ゴールデンウィークの最中、5月3日、浅草のアサヒ・アートスクエアで、
和歌山を拠点に活動している踊り手の森久美子さんの公演
「AMATERASU」の東京公演が行われる。
森さんとは、パセオの編集者時代に電話でのやり取りはなんどかあったものの、昨年、ソニア・ジョーンズが発行する「ラティード」の取材で初めてお会いした。
限られた時間のなか、2時間あまりのインタビューだったが、初対面の私の質問に、きわめて率直なお話を聞かせていただいた。落ちついた物腰の奥から、フラメンコへの情熱と積み重ねてきた自身の歩みへの静かな自信がにじみ出ていた。
当時、フラメンコの情報もネットワークもなかった和歌山で、一人で子供二人を育てながらのフラメンコ。決して恵まれたとは言えない環境の中で、手さぐりかつ体当たりで、自身のフラメンコの道を切り開いてきた。
そんな中で、2000年のニューヨーク公演を契機に和楽器や能を取り入れた「和のフラメンコ」の創作に取り組み、これまでにいくつもの作品を発表。
和歌山のみならず、海外での上演を重ねている。
森さんの精力的な活動を、私はこの時初めて知ったのだが、なにより心を打たれたのは、和歌山フラメンコ協会を発足させるなど、公演を上演し続けるための環境づくりを、地道に続けられてきたことだ。
そして、自身の活動が、日本の中心地・東京とかい離してしまうもどかしさを痛感する一方で、和歌山の地から世界へ向かってフラメンコを発信しようとするその志の高さは、東京中心の取材を続けてきた私にとってはカルチャーショックともいえる驚きだった。
和歌山に赴いてでも、森さんの舞台を見たい、
取材が終わった時には、そんな思いにかられていた。
が、その機会は思いのほか早くやってきた。しかも東京公演という形で。
今回上演されるのは、昨年11月にバレンシアで上演され好評を得たという「AMATERASU」。
天岩戸の神話に材を得た作品である。
和太鼓グループ「TOKARA」がバレンシア公演に続いて参加するが、
なんと「TAKURA」は、アメリカ人とカナダ人で構成された和太鼓グループ。
2005年の東京国際和太鼓コンテスト大太鼓部門で、外国人として初めて最優勝賞を受賞したという実力の持ち主という。
彼らもまた、異国の文化を自らの表現として選んだアーティストたち。そういった面からも、かれらの演奏、非常に興味深い。
また、東京公演では、新たに秋山泰廣、松彩果、知念響ら3人の若手が参加。
彼らの参加により、台本も書きかえられたという。
森さんに、東京公演への思いを電話でお聞きした。
「1999年以来、『和のフラメンコ』に取り組んできました。海外では、フラメンコと和のコラボレーションは喜ばれますが、日本の方々にはどう受けとてもらえるのだろうか、そんな思いがあります。
これまでやってきた自分のスタイルを東京のフラメンコファンの皆さんに、率直に評価していただきたい、そんな気持ちでおります」
森さんの作品を見るのは、私も今回が初めてだ。
作品どころか森さんの踊りも、不勉強ながら見たことがない。
だから、いい作品だからみましょう!とはすすめられない。
だが、彼女がフラメンコという大海原を一人さすらいながらたどり着き、
つかみ取った自身の表現「和のフラメンコ」をこの眼で確かめたいと思う。
そして、今回の公演の反響が、今後の彼女の創作活動の大きな糧となることを願ってやまない。
森久美子フラメンコ舞踊団東京公演「AMATERASU」公演概要
日時 2013年5月3日(金・祝) 18:30開場 19:00開演
場所 浅草/アサヒ・アートスクエア
チケット料金 4,000円(全席自由・17:30より整理券発行)
主催 フラメンコアカデミア<ラ・ダンサ・アンダルシア>
チケット申し込み・問合せ
℡073-402-4331(ラ・ダンサ・アンダルシア)
Fax.073-402-4332 E-Mail:info@la-danza-andalucia.com