしまい、この曲種が裏目に出たのではないかと思う。まあよし。身体を鍛えて、次!(菊地裕子)
●バックの楽隊が強調するコンパスのアクセントを、一直線に駆け足でつなぐような振付。逆にアクセントの間を意識すれば、硬質なバイレに陰影が出るのでは。膝を跳ね上げクロス気味に進むパソが、某舞踊団と類似して気になった。マイクのせいか、盛り上げるパルマが音量過多で、サパテアードが聴こえにくかったのが残念。(中谷伸一)
●ブラッソも足も全て、テクニック的には表現の領域をもっと広げられる実力があると思いますが、振り自体がちょっと地味なのか、何なのか?個性が見えてこないのが気になりました。ブレリアの動きがおとなしい感じでした。あとちょっと研究の余地あるかもしれません。頑張ってください。(高橋英子)

17.大家由美子(ティエント)

17.大家由美子(ティエント)

●どっしりしたティエント。ではあるのだが、振付にストイックな男振り系の直線的な動きが多いため、キレのなさが露呈してしまい、かなり残念。そのように踊る必然性を、自分の中に見つけられているのだろうか。先生による振付でも、踊るのは自分です。自分の美意識なり、こだわりなりをその振付に探ってください。(菊地)
●両手を突き上げバンザイ、ガニマタでしゃがみ込む、といった風に見えてしまうのは、曲のリズムに乗り切れてないから。本来の振付の流れが、コマ送りのように一つ一つ分断されているため、わずかなミスや不格好な動きが、観客の目にはストップモーションのように強調されて映る結果になる。(中谷)
●上背もあって豊かな身体。ライトグレーの衣装が重たいイメージになっていたように思います。ブラッソやマノは綺麗なのにブラッソが少ない振付でさらに重たい雰囲気が増しているような感じがしました。当座はサパテアードなど技術アップなどを目指して頑張ってください。(高橋)

18.小坂みはれ(ソレア・ポル・ブレリア)

18.小坂みはれ(ソレア・ポル・ブレリア)

●気合いの入ったソレア・ポル・ブレリア。そこそこキレはあるけれども、いやキレはもっと欲しい。気合いは良いけれども、全体にエネルギー出力が小さくて、段々退屈になっちゃうよ。筋は良いのだから、身体にバンバン叩き込んで、同時にフラメンコの感性をもっともっと磨いて。頑張れ!【A'】(菊地)
●ステージ映えする美形。ソレア・ポル・ブレリアだが、あえてスピードや激しさを抑えていたように見えた。しかし身体の線が細く厚みがとぼしいため、立ち姿の圧力が不足ぎみで、胸に刺さらなかった。内なる炎でわが身を焼くような、強い激しさを秘めて踊ってほしい。ラストは油断したのか、ハケの歩き方に隙があった。(中谷)
●グアッパで可愛らしく華やか。モダンなアイレで若々しさが溢れていていい感じでした。技術レベルも高く、決め技が何個もフラメンカに決まっていて良かったです。自分でアイレを作りだし自由に楽しんでいる、なかなか楽しめました!その調子で頑張ってください!(高橋)

19.佐藤理恵(ソレア)

19.佐藤理恵(ソレア)

●王道の大きなソレア。ほらね、ソレアってこれなんだよ!と言いたくなるような。今風のテクニックはほとんど使わずとも、フラメンコの感性に満ちた唄振り、メリハリの利いたエスコビージャ、そのシンプルな中にその人そのものがにじみ出てきて惹き付ける。この奨励賞受賞は私も嬉しい!【特A】【推薦】(菊地)
●手足を長く見せる振付が効果的。マルカールに入った途端、エアポケットのように、ブラソとパソともに単調になったように感じた。実力あるバックミュージシャンらとの強烈なユニゾンを期待したものの、70%程度の安全運転に流れた印象。舞台左袖へブエルタではけていくパターンも、マンネリ気味に見えてしまった。(中谷)
●中央から静々と入り、大きくスマートな身体がエレガントに空間に映えてとても美しい。余分で不要なパソをばっさり削り、気迫でマルカール。小ワザがフラメンカに決まって流れを作り、全身が大きくうねるように収縮し、スケールの大きい踊りになりました。素晴らしかったです。(高橋)

