バイレ・ソロ総評

菊地裕子
●今年のバイレ・ソロ部門は59名が出場。私が今回、素晴らしいと感じた【特A】の人は8名だったが、奨励賞には1割の6名だけを推薦するようにとのことで、選考会ではその中から6名を推薦した。しかしながら、その差は大きくはなく、今回、私が文句なく奨励賞と思ったのは、 廣木恵理さんと土方憲人さんの2名で、あとはボーダーライン上にいた。 廣木さんに関しては、その突出したフラメンコ性に感動し、土方さんに関しては、既にフラメンコ舞踊手として突出していることに感銘を受けたが、他の方々は「突出」ということがなく、総合的な判断が働いての選出だった。となれば、これで新人公演を卒業する人も、これからチャレンジする人も、多くの舞踊手の中に埋没する可能性が多々ある。そのことを忘れずにいて欲しい。
 フラメンコのバイレ・ソロが目指すのは、唯一、あなただけの印のある踊りだ。それはカンテもギターも同じだけれど、群舞から出発することの多いバイレの人々は、ともすれば、振付通りにきれいに踊ることを目標にする傾向がある。それを評価する人が仮にいたとしても、フラメンコ的にはそこにはたいした価値はない。美しく踊ることや大きく踊ることにも、究極的には価値はない。むろん、舞台芸術としてのフラメンコには、それらは意味のあることだが、基本がフラメンコ的価値に基づいていなければ、それらがフラメンコの感興を生むことは絶対にないと私は思っている。今、スペインからも音楽的、舞踊的に「進んだ」フラメンコが入ってきているけれども、外国人である我々が、フラメンコの感興を芯から感じるまで勉強することなくして、ただ形ばかりの「フラメンコ」を踊ったとしても、誰をフラメンコとして感動させられるだろうか。
 あ、また言い過ぎた!ごめんごめん。年寄りの冷や水でしたね。えへへ。何がフラメンコとして価値があるのかについては、他にも各コメント欄に書いたので、こちらも合わせてお読みください。
 いつものことながら、何年もチャレンジしている出場者が成長している姿を見るのは、何より嬉しい。そして今年は、バタ・デ・コーラやマントン、パリージョなどを使った演目が増えたことも喜ばしかった。受賞云々に関係なく、こうした技術が受け継がれていくことも大事なことだと思う。また、群舞もそうだが、地方からエントリーした出場者たちに声を大にしてエールを送りたい。そして出場した全ての人に、お疲れ様!y ありがとう!
※評価=【特A】>【A】>【A'】
※菊地が奨励賞に推薦した人=【推薦】

奥濱春彦
●本番に目掛けて一生懸命に頑張る。それぞれの想いや努力を観させていただきこちらも勉強させていただきました。ありがとうございます。各個人への感想は上手い下手、技術レベルの上下という壁を作らず拝見させていただきました。こちらの総評では全体的に感じたことを書かせていただきます。
 目に見える物だけではなく、見えないが感じられるものの勉強も必要かと思います。
その一つに舞台の中心感覚というものがあります。
 【中心】といっても舞台中央にバッテンの場ミリがある場所ではなく、例えば今回ミュージシャンは上手にいたので、そうすると舞台全体でみると下手空間が軽くなってしまう。そうした場合、センターをほんの少し下手にずらしてポーズを決めると、舞台空間の中でその人間が美しく見えたりするものです。この中心は一曲の中でも移動してくるもので、照明の具合や小道具として使う椅子の位置、捨てたマントン場所等で変わってきます。この感覚はいろいろな舞台を観て勉強・研究するしかないのですが、この意識が生まれると踊りが前身頃だけではなく、背中の空間も使えて舞台が大きく見える踊りに変化します。
あとこれは見える物の事ですが、お衣装はみなさんとても良かったと思うのですが、それに見合った頭部の装飾がなかったかと思われます。正直、皆さん同じ花の付け方でモーニョの場所などももっと研究されたら良かったのにと残念に思いました。流行りの付け方なのかもしれませんが、もう少し個性出すように研究されていたら観ているお客様ももっと楽しめたかと思います。
 舞台の中心感覚も衣装や髪飾りの事も、やはり外(客席)から見てくれる方がいることが大切かと思います。各人の踊りは一生懸命な練習の成果が感じられましたが、客観的な部分が弱いのかなと感じたのが正直な感想です。

