ザワザワと子供たちの声が聞こえてきた。
学校は時間厳守。先生が呼びに来てギターとカンテが先に出る。
1曲目はセビジャーナス。春祭りのにぎやかなナンバーだ。
カスタネットを鳴らしながら飛び出すと、目の前に体育座りの子供たち。真ん丸な目がたっくさん迎えてくれた。
ショーは
1.セビジャーナス
2.フラメンコについてのお話
3.ソレア 下郡紀子
4.ティエントス 川上摩紀
5.アレグリアス 太田マキ
6.タララ
2.のお話は最初の緊張ポイント。小学校1年生にもわかる言葉で、短く、子供を巻き込みながら話すというのが目標。
スペインを知らない小さな子から、フラメンコ見たことある!と自慢げな子たちまでがいる。
昨夜考えて、フラメンコの役割をお仕事になぞらえ話す事にした。
日常の中で感情を表現する唄が自然に生まれ、ギターがそれに寄り添い、踊りが生まれていく。
そんな流れとそれぞれのお仕事を説明しながらメンバー紹介。
で、全員できるお仕事としてハレオ(掛け声)を紹介。
「オレー」「バモー」「ビエン」
3つ覚えてもらう。
「いいな!」「かっこいい!」「がんばれ!」「その調子!」と思ったらいつでも言ってみよう。と練習すると大きい声が最初から出て来たので「素晴らしい!オレー!」と言うと嬉しそうにまた声を出している。
踊りは踊る本人が曲の説明。
どんな曲?どんな気持ちで踊っているの?
踊る人の口からそれを聞くのは、私にとっても新鮮。メンバーの事がまた少し見えた気がするしその人それぞれの個性が出て楽しい。
1曲目からソレア、というプログラムに前日までみんな迷い、どうしようか、と話し合ったけれど、子供向けにせずそれぞれのベストを出そうと、そのままにした。
ギターの優しく哀しい旋律。ミカさんが「アイアイアイ~」と声を出すと、子供たちの目がさらにまん丸くなった。「オレー!!!」の声。
そこから静かにソレアの唄に入っていく。キコさんの足が震えているのが見える。メンバーみんな緊張。
と足音が強くなってきた瞬間、体育館に響き渡る「オレーオレーオレー」
そこから起こった事は、自分の人生の中で本当に忘れがたい、美しい美しい光景だった。
子供たちは踊る私たちの抑揚に合わせ、オレーオレーと声を上げ続ける。大きな体育館とステージ上に、子供たちのエネルギーの波がぐわんぐわんと押し寄せるのを体の細胞の隅々まで感じた。
ティエントでもアレグリアでも、フラメンコの呼吸に合わせ子供たちのオレの嵐が私を包んだ。私も負けないよう必死で声を出しパルマする。また大きな波が帰ってくる。
ソロが終わり最後のタララ。
ワークショップの課題曲でもある。
この曲をこの後みんなで「踊って」「歌って」みますよ!と言うと「ワ~」という歓声。
「ギターも弾いて」みますよ!というと夢見るような顔になった。
あの子供たちのキラキラ輝いた顔を、そして私たちを包んでくれた文字通り嵐のような「オレー」の声の振動を
一生忘れることはないと思う。
~ワークショップ編に続く