つい先ごろ、スペイン舞踊生活50周年を記念した単行、本濱田滋郎著「岡田昌己スペインをを踊る」が発刊されたばかりの岡田昌己さん。その本の帯にも書かれていますが、財団法人松山バレエ団(日本のプリマ森下洋子さんが現在の会長)が制定する芸術賞を受賞されました。その授賞式が10月7日、ホテル「フロラシオン青山」で行われ、私も参加してきました。


matuyama1.JPGこの賞はとてもユニークな賞で、選考に携わった舞踊評論家のうらわまことさんのお話では「ジャンルフリー(舞踊のジャンルは問わない)、カテゴリーフリー(その年に応じて様々な特別賞が出る)、地域フリー(東京だけでなく地方で活躍している舞踊家にも光をあてる」で選ばれる非常に価値ある賞とのことでした。
フラメンコでは、確か何年か前に、鍵真由美さんと佐藤希さんが、若手世代に送られる芸術奨励賞を受賞されています。
岡田昌己さんの今回の受賞は、最近作「一輪のマルガリータ」(スペインの童話作品を下敷きに老夫婦の家族愛と絆を描いた作品)、及び今年上演されたスペイン舞踊生活50周年記念公演の中の作品「道化の想い」(金銭にまつわる男女の愛の機微を描いたもの)など、時代をとらえた創作舞踊作品が評価されたもの。
受賞された岡田さんは、
「このへんで一休みしようと思っていたのに、こんな賞を頂いたということは、もっとがんばれと、皆さんきっとおっやりたいのですね(笑)? そう受け止めて、もうひと踏ん張りします」と、その喜びを、マサミ流に元気に語っていらした。
いやいやそれにしても、さすがは松山舞踊団! 授賞式は舞踊団の仕切りで行われたのですが、日本のトップバレエ団としての「お・も・て・な・し」のみごとさに、私は驚いてしましました。
団員の方々が、受付や案内係を担当されていましたが、その立ち居振る舞いの何と美しいこと! ごあいさつのおじぎもバレエ風プリエで。授賞式のも後列で参加されていましたが、受賞者の名前がよみあげられるごとに大きな拍手とハレオならる掛け声がタイミングよくしかも自然に湧きあがるのです。それがどれほど式典を盛り上げ、活気あるものしていたことか。
鍛え抜かれた人たちであることは、一目瞭然でした。
舞台の上の素晴らしさって、こういうところにも出るもんなんですね、やはり。
matuyama3.JPGさて、こちらはと言えば、この日の主役岡田昌己さん、「岡田昌己スペインを踊る」の著者濱田滋郎さん、知道出版の奥村さんとが揃って、さなから単行本プロジェクトのちょっと早目の同窓会のよう。ハイ、この本、ニシワキも編集を担当させていただきました。
matuyama4.JPGそうそう式典には高円宮妃殿下の久子様もご参列されていましたが、すばらしいお祝の辞に感動すら覚えました。どこかの議員さんのような与えられた原稿をよむなどという気配は一分もなく、一言一句、自分のことばで時にアドリブで笑いさえも呼び起こしながら、誠意を持って話されているのが伝わってきました。歓談のパーティタイムでは、あの皇室的微笑で身を包むことなく、大勢の参加者とざっくばらんに直に会話をされていました。自分の眼でものを見、感じ、判断される、尊敬すべき一個人であられました。
あぁ、そして、森下洋子さん! 森田洋子さんは、言わずと知れた日本最初の世界的プリマドンナ。クラシックバレエがまだまだ諸外国のレベルとは大きな隔たりがあった時代から、彼女はただ一人の世界に誇る日本人プリマとして、私が子どのの頃から活躍されていました。
間近で見る森下さんは、小さくて、控えめで、物静かで、プリマの華やかさとは違う印象を受けました。この小さな体のどこに、大きな舞台を、劇場を席巻してしまうあのエネルギーがあるのでしょう? でもその清楚なたたずまいは、舞台の下でも妖精のようでありました。

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