高橋英子
●今年も皆さんのそれぞれに心の籠る踊りを堪能しました。技術的にある一定のレベルに達していて滞りなく一曲を踊れる方が増えてきていますし、その中でそれぞれの個性が見えるのは嬉しいことです。今回思ったのですが、年々参加者の演技は凝った振付や音楽、舞台照明などで派手なものになってきていて、それはある意味でいい傾向だと思います。インパクトある踊り創りは観る人の感動をより大きくします。ただ、ちょっとたぶらかされてしまう、個人の踊りではあまりに過剰な細工はちょっと考えものかもしれない、演技者の演技自体がよく見えてこないという問題点を私は感じています。また、踊る側にそれだけの表現力も要求し、バランスがとれないおかしな結果に終わってしまうこともあるので、注意も必要ではないかと思いました。それから、伝統的な、クラシックなフラメンコが失われつつあり、現代の乗りのフラメンコ芸術、新しい傾向がグローバル化の中で発生してきている、そんな感じもしました。新人公演にもじわじわとそんな現代化の波が押し寄せてきている......などと思ったりもしています。
 今年はある意味で激戦が展開されました。昨年も思いましたが、特にシリアスな曲は、奨励賞にかける意気込みは並みのものではないといった物凄いテンションで踊り込んでいらっしゃる方が多く、圧倒されます。シリアスな曲とは例えばシギリージャとかソレアとかタラントとかですが、私達が気持ちをダイレクトに入れやすい曲風、曲の魅力があります。逆に明るいアレグリアス系はそう意味で表現がとても難しいというのが私の抱いているイメージです。時々程ほどのテンションで深みのある踊りを見たい、などと思ってしまいますが、それは私の個人的な趣味かもしれないです。新人公演では、各参加者がそれなりの思いを籠めて挑戦するというところに意義があり、若さとそのパワー、フラメンコへの情熱が満ち溢れるのは頼もしいことです。とにかく皆さんのこれからが楽しみです。
 さて、今年も出場者の印象やその演技の感想、助言などを簡単に書かせていただきました。続けて沢山の踊りを一気に見とどけるのは至難の業、出場なさった方はほんの参考にしてくださいね。またいつか皆さんの踊りを拝見できれば嬉しいです。

バイレ・ソロ部門 8月21日(金)第1日

写真:©大森有起

1.新井ゆふ子(ソレア)

1.新井ゆふ子(ソレア)

●安定感のあるソレア。最初の唄の途中から出て来ての唄振りは、たっぷりとした感じで好印象。大筋でフラメンコを捉えているのがわかる。だが、全体的に無難にまとめたのか、決め手に乏しい。基本的なことはできているのだから、もっと沢山のエネルギーで踊って、表現に緩急を。【A'】(菊地裕子)
●一つの公演の幕開けを務めるというのはとても緊張することだと思いますが、度胸がありフラメンコの香りたっぷりの踊りでした。瀧本さんの魂の歌とペソのある踊りが平衡し素敵なソレアの歌振りを見せていただきました。残念だったのは最初の上手からの出。体を真横から見せるのはとても難しいのですが、背中から首の後ろの引き上げがあると良かった。(奥濱春彦)
●静々と落ち着いて登場し、丁寧に振付に沿って踊られている感じでした。ちょっとまだ力不足かな、唄振りに弱々しさが残り、ここぞという時の盛り上げ方に表現力が追い付いてない感じはありましたが、バックの音を聞きながらパソを一つ一つ丁寧に踊っていたところは良かったです。頑張ってください。(高橋英子)

2.近藤綾香(ソレア)

2.近藤綾香(ソレア)