20.李成喜(アレグリアス)

20.李成喜(アレグリアス)

●マントンを使ったアレグリアス。きれいに踊るし、リズム感も悪くないが、これといって印象に残るものがなく、どうも形に終始した感が否めない。マントンの扱いで目一杯だったのかな。小物を扱うのは身体がしっかりできて振付も身体に入って、余裕がある時でないと、振り回された印象に終わる危険性が。頑張れ!(菊地)
●ライトグリーンの衣装に、スラリとした両脚を開いた椅子からのスタートはインパクトがあり魅力的。一方、繰り出す振付のデジャヴ感が強く、中盤のスローな足のソニケーテ作りも単純で、見る側のテンションが次第に落ちてしまった。スレンダーで元来の身体能力は高そうだが、それがバイレに直結していない印象。(中谷)
●ちょっとフワフワしてしまいました。よく動きますが踊りにペソが不足気味で軽くなってしまい、マントンはよく捌いていたのに残念な結果になってしまいました。無理に顔づくりをする必要はなく、自然でいいです。ちょっとおすましするような感じで品性を保つことを先に考えてみるのも大切ではないかと思いました。(高橋)

21.古郡美弥(アレグリアス)

21.古郡美弥(アレグリアス)

●バランスの取れたアレグリアス。踊りとして美しく、楽しく、舞踊手としてのセンスの良さを感じた。何と言っても、軽々と踊っているのが良い!ただ、私としてはもっとフラメンコ性が欲しいんだな。ちょっとしたリズム遊びとか、土臭さが匂うようなパソとかが、ほんの少しどこかにあるともっと好き。【特A】(菊地)
●センターのスポットライトに真紅の衣装、後ろ向きでの滑り出し。随所にバレエ的所作が見えるものの、ブエルタはキレがよく、コケティッシュさがアレグリアスに合っていた。自分の個性と長所を把握しているようで、複雑さを避け、シンプルで得意なテクニックをコンパスに乗せるという、バイレの基本概念のような好演だった。(中谷)
●チャーミングで人目を引く華やかさがあり、アレグリアスの楽しい感じを凝ったパソや音楽構成で作り上げなかなか楽しめる演技でした。技術的にも納得のいくレベルで、更によかったのは自分もその中で最大限にコンパスに乗りきっていることで、見ていてスカッとしました。(高橋)

22.池本真希子(アレグリアス)

22.池本真希子(アレグリアス)

●全体としてアレグリアスの振付は掴んでいると思うのだけど、踊るための身体ができていないので、伝えたいことが半端な印象。ブエルタができないのなら、ステージに上げる時は、ブエルタをしないで済む工夫をしたほうが良かった。フラメンコは上半身の表現力もものを言います。コツコツと身体を作りましょう。(菊地)
●相当緊張していたようで、棒立ち然と突っ立ってしまった場面があった。大きな舞台で踊ること自体に慣れていない感じ。一生懸命さは伝わった。今の衣装の作りでは肩のボリュームのせいで、腕がかなり短く見えてしまうので要注意。(中谷)
●ホンワカしたムードで頑張っていましたね。踊りが中途半端で盛り上がらないのはパソを削ってもっと味わって踊る勉強が必要で、ゆっくり落ち着いて踊れるように、全体的にレベルアップしていくことが今の課題ではないでしょうか。頑張ってください。(高橋)

23.柴田千穂(ティエント)

23.柴田千穂(ティエント)

