1月末のイベントは懐事情が非常に厳しかった事もあり、隆充氏とマネージャーの瀬戸さんには我が拙宅の初めてのゲストになって頂いた。
自分も生活はおろか泊まった事もないので布団を実家から運んでもらったり、お気に入りの茶碗やら最小限のおもてなしグッズを東京から持ち帰っ
そして我が家の最重要ポイントお風呂グッズを整えたり。別府市は車社会、家は山の中腹にあるため近くのホームセンターから家まで徒歩約20分。しかも最後の登坂はなかなかどうして立派なものである。風呂掃除用の長いデッキブラシと風呂&掃除グッズの入ったデカポリ袋ふたつ。恥はかき捨てとばかりにデッキブラシの柄の両側にポリ袋をひとつずつ下げ、天秤状にして肩にのっけて歩く。途中寄ったコンビニの人々の好奇の視線もなんのその。現代のリアル飛脚スタイルで家路に着きました。
初日コンサート会場に選んだ鉄輪温泉。隆充氏はてつりん温泉、友人Rはてつわ温泉と思っていたらしい。
確かに言われてみれば鉄輪を「かんなわ」とすんなり読むのは地元の人だけかもしれない。
別府市に住むと決め、手続きの関係で住民票を先に移すことになった。で、沢山の書類に住所を書き、もろもろの手続きが続く。と住民票をとったり色んな契約の段になり市役所で聞かれた。
「通称と正式どっちで出しますか?」
そう。別府は通称と正式のふたつ住所のある町。ウチは正式は鶴見、通称は小倉。ふうん。と、ここまでは昔ながらの呼び方が残る地方都市にはよくある話。だが別府市のビックリ!は免許書や保険証などの公の証明書にいたっても通称で表記されるところ。不動産屋さんによるとこれは日本全国でも別府市だけなのだそう。
というわけで東京から送った色々なものも、もちろん通称にて手配した。にも関わらず、ことごとく配送会社から「あの~、お宅どこですかね?」と電話がかかってくる。あれ、送り状書き間違えたかな、と思い「別府市小倉○○○○です」と住所を言うと「いや、そこまでは来てるんですよね~。小倉って言っても広いけんね~。◇◇さん家の隣りですか?」と聞いてくる。
な、な、なんとここら一帯は全部同じ住所なの!?
◇◇さん家がどこかわからないので、とりあえず家の特徴やら、近くの老人ホームの名前やらを伝えて結局家の前で待つ事に。
無事トラックが着き、配達のおじさんに「これって住所で送れないとなるとどうしたらいいんでしょう?」と聞いたら「あぁ、もう1回来たけん大丈夫やわ~」って笑って去って行った。そういうモンダイ!?
観光地なのに駅からちょっと離れるとなかなかタクシーもいない。家が山腹にあるので荷物運びに数回タクシーも利用したけど、運転手さんは一人残らずスマホを見る隙を与えずしゃべり続ける。私のビックリを話すと「観光客が住所しか知らない(そりゃそうでしょ、と心でツッコみ)と目的地になかなか行きつけないんだよね~」と言ってカラカラと笑う。
いやいやそれでいいの?
いやいや。でもね、それでいいのかもだね。
そんな風にして人が人と沢山話す。道を聞く、美味しい定食屋について聞く、町の歴史を聞く。別府は温泉地だから空襲されずに町が昔のまま残っているのだそうだ。GHQはここで米軍の戦士の疲れを癒すため町を手つかずで残した。湯煙は天気が悪いと強い。気圧が低いから空に向かおうと立ち上るんだよ。前述の鉄輪温泉の辺りは温泉地として整備される前は急に道から熱湯が噴出してやけどしてしまう、それは地獄のような有様だったのでこの界隈の温泉を地獄と呼ぶようになった。鉄輪の由来は色々あるけど、和尚さんが鉄の輪がついた棒で地面を叩いたら温泉が噴き出したから「鉄輪」というらしいんぞ...タクシーに乗るたびに色んな話を聞かせてもらった。
「夏から別府に住むんです」と言ったら「あんたね、世界でこ~んなにいい場所はないよ。景色も食べ物も温泉も最高や!早くおいでな、野菜あげるからな」とまたカラカラと笑う運転手さん。あ、この感じ知ってる!
「お前、春のセビージャは最高だぞ~。オレンジのいい匂いがしてさ。あぁなんて美しいんだ俺のトリアーナは。春までいないなんてもったいないぞ~」そうここはアンダルシアみたい。