●よく踊れているけれども、まだ振付が完全に消化されていないのか、唄振りがやや気持ちと離れた感じで、観るほうに伝わって来ない。リズムを意識した振付の部分も、動きがジャストのところに入ってこないので心地よさを生まない。あと0.1秒速く動いて欲しい。筋は良い人だと思う。頑張って!【A'】(菊地)
●ブラッソに恵まれた体型で先生の技をよく盗めていて、またそれだけでなく自分の独特な世界観を持っていた。これはとても大切なことだと思うので今後もその姿勢を変えずに頑張ってください。またリズムの押さえ方がよく、エスコビージャの途中の2連符のパソで普通は速くなってしまいそうなところを上手く落ち着かせていた。下腹部の強さが出てくれば上半身もサパテアードも更に強くなると思います。(奥濱)
●振付に現代的なテクニックがちらほら目立つ振付だったよう。回転はしっかり勉強している感じが見えましたし、全体的に技術の向上と共に踊りが良くなっていくかもしれません。軽いイメージですので、豊かなブラッソでカバーするようにマルカールをもっと勉強して、パソを丁寧に踊ってくださいね。(高橋)

3.佐藤哲平(ファルーカ)

3.佐藤哲平(ファルーカ)

●男性によるファルーカというと、まず硬派な踊りをイメージするのだが、いきなり柔らかく美しいブラソの動きがあってびっくり。この入り方はとても良かった。しかし、その後にきりっとしたところがあまり感じられず、平板な印象に。こうした踊りには予想を裏切るぐらいの表現の幅が欲しい。もっとリズム感とペソの研究を。(菊地)
●容姿体型ともに舞台人として恵まれた方だと思います。背が高いが細すぎず、また股関節の可動域もお持ち合わせている踊り手さんなので今後の成長が楽しみです。またレマーテなどの激しい部分でも嫌みのない思い切りさがあって良かったと思う。足の裏の意識が生まれてくると床が掴めるようになり、立ち姿なども端麗に見せられるようになると思います。(奥濱)
●本人の頑張り、気持ちの籠めが伝わってくる好感持てる演技でした。男性ですが、マノが繊細で、表現に深みが出ていたと思います。全体的な技術向上とフラメンコ感覚が磨かれていくと力強さ、逞しさが出て来てもっともっと良くなると思います。頑張ってください。(高橋)

4.石川雅子(グアヒーラ)

4.石川雅子(グアヒーラ)

●優美な雰囲気を持ったグアヒーラ。アバニコの使い方も身体の動きも舞踊的にはとても美しい。だがエスコビージャに入ってからの足音が今ひとつ。そうしてみると、美しい動きにもマルカールがしっかりできていない印象。コンパス感を養って、足音にももっと神経を。(菊地)
●好感を持てる作品でした。アバニコの使い方も研究されていてお洒落な構成とセンスの良さが光っていた。一階の一番後ろの席で拝見させていただきましたが表情の良さもそこまで届いていた。客席全体を包み込めるような上半身の使い方を研究されると良いと思います。(奥濱)
●肩の動きがいい感じに映えてコケティッシュな動作が厭味にならず自然だったと思います。グアヒーラらしい粋な雰囲気がおしゃれに出ていて良かったです。サパテアードなどの技術やフラメンコなアイレが出てきたらとってもよくなると思います。頑張ってください。(高橋)

5.下山明子(ソレア)

5.下山明子(ソレア)

●フラメンカな魂を感じるソレア。方向性も気持ちの持ちようも悪くないのだけど、少し動きに硬さがあり、ノリが伝わって来ない。あと、足音がカホンの音に負けてしまって、さっぱり聞こえなかった。これでは聞かせたくないのかと思ってしまう。どうしてもカホンを入れるのなら、足を打つ立ち位置を考えるべし。【A'】(菊地)
●強い軸を持った踊り。この軸は身体の軸というだけではなく、我が道を進むという彼女の芯の強さからきているのだろう。その姿が良かったのだと思う。精神面というのは必ず踊りに出るので、その貫いている姿勢に好感。あとは踊っている時の舞台の立ち位置を意識できるようになると更に良くなると思いました。(奥濱)
●しっかり、きちんと踊っているということが、先ず見て取れます。よく頑張っていて悪くなかったです。もう少し重くドシっとしたところを感じさせられるようになるにはどうしたらいいのかな?と思いました。パソの流ればかりに囚われず、深くマルカールする練習も重ねるともっと良くなるかもしれません。(高橋)