●バタ・デ・コーラのティエント。最初は凛とした立ち姿で良かった。だが、足にやや不安あり。振付を粛々とこなしているようなところがあり、見どころが謎。バタについても、バタで何をしたかったのか、果たしてバタが好きなのか、よくわからなかった。おそらく、もっと踊り込んだら、次のステップが見えるのでは。(菊地)
●パーカッションのみでコンパスを刻むイントロが新鮮。衣装はブルー地に白のボランテのバタ・デ・コーラ。表情が少し硬く、バタを持ち上げての動きが窮屈そう。振付に追われて間が感じられず、ゆとりの無い印象を受けた。ラストの終わり方に唐突感があった。(中谷)
●丸顔で可愛らしく、トルコブルーの衣装もステキ。バタ・デ・コーラも必要以上にバタバタさせず、しっかりした足腰で落ち着いていました。しっとりした雰囲気のティエントを誠実で清潔なイメージでステキに踊っていてとてもよかったです。(高橋)

24.松本千晶(シギリージャ)

24.松本千晶(シギリージャ)

●緊張感のあるシギリージャ。唄から歩き出して足に入る出だしは、かなり良かった。まずまずの踊りだが、ブエルタ頑張れ。あと、もうひとつ求心力が欲しい。ステージで踊る時には、あなたが想定しているよりももっと、濃い空気、重い身体、熱い血、深い悲しみを感じて欲しいのです。できます、きっと。【A'】(菊地)
●ギターのゴルペで始まるイントロが、直前の出演者のパーカッションのそれとイメージが似てしまい不運。ディエゴ・ゴメスが唄うシギリージャのレトラと、袖口でキラキラ光るスパンコールのミスマッチぶりが気になった。こうしたズレは創作舞台の一場面ならいいのかもしれないが。両手を広げての右袖ハケにデジャヴ感アリ。(中谷)
●ちょっと地味なムードで、無駄のない動きの中にとても力強いエネルギーを発散していて、それが魅力的です。決して過剰にならず、行き過ぎない抑えた踊りはひょっとしたら、淡白で味気ないと観られるかもしれませんが、不動な力を持っているので、それは自信を持っていいと思います。期待しています。(高橋)

25.佐藤直美(アレグリアス)

25.佐藤直美(アレグリアス)

●アレグリアスの形にはなっているけれど、全体に動きが緩く、アレグリアスらしい生きの良さが感じられない。キレをもっと見せるためにも、身体を鍛えて欲しい。また、足音がパルマで聞こえなかったのは私にとっては減点対象。まず身体を作り、身体の中から表現することを探ってください。(菊地)
●襟付きマスタードシャツにファルダにはマルチカラーの水玉ボランテという、奇抜なオリジナル衣装に見入ってしまった。余裕たっぷりの表情もよい。しかし類似の振付のリピートに少々退屈してしまった。笑顔の裏でやはり死に物狂いの工夫を凝らしてほしい。(中谷)
●ブラッソやマノも綺麗、自然なマルカールでシレンシオも良かったです。サパテアードもしっかりしていてファルダの捌きもちゃんとしています。カラフルな衣装が雰囲気を明るくし、踊りもとても丁寧でいい雰囲気が出ていました。ちょっともう少し大げさな表現があってもいいのでは?などとも思いました。(高橋)

26.岩泉美帆(タラント)

26.岩泉美帆(タラント)

●自発的な動きが印象的なタラント。八頭身のスラリとした身体、長い手が緩みもなく生きた表現をする美しさ!全体に緩急があり、すっかり自分のものとして踊っていて飽きさせなかった。美しいと言っても、その踊りにはどこかゴツゴツした印象もあり、変わった個性。これからが楽しみ!【特A】【推薦】(菊地)
●ブラウン地、背中から腰まで黒地の白水玉、ライトベージュのシージョという落ち着いたトーンがタラントらしい衣装。鋭くキレのあるバイレだが、ファルダを激しく引き寄せる手つきや、手を振り下ろして叩くような振りなど、ここまで強いコラへの表出が今回のタラントの曲想に必要なのかと思わざるを得なかった。(中谷)
●大柄でスマート、小さな顔立ち、動き出したらメルチェ・エスメラルダみたいにしなやかで美しいフラメンカな身のこなし。技術テクニックも高い大きな踊りで、強く逞しいところも同居している。とても魅力的で惹きこまれる素敵な踊りでした。(高橋)

