6年ぶりに開催されたスペイン国立バレエ団公演。
昨年、弱冠35歳の若さで芸術監督に就任したアントニオ・ナハーロの前評判も上々で
会場は、ほぼ満員の盛況だった。
どうしても1日しか時間が取れなかった私は、悩みに悩んだあげく
2月6日(水)の夜公演、Bプロを見た。「ホタ」が見たかったからだ。
国立バレエを見て来たここ20年余りの間、おそらく「ホタ」が上演されたことはなかったと思う。もしかしたらあったかもしれないが、とにかく私は見ていない。今回の「ホタ」は、ホタの伝説的な名手であり、ホタを一民族舞踊から劇場で上演される芸術作品として振り付けたペドロ・アソリンの作品を下敷きに、娘のピラール・アソリンが振り付けたもの。本家本元のホタを私はどうしても見たかったのだ。
これまでに、国立は20回くらいは見ている。Bプロは、「メデア」「ボレロ」「ファルーカ」と「ホタ」以外は何度もみている演目だったので、正直言って大きな期待はしていなかった。もちろん唯一無二の舞踊団であることは百も承知の上「スペイン国立バレエの実力はこのくらい」って、先入観で値踏みしてた。感動の予定調和が観る前からできあがってたわけ。だが、そんな私のあまっちょろい予測は見事に裏切られた。私が今まで見た国立バレエ団公演の中で、間違いなく最高の感激を体験させてもらった。
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まず、ダンサーたちの実力、レベルが格段にアップしていた。
国立バレエ団的古臭さがまったくなく、伝統をしっかり身につけながら、今を表現できるダンサーたち。
バイラリンとしての際立つ身体性と表現力。特にソリスト、準ソリストクラスがすごかった。
「メデア」「ボレロ」などの各作品が素晴らしいのは言うまでもない。
振付の大筋はかわっていないが、部分的にはかなり斬新になっていると感じた。より肉感的な「メデア」、より研ぎ澄まされた「ボレロ」。そしてフォルクロリコの華「ホタ」の躍動感。
国立バレエ団は、21世紀を表現する舞踊団にみごとに変貌を遂げていた。
舞踊団員からの生え抜きで芸術監督になったナハーロは、プログラムのインタビューでこう語っている。
「僕は97年から5年間国立バレエに在籍し、その後9年間自分のカンパニーを率いていました。だから芸術監督として戻ってきた際に、国立バレエ団はどうあるべきか、今何が欠けていてどんな改革が必要で、そのためにはどう動けばいいのかが把握できていた」
そして彼が行ったことが2つある。
まず、、自身が踊ることをやめ、芸術監督に徹した。
そして、国立バレエ団のダンサーにふさわしい人材をオーディションし、入団後鍛え上げてきた。
今回の公演の素晴らしさは、決してラッキーな偶然ではなかった。
ナハーロが確信的に取り組んできた結果だったのだ。
恐るべし、若干35歳のナハーロ!
公演の最後、挨拶のためステージに登場したナハーロ。
その彼の身体は、まさしくダンサーとして鍛え上げられた(踊らずともそれがはっきりとわかる)ものだった。その肉体にスポットライトが当たることを100パーセント排して、ナハーロは、芸術監督としての道を突き進む。
今度の来日はいつだろう?
しばらく国立バレエから目が離せなくなった。