6.ニエベユリ(ソロンゴ)

6.ニエベユリ(ソロンゴ)

●全体に身体の使い方が硬く、キレに乏しい。これでは、振付のイメージがしっかりあって踊っているようには見えない。足はしっかり打てているが、ノリがない。背中が舞踊手として死んでいる。きついことを言うようだけど、大きな舞台ほどアラが目立つもの。まだまだやることが一杯です。頑張って!(菊地)
●今までとは違う空気間のギターのサリーダに別世界に連れ込まれるような登場のソロンゴ。かなり個性的な空間をお持ちのようで、バレエのジゼルの2幕を観ているような感覚に引き込まれた。技術的な部分はまだまだでしょうが今後たくさん練習して経験を積んでいけばどんどん花が開いていくでしょう。(奥濱)
●振付構成が自然で、曲の盛り上げ方や演出もあってステキなソロンゴでした。全体的に技術と表現力をもっと磨いて、自分自身で踊ることの意味をつかめるようになるまで頑張ってまた挑戦してみて欲しい、そんな風に思いました。(高橋)

7.福島沙弓(タラント)

7.福島沙弓(タラント)

●メリハリの効いたタラント。見応え満載で、非常に秀逸!とメモ書きした。昨年の印象から格段の成長ぶり。最後まで食い入るように観た。ただ注文がひとつ。このままでは「よく踊れるひと」の中に埋没する。コレだけは誰にも負けない!という部分をもっと磨いて、あなたらしさを究めてください。【特A】(菊地)
●フラメンコに適した体型に恵まれていた。恵まれているだけではなく、その上体の表現力が素晴らしかった。存在感もあり舞台人として要素をたくさん持ち合わせている踊り手だと思う。回る時に背中が薄くなってしまうのが残念でした。腹筋と共に背中の強さも意識すると後ろへ引っ張られるようなことがなくなると思います。(奥濱)
●かなり威圧感ある表情が空気を制し、意気込みある力の入った出だしでハッとさせられました。ぎんぎんに気迫ある演技のなかに余裕を感じさせ、なかなか良かったです。全て大胆でハッキリした身の動き、技術的な安定感もあって楽しませていただきました。板付きで始まって終わる構成もよかったです。(高橋)

8.大神明希(アレグリアス)

8.大神明希(アレグリアス)

●素直そのもののアレグリアス。けれん味のない、爽やかで健康的な印象。振付としては難しいことはしていないが、筋の良さを感じる。シレンシオが美しかった。ただし内側のエネルギーがまだ小さいので、止まるところも、ただ止めているようにしか見えない。そこは溢れるエネルギーをぐっと抑えるのです。頑張れ!【A'】(菊地)
●清々しい気持ちにさせていただいたアレグリアスでした。膝下の動きが小気味よいので観ていて気持ちが良い。小柄な方でしたが生命力を感じる踊りでまたアレグリアスという曲種が彼女に合っているのでしょう。これから経験を積んでいけばもっとスケールの大きな踊りに変化していくと思います。(奥濱)
●細く華奢な身体を思いっきり動かして、バックアーティストに反応して、アレグリアスの明るさを出していて印象的でした。とても好感持てる誠実な踊りです。よくパソの練習をしているので身の硬さが取れると数段良くなると思いました。頑張ってください。(高橋)

9.大野環(バンベーラ)

9.大野環(バンベーラ)

●マントンを使ったフラメンカなバンベーラ。見せ場を上手く配して、見飽きさせない。昨年のソレアも良かったけど、今年はさらに安定感が増し、さらに自分らしさがギュッと濃縮されていたのが非常に魅力的だった。こういう人、なかなかいませんよ。平均的な踊り手なんてつまらない。どうぞ我が道を!【特A】【推薦】(菊地)
●マントンを沢山使った振り付けで迫力があり、また気持ちの良い踊りだった。特にマントンを床に捨てた時はとてもかっこ良かった。バタ&マントンでも観たいなと思った。ご自分の中にある方向性もしっかりしているのだろう。今後キャリアと共にいろいろなことが整理されてくると味のあるアーティストになっていくだろうと思えました。(奥濱)
●マントンに振り回されず、よく捌いてしっかり確実に流れを作り、バックアーティストと溶け合った説得力ある演技でした。効果的な振付構成が活きていて、照明効果もステキで、バンベーラの曲風にマッチしていて......曲に掛ける意気込みが伝わって来ました。逞しくて女性的でとても良かったです。(高橋)

