仕事がひと段落して一杯やるとき、必ずかけるのがカマロン・デ・ラ・イスラの「コモ・エル・アグア」だ。
 川の水が流してくれた/まるで夜明けの星のように/俺の愛もキレイになった/君に湧く清らかな泉でね/まるで水のように・・・・・・

 来たる7月2日で、20回忌を迎えるカマロン・デ・ラ・イスラ。フラメンコ史上最高の唄い手とも呼ばれる、このカンタオールはご存知だろうか。作品自体も31年前の発表(1981年)だが、いつ聴いても全く古さを感じさせない点が、驚異的だ。
 冒頭のタンゴから、颯爽と走り出すカマロン。サリーダ(声慣らし)なしの第一声に見るロケットスタートぶりが、圧倒的にカッコイイ。次元の違う才能を感じるのだ。それを彩る天才パコ・デ・ルシア&トマティートのギターも文句無し。輪郭を淡く点描するカルロス・べナベンのベースも渋い。作曲を担当するパコの兄で唄い手、ぺぺ・デ・ルシア。こうして脇を固める共演陣は、いずれもソロで看板を張れる実力者たちだ。全く豪華な布陣である。
 全8曲のうち、ブレリア3曲、タンゴ2曲という、高速リズムによるノリを重視した構成。リカルド・パチョンというプロデューサーは、フラメンコの核をがっちりつかみながら、反骨精神あふれるロック魂をも、このアルバムに吹き込んだのだ。ちなみに筆者は昔、大のロックファンだったのだが、今ではほとんど聞かなくなってしまった。何しろフラメンコには、すべてがあるからだ。
 とまあ、堅苦しい説明はここまで。とにかく一杯やりながら、ただ彼らの魔法に浸るのが一番だ。そこで久しぶりに、少し離れた酒屋まで、お気に入りの酒を買いに走った。それが今回ご紹介するスペインワインの「パタ・ネグラ」だ。
 598円という安さながら、2005年のレセルバという長期熟成で、ぶどうの品種は、スペインらしいコクと深みと土の香りを持つ、テンプラニージョ100%。安さの秘密は、産地がバルデペーニャスという、ひなびた土地に由来する。そこの生産者がもうけより、良いワインを、一人でも多くの人に飲んでほしい、という考えで作っているからだ。
 バルデペーニャスのワインは、スペインのスーパーで大体1.5~2ユーロ(150~200円)前後から売られていて、安宿であおるのに格好の酒だった。つまみはオリーブ。BGMは「コモ・エル・アグア」。もう何も言うことはない。たまった疲れも、そう、水のように流れていく。

※取材旅行のためしばらくお休みします。再開は7月上旬の予定です。

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