27.土方憲人(シギリージャ)

27.土方憲人(シギリージャ)

●華のあるシギリージャ。いきなりこんな人が出て来るなんて、今回一番の「おったまげーしょん」!始めから終わりまで、フラメンコとして文句のつけようのない格好よさ。しかも自分のスタイルを持っていて、スター性まで感じさせる。男性には比較的厳しい私も、これには参りました。まだ若い彼のこれからが非常に楽しみ!【特A】【推薦】(菊地)
●二年ぶりに見た劇的な変化に瞠目。歩き方、ブラソ、体幹、サパテアードの打ち方といった、あらゆる側面が徹底的に鍛えられ、鋼(はがね)の芯が埋め込まれた感がある。マドリード留学(2013年第7回CAFフラメンココンクールのコンセルバトリオ賞)の成果だろう。加えて翳りのある甘いマスク。この受賞を契機に日本で人気が出そうだが、あくまで本国スペインのトップレベルを念頭に、自分に厳しく突き進むことを願う。オレ!(中谷)
●若い剣士のようなイメージと、シャープな切れ味でメリハリある流れを作りだし見る人をくぎ付けにしてしまいます。クエルポの使い方が粋で美しいという、男性には珍しいタイプで、時々ハッとさせられました。(高橋)

28.久保田晴菜(タラント)

28.久保田晴菜(タラント)

●よく練られたタラント。何年も新人公演にチャレンジしてきた彼女の踊りの中で一番良かった。身体もよく動いていた。フラメンコ性の片鱗も見えた。しかし、こうなるともっと足にも動きにもコンパス感が欲しい。客席とその心地よさを共有できるまで、あと少し!【A】(菊地)
●ダークブルーの衣装に恵まれた長い手足を生かした、いかにもタラント的バイレ。実直な姿勢は感じるものの、群舞でのソロパートを連想してしまった。マリア・パヘスも優雅なブラソ、スレンダーな肢体がウリだが、実は出入りの激しいリズム遊びが得意なのを間近で見て驚いたことがある。自己イメージを覆すチャレンジが必要か。(中谷)
●目がパッチリで愛らしい。それがかなり目立ちます。上体の美しさを十分に発揮させる振付をそのまま丁寧に踊り込み、ブラッソもアイレたっぷりでステキでした。技量もあって、優しさと逞しさが同居していて気持ちの籠められた感情表現は素晴らしかったです。(高橋)

29.清水千夏子(ソレア)

29.清水千夏子(ソレア)

●白いマントンのソレア。身体作りなど、踊り手としてはまだまだだが、自身はあまり動かずに、ほとんどマントンに踊らせるかのような振付が功を奏した。あれだけマントンを操って、マントンに振り回されずに堂々としていたのは偉い。今後はぜひ、足や身体作りを地道にやって欲しい。(菊地)
●舞台歩きが日常歩行と同じなので、まずはその修正から。サパテアードを打つ時に、頭が上下しないよう。曲中盤で早くも肩で息をしていたので、ラストまで踊り切る基礎体力の底上げが必須だろう。(中谷)
●マントン捌きはよく練習しているようですが、手放さないで、ずーっと一緒に踊っていましたので、時々スキができてしまい、全体的にまとまりが付かない踊りになってしまった感があります。ブラッソがもっと見たかったですね。全体的な技術アップを目指して頑張ってください。(高橋)

30.津島直美(アレグリアス)

30.津島直美(アレグリアス)

●よく練習したのだろうなと思うアレグリアス。まずまずなのだが、少しずつ色々足りない。キレ、リズム感、強さなど。振付を踊り込むことも大事だけど、平行して身体作りをぜひ。そして沢山フラメンコを見て聴いて!(菊地)
●小柄だがブラソを目一杯使ったアレグリアス。最初は当人と振付が合ってないように感じたが、徐々にノッてきて、終盤の盛り上げは非常に良かった。大ぶりの袖口フリルは、もともと腕がかなり長い場合をのぞき、視覚的に一層短く見えてしまうので要研究。(中谷)
●顔と同じぐらいの大きなお花がポイントとなって全体に可愛らしくアレグリアスを踊り込んでいてとても良かったです。演出が凝っていて、それはいい効果がありました。技術的にはブラッソが惜しい。マノが回らない。身体の先端まで神経が行き届いてない感じがして、ちょっと残念!といったところでした。(高橋)