10.内田好美(ソレア)

10.内田好美(ソレア)

●大きな空気感を持ったソレア。昨年もソレアでしたね。私は「惜しむらくはペソが足りない」と書いているけど、今年はその点がクリアされていて、成長ぶりをうかがわせた。エスコビージャの入り方が粋で、よく聴かせた。ただ、もう少し踊りを観たかったという不満が少し。どこか抑制が外れるようなポイントがあっても良かったかも。【特A】(菊地)
●こういう体型の日本人もいるんだなあと感心させられた。顔が小さく手足も長く、また体のキレもピカイチでした。またサパテアードもタコンの音がしっかり出ていて心地よい。
順調に良い成長をされているんだなと感じました。(奥濱)
●赤いベルベット?に黒いラインが入った印象的な衣装で、上背があってスマートな身体を思いっきり使いこなした表現は、とても美しく映えてステキ、いい演技だったと思います。もう少し優雅なブラッソの動きが欲しかった、そんな風にも思いましたが、サパテアードの音もしっかり聞こえて来て存在感ありました。(高橋)

11.鈴木雪花(アレグリアス)

11.鈴木雪花(アレグリアス)

●まずは教科書通りといった印象のアレグリアス。正しく踊って、それなりに見せているところは好印象。筋は悪くない。けれども、可もなく不可もなくというのは、ソロとしていかがなものか。難しいことは何もやっていないのだから、もっと自分なりのアレグリアス、自分なりの深みを研究すべし。(菊地)
●オーソドックスなスタイルに安心感を覚えました。リズム感がよく、竹を割ったようなゴルペの音がとても気持ちよく印象に残っている。衣装も素敵で良かったのですが、髪飾りの方が衣装に対して淋しかったように感じました。赤い花ではなく、白や淡い寒色系のもので上手く飾り付けていれば舞台映えがして尚良かったと思います。(奥濱)
●一生懸命アレグリアスの明るさを自分なりに精いっぱい表現していました。コンパスに乗ることの楽しさをつかんでいて自分から楽しんで踊っていていい感じではあります。ただ同時にクラシックなアレグリアスを見て勉強して、ブラッソやマノの動きも研究してみて欲しいな、そう思いました。(高橋)

12.高木栄子(アレグリアス)

12.高木栄子(アレグリアス)

●まず首が前についているのが気になった。背筋が鍛えられていない。そのせいでブエルタが美しく決まらない。つまり、基本的な身体作りが足りていないのだ。ゆえに動きが手先から動くような印象に陥ってしまった。振付をいくらしっかり踊っても、ベースとなる身体ができていないと砂上の楼閣。頑張れ!(菊地)
●表情がナチュラルで素晴らしい。これはとても大切なことだと思う。踊り(体の使い方)もそうだが自然に見える表現というのはホッとするものです。ラ・タティの踊りを思い出し嬉しくなりました。ブラッソを背中から使うように意識すると踊りの幅も広がってくると思います。(奥濱)
●とても日本的な女性の美しさを感じました。やさしく、清楚なイメージで、笑顔がステキで楽しみながら余裕もって踊っていて、それはそれで価値があってとても良かったです。ただ、もうちょっとスペイン人の踊りを研究してみてもいいかな?私にとって今一つ物足りない原因はそれかな、と感じました。(高橋)

13.佐渡靖子(アレグリアス)

13.佐渡靖子(アレグリアス)

