GWが明けたばかりの5月7日
シティオ塾新講座、「タブラオとライブのためのバイレ講座」が始まった。
講師にお迎えしたのは、
長い間スペインのタブラオで
フィグーラ(看板スター)として踊っていた渡部純子さん。
思い起こせば20年以上も前、
バルセロナの老舗タブラオ「タラントス」に
彼女を訪ねたのが最初の出会いだった。
しばらく前に帰国されていたことは知っていたが、
その後、地元の宇都宮を拠点に活動していたこともあって、
なかなか会えずにいた。
それが今年の2月、偶然に某パーティで再会を果たす。
その後、日にちと場所を改めて
積もる話をあれこれしているうちに、
この講座の企画が出来上がり、
講師をお願いすることになった。
「この人は、きっと最後までスペインで生きていくのだろうな」
バルセロナで彼女と別れた時、
心の中でそうつぶやいたことを、私は今も覚えている。
一緒に過ごしたのは、ほんの1、2時間。
後はステージを見ただけだ。
だが、多くを語らずとも、
そう感じさせるオーラを彼女は放っていた。
それほど、スペインの水は彼女に合っているように見えた。
そんな純子さんと、
日本の地で、
一緒に仕事をするようになるとは!
......不思議なご縁だなと思う。
さて、そうして、
初回のレッスンが始まった。
クラスの主催者として、取材を兼ねて私も見学させてもらうことに。
どんなクラスになるのか、
このテーマで、純子さんが何をどう伝えようとするのか?
個人的にも興味があった。
取り組む曲はアレグリアス。
超シンプルな振りでアレグリアスを踊りながら、
タブラオやライブで踊る時のポイントを伝えていく、というのが
このクラスのレッスンの中身。
鼻歌を歌うみたいに、超自然なノリで歌い出す純子先生。
歌は、レトラから口三味線となり、
抑揚とノリがさらに際立つ。
そして踊る、さらに講師としての解説も加えられる。
同時に1人三役をこなすという離れ業的指導。
また、これが伝わるのだ、わかりやすいのだ。
彼女が教えるのは、振りの形ではない。
フラメンコ舞踊の身体の動かし方だ。
あらかじめ"振り=踊る形"があるわけではない。
こう身体を使うから、
こう身体を動かすから、
"こういう振りになる"、のだ。
必然的な動きの結果として
踊りの形(振付)ができていくことが、
眼の前でつまびらかにされていく。
そうすると、
「振りを追いかける」のではない、
必然性を備えた
フラメンコエキスたっぷりの
バイレが立ち上がってくるではないか!
うーん、納得。
目からウロコだ。
わずかな時間の間に
生徒たちの踊りが、明らかに変化していく。
因みに、
この日の生徒参加者は4人。
レベルは、バイレ歴十ウン年の人から、
20年ぶりのレッスン再開者やほぼ初心者と言う人まで
かなりのバラつきがある。
が、一様に、
踊りが変わっていく。
そう、ここは、難しい振りを覚えるためのクラスではない。
だから踊リの振りは極めて簡単、基本的なものだ。
言い換えれば誰にも踊れる振りだ。
だから生徒の意識は、
振りを覚えたり、こなしたりすることに向かうのではなく、
その踊りはどこから来ているのか?
どう身体を使えば良いのかに向けられる。
そこにビジュアルで先生のお手本を受け取り、
さらに具体的な動かし方の解説が言葉で語られる。
すると、レベルに関係なく、踊りの質が変わってくる。
振りの本質的な意味が見えてくるのだ。
私は自分では踊らないが、
踊りを見ることは、私の仕事の一部でも有る。
私的にも、いろいろな目からウロコのレッスンなのでありました。
そうそう、レッスン中の報告がもう一つ。
不肖ニシワキ
なんと、このレッスン中に、
歌伴唱デビューしてしまいました!
カンテは少々やりますが、
踊り歌の経験はゼロ。
私がカンテを歌うことだけは知っている純子先生、
何を思ったのか、突然私に踵を返し
「西脇さん、なんでもいいからアレグリアス歌って!」
「わわ、私がですか?」
オタ、オタ、オタ、オタ......。
一瞬のうちにいろんなことが駆け巡る。
「そう、大丈夫だから、歌って!」
純子先生はさらにキッパリ。
いきなり歌えるかどうかなんて、全く自信はなかったけれど、
アレグリアスなら、歌える曲はひとつある。
ならば、ここで逃げては女がすたる?!.
とワタスの頭は思いっきりお短絡的に回転し、
歌っちゃいましたよ。
ハイ、見事討ち死にいたしました。
生徒さんたちの前で赤っ恥もいいとこですが、
それでもね、
思い切って歌ってよかったと、思ってるんです。
だって、
ソロを歌うのと踊り歌を歌うのでは全く違うってことが、
嫌ってほどわかりましたから。
逆算で、何がわかってれば踊り歌を歌えるのか?
ってこともわかりました。
実を言うと、踊り歌にはさほど興味なかったんですが、
お蔭でが俄然、やる気が出てきました。
純子先生の一言から、
もう一つのカンテの扉が開いた感じ。
無茶ぶりに、感謝です。