31.黒木珠美(シギリージャ)

31.黒木珠美(シギリージャ)

●上手さを感じるシギリージャ。この人はいつも、踊り巧者だなあと思わせる。シギリージャをよく捉えているし、見せ方も心得ている。けれども、最終的にあとひとつ心に迫らないのはなぜか。内側に向けたベクトルの厳しさがもう少しなのではないか。もっと痛みを抱えて踊ること。そう思う。【A】(菊地)
●冒頭、左袖からセンターへ歩く際、客席側から見える右手がかすかにフラフラ揺れてしまい、皮切りの緊張感を演出しきれなかった。舞台上、特に観客の目に触れる側には、極力神経を集中させておくべきだろう。舞台映えする美人だが、ラストの両手を広げて右袖にはけていくお馴染みパターンといい、全体構成に工夫がほしい。(中谷)
●とてもグアッパな容姿で目立ち、シルエットも美しい。技術テクニックも高くて決め技はカッコよくバシッと決まってなかなか悪くない!おまけに意識過剰でなく、真摯なイメージが漂い、ちょっと不思議な雰囲気を醸し出していてとてもステキで惹かれる踊りでした。(高橋)

32.近藤朔(ソレア)

32.近藤朔(ソレア)

●生真面目なソレア。年齢のことを書くと叱られるかもしれないが、御年70代でのステージで、しっかりしたエスコビージャは見事だったとしか言いようがない。ソレアというのは素敵な曲種で、素直に踊れば、ちゃんとフラメンコの味を醸し出してくれる。ソレアのどこに魅力を感じているか、そのこだわりも見せながら踊ったところが私が一番感じ入ったところでした。(菊地)
●波打つ豊かな銀髪、耳に光るピアス。まさしくロマンスグレーといった風情どおりのバイレ。足を見ているのか、時折うつむき加減のクセがあるものの、氏の年齢と個性を吟味し、最小限の動きで構築された振付も上手い。不思議なおかしみのある雰囲気の持ち主。(中谷)
●衣装をダンディに着こなし、颯爽と現れるのは昔のヒターノみたいでいい感じ。マイペースで坦々と正統的な雰囲気で踊り込む。とても好感が持てました。ブレリアになったら、面白いアクションがあって微笑ましかったです。アレグリアスなんかも拝見したいです。(高橋)

33.相田良子(シギリージャ)

33.相田良子(シギリージャ)

●椅子に座ってからのシギリージャ。まだ振付をそのまま踊っている感が強い。背中に甘さがあるので、キレやニュアンスが表現できていない。強さも今ひとつ。つまり、こういう難曲にチャレンジするのであれば、まずは身体作りを真剣にやるべし。独自性はそれから。頑張れ!(菊地)
●隈取りのように強烈なアイメイクとコラへに満ちた表情、真っ黒な衣装で気合十分。振りの一部に微妙な予備動作が見え、一瞬先の展開が読めるのが惜しい。タメを作ろうとする姿勢はイイが、それゆえ遅れることも。時にはカンと反射神経に任せていいのでは。いつか爆発的に伸びそうな予感。(中谷)
●フラメンカな目の化粧がキッとしていて、シンプルな踊りを荘厳なイメージを求めて踊っているような感じがしました。姿勢とか、回転を深くとか、いくつか技術的な修正を加えてレベルアップするともっと説得力ある踊りになるように思いました。頑張ってください。(高橋)

3つの壁の乗り越え方

【フラメンコに行き詰まりを感じている方へ】

フラメンコ(カンテ/踊り/ギター/他)が難しい...
先行きが見えない...
壁を感じている...