●マントンとバタ・デ・コーラのアレグリアス。昨年もそう思ったが、身体がよく動く。ラインが美しい。しかし、よくまた思い切ってマントンとバタを選んだ。あっぱれ!身体ができていないと、この二重苦は至難の業。今年は少しバタバタした印象だったけど、もう少し修練を重ねて再挑戦して!【A'】(菊地)
●均整のとれた体が素晴らしく、最初スペイン人かとも思えた。ある程度の背がある方は有利であるが、身体も良く使えていた。内股(内転筋)の意識があると軸足の意識がもっと強くなり、バタのさばきももっと豪華になるだろう。あっという間に終わったので構成も良かったのだと思います。(奥濱)
●いつも思いますが、大きくしなやかな身体での身の熟しや、ブラッソはとてもとても綺麗でステキです。そこにフラメンカなアイレを丁寧に盛り込んでいる努力がくみ取れ、とても好感が持てます。そういう訓練も大切でしょう。これからも熱意を持って課題と向き合い、徐々にフラメンコ性が高まることを期待します。(高橋)

14.青木千鶴子(タラント)

14.青木千鶴子(タラント)

●安定感のあるタラント。昨年より成長した。ただ、今年は動きが逆にチマチマして見えたのが気になる。パソの流れは身体に入っているのだから、もう少しペソをしっかり持って、どこを膨らますか、緩急をどうするか、研究して欲しい。外見の話じゃありませんよ。内側の話です。【A'】(菊地)
●タラントという難しい曲種をよく踊り熟していたと思います。特に2つ目のレトラは身体が温まってきたか表現に気持ちがうまく乗っかっていて引き込まれました。タンゴに入っても自然な色気があり、嫌味ないすっきりとした踊りに好感が持てた。媚びてない踊りが良いのだと思う。(奥濱)
●きりっとした顔立ちがパッと人目を惹きつけ、全体的に美しい演技だったと思います。ただ、ちょっとおとなしい、線の細さも前面に出てしまい、それが日本的なイメージを作ってしまうような感じで、フラメンコのアイロッソな世界をもっと追究できたら...そんな風に思いました。頑張ってください!(高橋)

15.丸岡みゆき(グアヒーラ)

15.丸岡みゆき(グアヒーラ)

●アバニコを使ったグアヒーラ。表現力など、以前よりも成長したが、まだぐらつくところがあり、ブエルタにも不安がある。もっと芯がしっかりしていないと、あれこれやっても意味がない。緊張のせいか、後半は息切れした感じも。体力をつけ、芯を鍛えて、もっとたっぷり踊れるようになってください。(菊地)
●ものすごく綺麗な足の甲の持ち主である。パッと決める時の足のポジションがとても美しい。舞台に大切な物怖じしない強さもお持ちなので、これからもしっかり稽古して技を磨いてほしい。外に放出するだけでなく、内に集める感覚を磨けばどんどん上達してくと思います。(奥濱)
●まだお若いようですので、これから技術アップとともに大きく変わっていくと思います。何が起きても動揺しないで自分の踊りを踊れる日もいつか来ると思います。いい踊りを沢山見て、練習して汗かいて、地道に頑張って続けて行ってくださいね。(高橋)

16.本多清見(ソレア)

16.本多清見(ソレア)

●ソレアらしいソレア。よく研究している感じで、ソレアをものにしているのはわかる。好感度大。けれども、自分らしさがまだどこか奥のほうに潜んでいる感じで、なかなか伝わってこない。振付でも、感情の発露でも、自分のものごととして感じたものが出るという道筋を、もっともっと自分の中で探って欲しい。【A】(菊地)
●独特なブラッソの空間を醸し出す踊り手さんでした。ご自分の身体のことをよく理解されているのでしょう。無理な動きや振りがないところに好感が持てました。レマーテなどの内に溜めていく意識がとても良かった。舞台空間という全体意識が生まれると更に良かったと思います。(奥濱)
●技術的に安定していて表情も過剰なく豊かで、日頃の練習というか精進が窺われて、心籠るいい演技だったと思います。自分の領地から外へ、もう少し炸裂するような、激しさみたいな火花みたいなものがパッと出る踊りを目指して頑張ると更に良くなるように思いました。頑張ってください。(高橋)

アクースティカ倶楽部

アクースティカ倶楽部イメージ
アクースティカ倶楽部は、仲間とともにフラメンコの「楽しさ」を追求する、フラメンコ好きのためのコミュニティです。